この記事をまとめると
■マクラーレンがハイブリッドスポーツのアルトゥーラ・スパイダーを発表した
■アルトゥーラ・スパイダーの3リッターV6ツインターボは従来よりも20馬力アップの700馬力となった
■アウトゥーラ・スパイダーの加速性能は、0-100km/hが3秒、0-200km/hが8.4秒、0-300km/hが21.6秒
アルトゥーラ第2のモデルはリトラクタブルハードトップ
マクラーレンは、史上初となるハイパフォーマンス・ハイブリッド・コンバーチブルとなる「アウトゥーラ・スパイダー」を新たにプロダクションモデルのラインアップに追加した。
同時に、これまで販売されていたクーペモデルのアルトゥーラにも、スパイダーのために施されたアップグレードを導入。これらはいずれもMY25(2025年モデル)として、2024年半ばから納車が開始される予定だ。
多くのカスタマーや、潜在的なカスタマー予備軍が待ち望んでいたスパイダーは、シンプルにルーフをRHT=リトラクタブルハードトップとしただけのモデルではなかった。その詳細を知れば、それはアルトゥーラ自身のアップデートを兼ねたモデルであることは一目瞭然。
わずか11秒で、そして車速が50km/h以下ならば開閉が可能であり、さらにオプションでは透過率を変更できるエレクトロクロミック・ルーフパネルを装備するRHTが採用されていることなど、この新世代のアルトゥーラにとってはごく一部のトピックスにすぎなかったのだ。
もちろんこのRHTの特長は、たとえば軽量性などにも大きく表れている。アルトゥーラ・スパイダーの乾燥重量はわずかに1457kg。これはクーペ比で62kgの増加に抑えられた数字であり、またマクラーレンはそのブランドを明かさないが、同じオープンモデルのライバルに対しても、最大で83kgのアドバンテージを持つという。
アルトゥーラ・スパイダーの核となっているのは、もちろんMCLA=マクラーレン・カーボン・ライトウエイト・アーキテクチャーだ。スパイダーとクーペの重量差のほとんどはRHTの作動メカニズムによるもので、MCLAそのものにはカーボンファイバー製のモノコックのほか、アルミニウム製の衝撃吸収ストラクチャー、ハイブリッドパワートレインを搭載するリヤストラクチャーも組み込まれる。
さらに、革新的なイーサネット・エレクトリカル・アーキテクチャーも組み込まれており、それによってケーブルは25%減少、その重量低減も少ない量ではなかった。このエレクトリカル・アーキテクチャーもまた、スパイダーの開発段階で最適化が図られ、データ容量と転送速度が増加した、新世代アルトゥーラでの進化のひとつである。
わずか21秒で300km/hに達する脅威の加速
ミッドに搭載されるエンジンは、120度のバンク角が設定されたアルミニウム製ブロックを持つ3リッターのM630型、V型6気筒ツインターボ。最高出力は従来までのものから20馬力向上し、700馬力を発揮するようになった。最大トルクの720Nmはこれまでのスペックから変化はない。
レブリミットが8500rpmというこのV6ツインターボエンジンは、同じマクラーレンのV8ツインターボエンジンよりも50kgも軽い160kgの重量を実現。その吹け上がりの鋭さは、ツインターボのユニットをバンク角の中央に配置する「ホットV」の設計を採用したことで可能となった。ドライサンプの潤滑方式は、エンジンの搭載位置を低下させるとともに重心の低下に貢献。エンジンサウンドも、より魅力的なものに仕上げられているが、これはレゾネーターのチューニングやテールパイプを上向きの円錐形とするなど、さまざまな手法で生み出されたものだという。
そして、このV6ツインターボエンジンに組み合わされるのが、きわめてコンパクトな設計のエレクトリックモーターだ。エレクトリックモーターは、8速SSGのベルハウジング内に搭載され、最高出力で95馬力、最大トルクでは225Nmを発揮する。バッテリーパックは5個のリチウムイオンモジュールで構成され、実効容量は7.4kWh。EV走行は最大33kmを実現する。
参考までにこのバッテリーパックの重量は88kg、一方エレクトリックモーターも15.4kgとその軽量性はここでも大いに注目できる。もちろんパワートレインマウントの改良など、ほかにもドライビングダイナミクスを高めるための改良策は、数多くこの最新のMY25には採用されている。
マクラーレンが発表したアウトゥーラ・スパイダーの加速性能は、0-100km/hが3秒フラット、0-200km/hは8.4秒、そして0-300km/hでは21.6秒を達成。最高速は330km/hに制限されているということだ。
加速性能のみならず、マクラーレンは、MY25でスパイダー、クーペともにその乗り心地とハンドリングを見直してきたという。ハンドリングモードはデフォルトの「コンフォート」のほかに「スポーツ」と「トラック」の3タイプ。ESC=エレクトロニック・スタビリティ・コントロールの介入も調節可能で、ドライバーの好みや路面のコンディションで、それを自由に選択することができる。
ブレーキのパフォーマンスも向上した。カーボン・セラミック・ディスクとアルミニウム製のキャリパー、そして新たな冷却ダクトが設けられたほか、ABSのキャリブレーションも改良。ちなみに200km/hからの制動距離は124mに短縮されている。
ハンドリングモードとは別に設定できるパワートレインモードは4タイプ。デフォルトはエレクトリックモーターのみを使用する「Eモード」。ここから「コンフォート」「スポーツ」「トラック」とモードを変更できる。
「コンフォート」ではエンジンのスタート&ストップを頻繁に活用し、「スポーツ」と「トラック」では、積極的にエレクトリックモーターがエンジンをサポートする設定になるほか、高電圧バッテリーの充電速度もトラックでは最大になる仕組みだ。
待望のスパイダーが追加され、同時にクーペもMY25へとさらなる進化を遂げたアルトゥーラ。その進化のポイントはまだまだあるが、マクラーレンのボリュームモデルとして、これまで以上に注目を集めそうな一台である。