旅する日本酒ペアリング〜世界の料理と久保田〜 イタリアの郷土料理に寄り添う日本酒

2024.02.13 11:50
世界の料理に久保田を合わせるイベント「旅する日本酒ペアリング」、今回はイタリアンです。イタリア料理の素材を生かしシンプルな調理法が多いところは日本の料理にも通じるところがあり、パスタやピッツァはすっかり馴染みのある食べ物になりました。それなのにイタリアンに日本酒を合わせることは非常に少ないのではないでしょうか。イベントレポートを通してイタリア料理と日本酒の相性の良さをお伝えしましょう。
旅する日本酒ペアリング素材を生かすイタリア料理と久保田の新しい出会い
浜松町、大門、芝公園の各駅から近い便利な場所にある『青いイタリアン』。青い外壁のビルの2階で、木を基調としたカジュアルな店内でありながら落ち着いた照明で、どこか欧州の古い食堂のような味のある雰囲気。オープンキッチンでライブ感があり、普段はパーティープランを主に営業しています。
担当は髙橋シェフ。実は、母親が会計士の仕事をしていた頃、その仕事で担当していたイタリアンレストランへ訪れた時、店の雰囲気に感銘を受けてイタリア料理の道を目指す決心をしたといいます。そして、日本酒ペアリングの先駆けでもあり革命的なペアリングを叩き出していた『赤星とくまがい』(現在は閉店)の熊谷シェフが後輩という間柄。その関係から姉妹店である『SAKE TERIA RED BEAR』(こちらも現在は閉店)の料理を担当した経験がある実力者で、今回のペアリングは非常に期待が高まります。
【Stuzzichino/お通し】サルデーニャ産ボッタルガ盛り合わせ × 久保田 スパークリング・久保田 ゆずリキュール
「久保田 スパークリング」と「久保田 ゆずリキュール」で乾杯してからのスタートです。おつまみとして出てきたのはボッタルガ。ボッタルガとは魚の卵巣を塩漬けして乾燥させたものでカラスミの一種、日本人にも馴染みのある珍味です。左からムジネ(ボラ)、マルーカ(タラの一種)、コッド(マダラ)、トンノ(マグロ)。ムジネはねっとりとした食感としっかりとした塩気で、日本のカラスミによく似ています。マルーカは軽くあっさりとして食べやすく、コッドは柔らかい食感と程よいコクのある味わい。トンノは一番濃厚で熟成感があり、旨味の余韻が長いタイプです。サルデーニャではセロリと合わせるのが定番だそうで、オリーブオイルをまとったセロリが爽やかでより複雑な味わいへと変化させています。添えられたアンチョビはホロホロとした食感でフレッシュな塩漬けといった印象。ゆずリキュールとの相性がよく、ゆずの香りと甘さが塩気を和らげてくれます。
顔が隠れるほどの大きなパンはパーネカラザウ。サルデーニャ島の伝統的な薄焼きのパンで、もともとは長期間家を留守にする羊飼いの夫や息子のために女性たちが焼いた保存食。薄くて軽いためcarta da musica(楽譜)とも呼ばれていて、まさにパリパリサクサクといった音が楽しいパンなのです。これにローズマリーとペコリーノチーズ、「久保田 吟醸酒粕」が使用されていて香り豊か。ローズマリーは日本酒と相性が良いハーブのため違和感なく合わせられ、特に麹に似た香りがふわっとするスパークリングとの相性は抜群でした。
【Antipasto Misto / 前菜の盛り合わせ】南イタリア前菜5種盛り合わせ × 久保田 萬寿・久保田 百寿
前菜はカラフルな盛り合わせです。サラミは脂身が多いタイプでそれに合わせて塩気もしっかりめ。もっちりとした揚げパンは青海苔の風味がよく最後まで磯の風味が鼻に抜けていきます。マリネはタコとプーリア産のグリーンオリーブ。爽やかですっきりとしたオリーブが旨味の多いタコの余韻を綺麗にしてくれています。カポナータはシチリア風。現地の味に近く砂糖がたっぷりと使われていますが、赤ワインビネガーとケッパーでバランスが取れており、油と砂糖、甘酸っぱいトマトソースをしっかりと吸ったナスが絶品。カプレーゼのモッツァレラは水牛のミルクで本物、ジューシーでフレッシュなチーズとフルーツトマトの甘み、バジルの青々しさが安定の美味しさです。
上品な吟醸香でまろやかな口当たりでありながら味のキレが早い「久保田 萬寿」は、サラミの脂やミルキーなモッツァレラと良くあっていて、しっかり辛く香りの控えめな「久保田 百寿」は全体的に口の中をリセットしてくれる役割でした。
【Antipasto Caldo / 温かい前菜】鰯のベッカフィーコ 柑橘とフィノッキオのサラダ添え × 久保田 萬寿 自社酵母仕込
鰯はシチリアでよく食される魚で、ベッカフィーコは名物料理のひとつ。ベッカフィーコとは日本のスズメ程の大きさの野鳥でフィーコ(いちじく)を食べる鳥。昔はイタリアの貴族たちが狩猟をして食していたようですが、庶民の口に入ることが無かったため安価な鰯で代用して出来た上がった料理です。開いた鰯の中にパン粉が詰められていて、そのパン粉が鰯の脂を吸ってしっとりした食感になり、更には松の実の香ばしさと枯れた風味と甘酸っぱさが共存したレーズン、オレンジの苦みが奥行きを出しています。「久保田 萬寿 自社酵母仕込」の熟した果実の香りとまろやかでふくよかな口当たりがベッカフィーコのボリューム感と合っています。料理に添えられたアニスのような風味のするフィノッキオ(フェンネル)が爽やかですっきりとさせてくれ、次の料理にいくためのリセットする役割を兼ねていました。
【Primo Piatto / 第一の皿】北海道産生ウニのスパゲッティー南イタリアの香り × 久保田 紅寿
北海道産生ウニのスパゲッティー南イタリアの香り × 久保田 紅寿

パスタは生クリームを使用した重厚タイプで、もちもちとした食感の生麺のため食べ応えがあります。クリーミーなソースとウニの相性は間違いなく、特に北海道産のウニは香りが良く磯の風味を生クリームが包み込み、最後に散らされたレモンの皮が香りと苦みを加えて味を引き締めています。合わされたお酒は「久保田 紅寿」。香りが少なめでドライな味わい、最後のアルコールの刺激がキュッと印象的で淡麗にキレていくので、濃厚な料理をすっきりとさせてくれます。
【Secondo Piatto / 第二の皿】松阪豚と淡路産玉ねぎのナポリ風ジェノベーゼ × 久保田 純米大吟醸
日本人はジェノベーゼと聞くとバジルを使った緑色のソースを思い浮かべるかもしれませんが、イタリアでは大量の玉ねぎと肉を煮込んだ料理のことをGenovese Napoletana(ジェノベーゼナポレターナ)と呼んでいてナポリの名物料理です。15世紀頃、港町として栄えていたナポリとジェノヴァは貿易も盛んであり、ジェノヴァから来たコックが作った牛肉と玉ねぎの煮込みが好評で、ジェノヴァ風(alla Genovese)と名付けられたのが由来と言われています。パスタソースとして作られることが多いジェノベーゼですが、今回はメインの肉料理として提供されました。松阪豚がじっくりと煮込まれてとろとろになっており、肩ロースの部分はやわからくしっとり、スペアリブはホロホロとした食感に、長時間煮込まれた玉ねぎがカラメルのような甘く香ばしくなっていて、シンプルな料理でありながら複雑な味を出しています。「久保田 純米大吟醸」はりんごのような爽やかさと梨のようなすっきりとした甘い香りがするお酒。一緒に口に含むと玉ねぎの甘さが際立ち、共に余韻が長くなり印象に残る料理となりました。
【Dolce / 甘味】石井農園紅ほっぺのセミフレッド × 久保田 碧寿
石井農園紅ほっぺのセミフレッド × 久保田 碧寿

セミ(semi)=半分、フレッド(freddo)=冷たい、という意味で半解凍状態のアイスケーキのようなお菓子。シェフ自ら朝摘みをしてきたというから、新鮮さが保たれています。セミフレッドはまるでバターのように濃厚でねっとりとしていて、いちごのソースは程よい酸が甘さを引き立てており、濃醇さとフレッシュさが共存しています。「久保田 碧寿」は独特の乳酸の香りで、ふくよかでボリューム感があるのにキレがあります。この複雑な酸の香りが生クリームとよく合っていて、碧寿のキレの良さがセミフレッドの脂肪分を流してくれました。
イタリア料理を包み込む日本酒
最後までボリューム満点で食べ応えがあり、大満足のコース設定。料理は今回のためだけの特別コースで、イタリアの定番料理でありながら髙橋シェフの気さくで明るい雰囲気がそのまま料理に表れている、心温まる仕上がりでした。日本酒は基本的にチーズや生クリームなど乳製品と相性がよく、素材を生かすイタリア料理は日本料理にも通じるところがあり、日本酒が料理を包み込むような、そんな感覚を味わわせてくれました。
髙橋シェフは「簡単にはいかなかった、何回やっても難しい」と仰っていましたが、日本酒ペアリングの経験があるからこその出来だったように感じ、馴染みのある料理だからこそ難しいイタリアンと日本酒を見事に組み合わせたペアリングの会となりました。
残念ですがこのイベントを最後に高橋シェフは次の構想のため『青いイタリアン』を退職され、現在『fruta&(フルータ アンド)』で腕をふるわれています。

次回は東京・麻布十番にある北欧料理「ACiD brianza(アシッド ブリアンツァ)」。また新しい体験が待っていることでしょう。
まゆみ
酒匠、料理研究家。 1日も欠かすことなく酒を呑み続ける驚胃の持ち主。酒と蕎麦と音楽を愛する。著書「うち飲みレシピ」「スバラ式弁当」。viawww.instagram.com

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