これでヨーロッパを獲るぞ! 地味だけど「技術の日産」感満点の「初代プリメーラ」がものスゴイクルマだった

2024.01.22 13:00
この記事をまとめると
■日産の「901運動」によって生み出されたモデルのひとつにプリメーラがある
■プリメーラは名機SRエンジンと引き締められた足まわりで走りのよさをウリにしていた
■プリメーラのエクステリアは地味だが流行に左右されないバランスのよさがあった
足まわりの完成度が欧州車を超えたと大絶賛
  みなさんは「プリメーラ」という日産の車種を知っていますか? おそらくいま30代以下の人は馴染みのない車種だと思います。実際には1990年から2005年までの16年間、初代から3代目までの3モデルが発売されただけの、他のロングセラーの車種からしたら短い期間しか販売されなかった車種なので、当時を生きたベテランの人のなかにもあまりよく知らないという人がいるかも知れません。
  しかし、実際に乗っていた人や、その素性をよく知る人は、それなりの敬意を持って懐かしく思う人が少なくない車種なのです。ここでは、その「プリメーラ」のキャラクターを印象づけた初代の「P10型」について話していこうと思います。
初代プリメーラは欧州市場をメインターゲットに据えた硬派な車種
  バブルの真っ最中に企画が始まり、1990年に登場した初代の「プリメーラ」は、その当時の日産が掲げていた社内スローガンの「901運動」のなかで生み出された車種のひとつです。
「901運動」というのは、1990年までに技術の世界一を目指すというものです。印象的なCMが話題になった1988年のシルビア(S13)やセフィーロ(A31)などもその勢いのなかで生まれた車種と言われていますが、中心となっていたのは、スカイライン(R32)、フェアレディZ(Z32)、インフィニティQ45(G50)、そしてプリメーラ(P10)の4車種です。
  そのなかで最後発となったプリメーラは、欧州の市場に放つ鋭い矢としての役割を負わされた車種として開発されました。
  日本市場では前出のシルビアやセフィーロなどが華々しくデビューして話題に乗り、ひとつのムーブメントを起こしていましたが、その頃のヨーロッパの動向は、好景気で陽気な日本とはまったく違う雰囲気でした。しかも、元から2000ccクラスでよく走るエンジンや、頑強なボディ、しっかりした足まわりなど、日本に比べると硬派なクルマづくりが受け入れられる土壌でした。
  そんな市場を攻略するための車種として、ヨーロッパの流儀に則ったうえで、世界一と誇れる技術を盛り込んでつくられたのがこのP10型プリメーラというわけなのです。
名機SR18/SR20と新開発のシャシー&サスペンションで走りをアピール
  プリメーラに搭載されていたエンジンは、自然吸気のDOHC4気筒タイプのみです。排気量が1831cc/110馬力の「SR18Di」と、同じ1831cc/125馬力の「SR18DE」、そして1998cc/150馬力の「SR20DE」の3機種というラインアップです。
  駆動方式は基本がFFですが、最後期に4輪駆動が加わり、降雪地域やスノーレジャー向けの需要にもしっかりフィットしました。
  そのFFベースの利点を最大限に活かしたパッケージングも高評価のポイントでした。フロントウインドウの位置を前進させ、キャビン高も高めに設定することで、同クラスでは最大の室内広さを実現しています。大柄の大人が4人乗ってもゆったりくつろげる空間がありました。
  また、トランクの容量もかなり大きく、内容量を圧迫する開閉アームを廃してヒンジ式(ダンパー付き)にするなどの工夫が盛り込まれていました。
見た目は地味だったけど走りは一級品
実際にヨーロッパでも高評価だった走りの性能
  そのときの日産の足まわりの技術の切り札が「マルチリンク式サスペンション」でした。それまでのサスペンション方式の主流はシンプルなストラット式でしたが、技術世界一を目指すにあたり、より確かな接地性を実現するために選ばれた方式です。同時代ではスカイラインなどのスポーツ系車種に「4輪マルチリンクサスペンション搭載」と誇るようにアピールされていたのが印象に残っています。
  プリメーラには、フロントにそのマルチリンクサスペンションが採用されています。
  プリメーラはFFと、FFベースの4WDという駆動方式を採用していました。FF方式の場合、駆動輪と躁舵輪が同じのため、コーナー後半でのアンダーステアやタックインなど独特のクセがありますが、このマルチリンクサスペンションの採用によってそのクセを解消しています。
  そのため、ヨーロッパ市場ではこだわる人の多いハンドリング面で、その指標とされていたドイツのセダンと同等かそれ以上という高評価を得られたそうです。
  一方で、ヨーロッパとほぼ同じセッティングで販売された日本市場では、他のセダンと比べて明らかに引き締まった足の乗り心地が「硬い」という評判で、走りを求める層には好評でしたが、コンフォート性を重視する保守的なユーザー層からは不評もあったようです。そのため、後期モデルでは初期ダンピングをマイルドにした「新フレックス・ショックアブソーバー」が採用されました。
当時のトレンドのなかでは地味な印象だったエクステリアデザイン
  P10型プリメーラのエクステリアデザインは、ハッキリ言ってしまうと極めて地味という印象です。良く言えば、奇をてらわずシンプルでカチッとしたテイストで、まさに当時のヨーロッパでウケそうなデザインでした。しかし、その当時の日本ではまだバブルの華やかで陽気な雰囲気が蔓延していたため、ブランニューの新型車が発表されたにしては、少し拍子抜けする感じだったのを覚えています。
  ただし、プリメーラがターゲットとしていたのは「知的な積極派」という、流行に左右されず、自身が良いと判断したものを自発的に求めるという層だったので、その狙いどおりにその層から徐々に評判が広まっていき、スマッシュヒットを記録しました。
  いま改めて見ても地味だなという印象は変わりませんが、デザインのバランスはすばらしく、ややキャビン高が気にはなりますが、なにげに空力性能が良く、無駄のないスッキリとしたボディシェイプからは走りの良さが感じられます。
  純正の14インチホイールは足もとを少し物足りない印象に見せますが、社外の16インチホイールに低扁平タイヤを履かせると一気にヨーロッパの高性能セダンの雰囲気に仕上がります。
実際に所有していたときの感想
  じつは筆者は一時期このP10型プリメーラを所有して乗っていました。タイプは2リッターの4輪駆動です。
  当時はシルビアやスカイラインなどのスポーツ系の車種に夢中でセダンに乗るつもりではなかったのですが、友人が乗り換えるということで安く譲ってもらったのがきっかけです。
  そんな動機だったのでとくに期待せずに乗ったのですが、いざ運転してみると、想像よりかなりしっかりした乗り心地に驚きました。すでに10万km近く乗られていた車体なのであちこちヤレていたことと思いますが、その時期に試乗したBMWの318iと同じようなしっかり感が感じられたのを覚えています。
  エンジンは正直言って物足りませんでした。150馬力のSR20DEは、4輪駆動のせいもあってかメーター読みで180km/h出るか出ないかというパワーで、215タイヤに履き替えると10km/hほど速度が落ちるといった具合でした。周囲のターボ車に勝負を挑む気にはなりませんでした。
  パワーこそ物足りませんでしたが、ハンドリングはほぼ不満がなく、山道でもしっかり踏ん張ってくれてキビキビ走れました。その乗り味が気持ちよく感じて、ひとりのときは好んで山道の方を選んで移動していた時期もありました。
  内装はごくごく質素な印象でとくに気分が上がる要素はありませんでしたが、使い勝手は文句ないレベルでした。なかでも印象に残っているのはシートの硬さです。形状も左右がやや張り出したタイプでホールド性がけっこう良いなと感じましたが、初めて座ったときの沈み込みの少なさが驚きでした。それでいて、東京から大阪まで一気に走ったときでも疲れが少なかったので、けっこうこの純正シートは気に入っていました。
  結局、4年ほど乗ってクラッチの故障で修理代が購入価格を超えてしまうので手放しましたが、いまでもまた所有したいなと思える車種でした。
  もし、いま改めて乗るなら、4輪駆動モデルを購入して何よりもまず「SR20DET」エンジンに載せ替えて、足まわりとブレーキを強化して乗りまわしたいですね。

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