これがロータス!? 不格好すぎない?? 路線を間違えた感のある2代目エリートは「自動車変態」には刺さるクルマだった

2024.01.09 17:20
この記事をまとめると
■ロータスには1957年に登場した「エリート」と呼ばれる名スポーツカーがあった
■2代目「エリート」が登場しているが、シューティングブレーク風の初代とはまったく違う姿だった
■フル4シーター車で、車重は1tという高級GTとも呼べるパッケージングとなっていた
これがあのロータスなんですか!?
  手元の英和辞書によれば、エリート(elite)とは「1.(社会的階級としての)上流階級[階層]  2.(集団のなかから選ばれた)精鋭、選良 3.(影響力のある)エリート[支配]層」という意味であるとのこと。
  1957年に登場した2シータークーペ「初代ロータス・エリート」は、上記1や3の「上流階級」「支配層」といったニュアンスではなく、2の「(集団のなかから選ばれた)精鋭、選良」という意味で付けられた車名なのだろう。
  たしかに、レーシングカーである「ロータス・セブン」とともに発表された初代エリートは、モノコックボディにFRP製の流麗なスタイリングを組み合わせ、驚異の空気抵抗係数0.29を実現したということもあり、まさに「精鋭、選良」と呼ぶにふさわしい存在だった。
  それに対して、1974年に登場した2代目ロータス・エリートは……どうにもこうにも「エリート感」にはいささか欠けるクルマであるようにも思える。
  初代エリートは、ロータスとしては初のクローズドボディではあったものの、車重585kgの超軽量2座式ボディに高出力なエンジンを組み合わせ、そのうえで卓越した操縦性を実現させるという、まさにロータスの伝統と美意識にのっとった1台だった。
  しかし、2代目エリートは、いささか不格好と感じざるを得ないフル4シーター車で、車重は1t以上。「……これの、どこがどうエリートなんですか?」と尋ねたくなるシューティングブレークだったのだ。
  ボディ構造的には鋼板バックボーンフレームにFRP製ボディを載せるというエラン以来のもので、ヘッドライトはリトラクタブル式。リヤシートバックの直後にリヤウインドウがあり、荷室は車室内と完全に分離されている。FRPボディも部分的に2重にされており、その間に発泡材を充填することで高い衝突安全性を確保するという、当時としては先進的で意欲的な作りではあった。
  フロントに搭載されたエンジンは最高出力155馬力(欧州仕様)の2リッターDOHC16バルブで、公表されたデータによれば、最高速度206km/h、0-100km/h加速7.1秒。トランスミッションは5速MTでスタートしたが、1975年には3速ATも追加。
  また、「高級GT」という立ち位置であったため、ロータスとしては初めてエアコンやパワーステアリングなどもオプション装備として設定された。1980年のマイナーチェンジでエンジンは2.2リッタ―に拡大され、聞くところによれば全部で2531台が製造されたということだ。
  ロータス セブンと初代エリートで(ある意味)始まり、ライトウェイトスポーツの傑作「エラン」や、漫画『サーキットの狼』でおなじみの「ヨーロッパ」で名を馳せ、そして現代においても「エヴァイヤ」「エミーラ」などの2シーターピュアスポーツを作り続けているロータスがなぜ、重い4シーターの、しかも不格好な(?)モデルを「2代目のエリート」としてわざわざリリースしたのか?
  それは結局のところ、ロータスは1970年代半ばに「事業の多角化」を目指したということであり、そして結果として失敗した──ということなのだろう。
これはこれでいいじゃないか!
  筆者は当時のロータス社の経営事情など知る由もないが、「まぁ2シーターのピュアスポーツ路線はそれはそれでいいんだけど、それだけじゃ商売ってものはどうしたって頭打ちになるし、世の中では1964年に発売された2+2の『ポルシェ911』が大層売れてるわけだからして、弊社としてもラグジュアリースポーツ路線のビッグウェーブに乗るしかないでしょ!」というような社内会議あるいはコーリン・チャップマンの独断が、おそらくはあったのだろう。
  そして出来上がったロータス初の4シーター車である2代目エリートは、不格好(?)ではあったものの、前述したような意欲的な設計が随所に施されており、先ほどから「?」マーク付きで繰り返されている「不格好」という点についても、じつはそれほど不格好ではないと、個人的には感じている。
  2代目エリートの全体的なフォルムは英国伝統の「シューティングブレーク」を範としつつ、味わい深い変態チックなフォルムを(たぶん)意図的に採用している。その姿形は、たしかに一般ウケはしにくいのかもしれないが、良い意味での自動車変態各位には、じつはかなり刺さりそうなデザインであるとも思うのだ。
  しかし、結果として当時のロータスの「ラグジュアリー路線」は不発に終わり、深刻な経営難を経て、結局はエリーゼに代表されるようなピュアスポーツ路線へと先祖返りしていった。
  こういったロータス社の過去の迷走をあざ笑うのは簡単である。「言わんこっちゃない(笑)」「だからやめとけって言ったのに(苦笑)」みたいなことは、あとからであれば誰にでも言える。サッカー競技をスタジアムの上のほうの席から、あるいは高所に配置されたテレビカメラを通して観戦し、「あーっ! 逆サイドはフリーなのに、なんでパス出さねえんだよ! 下手くそが!」とヤジを飛ばすようなものだ。
  だが、1970年代のロータス社は、当時の自動車産業界という平面のピッチで挑戦し、戦ったのだ。そして、結果として勝てなかっただけのことなのだ。
  それは決して嘲笑されるべきものではないのである……というか2代目エリート、いま見るとめっちゃシブくないですか? どこかで売ってないかなぁ……と思って中古車情報サイトを見てみたら、1台だけあるじゃないすか! 価格は「応談」とのこと! うむぅぅぅぅぅ……。

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