世界の巨人「トヨタ」が大型トラックを扱わないワケ

2024.02.11 17:30
この記事をまとめると
■トヨタ自動車は乗用車を中心に製造・販売している
■大型トラックの分野には進出していない
■現在は日野自動車がその分野のブランディングを担っている
マーケティングの観点でも乗用車とトラックは似て非なるもの
  いうまでもないが、トヨタ自動車は乗用車を中心に組み立て・製造をしている会社。トラックの分野では、トヨエース・ダイナといった小型〜中型トラックを扱っているに過ぎず(OEMを含む)、現在は大型トラックの分野には進出していない。自動車業界ではひとり勝ち状態といわれながら、なぜ大型トラックの製造・販売を行っていないのであろうか。
  国産トラックの歴史は古く、1号車はいまから100年以上前の1917年に、東京瓦斯電気工業(現在のいすゞ自動車・日野自動車など)が製造した「TGE-A型軍用保護自動貨車」だ。トヨタ自動車がこの分野に参入したのは1935年のことで、「トヨダトラックG1型」が最初である。このころはまだ自家用車が珍しく、軍用車や事業用車のほうが需要は高かったといえよう。
  第2次世界大戦後の高度経済成長期(1954年~1973年)を見越し、1951年~1954年にかけてトヨタ自動車では、BM型・BX型・FX型などといった多数の大型トラックを開発、それ以降もBZ型・DA型などを次々市場に投入している。さらに、1957年には販売強化・シェア獲得を目論み、専用販売ルートとなる「トヨタディーゼル店(のちのトヨタカローラ店)」の展開を開始した。
  ところが、この思惑は見事にはずれている。理由は、すでに大型トラックメーカーとして確固たる地位を築いていた、日野自動車/いすゞ自動車/三菱自動車工業(現:三菱ふそうトラック・バス)/日産ディーゼル工業(現:UDトラックス)からなる、専業車製造4社の販売ネットワークが強かったことにある。さらに、同店のてこ入れ策として乗用車販売を開始したことが、大型トラックの販売不振にさらなる拍車をかけることになった。
トラックと乗用車を同じ販売店で売ることは難しい
  このような事態に陥ったのは、メーカー系特約店中心の販売手法が裏目に出たことによるものといえよう。自動車販売の要になるのはメーカー系特約店であるのディーラーだが、彼らは必ずしも系列メーカーの資本が入っているわけではない。基本的には代理店であり、経営が独立しているのである。いいかえれば、利益を確保しなければ経営が成り立たないということだ。
  この場合、トヨタディーゼル店にとって主力商品である大型トラックが販売不振になったということだから、たちどころに経営が成り立たなくなるのは自明の理なのである。そこで、苦肉の策としてカローラやパブリカの販売をさせたのであろうが、販売店にしてみれば、そちらのほうが売りやすいし収益が得られるとなれば、主力商品が入れ替わるのは自然なことだ。
  マーケティングの観点からしても、乗用車とトラックは似て非なるものといえる。ユーザーの利用目的が違うのだから、当然のことながら購買プロセスも異なってくる。同じ販売店で売るというのは、無理があるといえよう。2005年に人気車種のセルシオをレクサスに変え、従来のトヨタ販売店と分離して成功したことが何よりの証だ。
  商品を売るにはユーザーの納得性が必要であり、そのためにはブランディングを行わなければならない。トヨタ自動車は、大型トラックの販売を通じてそれを学んだ。現在は、傘下の日野自動車がその分野のブランディングを担い、ユーザーから支持の高い製品を世に送り出しているのである。

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