ビッグモーター事件は新車ディーラーにも被害が及ぶ! 巡り巡って消費者に不利益が降りかかる構造とは

2023.10.27 06:20
この記事をまとめると
■いま、全体の5〜6割が残価設定ローンを利用して新車を購入している
■物価高騰などでディーラーの利益が圧迫され乗り替え時に下取りに出すうま味が少ない
■それゆえ中古買い取り店が「お得」と言いたいがビッグモーター事件でそれも崩れた
魅力的な残価率を維持しないと新車販売もまわらない
  いま新車販売の世界では残価設定ローンを利用しての新車購入が目立っている。販売現場で聞けば、全体の半分から6割が残価設定ローンを使っているといった話も聞く。残価設定ローンは、3年や5年後の当該車種の残価相当額を支払最終回分として据え置くことで、月々の支払い負担を軽減するというもの。
  日本では、かつて企業でもリースというものがなかなか馴染まず、ましてや一般消費者レベルでは「サブスク(サブスクリプション)」などといま風に表現しても、若い世代はまだしも年配になるほどなかなか浸透しないようにも見える。トヨタやホンダ、スズキなどが新車の個人向けリースプランを用意しており、それでもじわじわと普及はしてきているようである。
  残価設定ローンの魅力を左右するのが当該車種の残価率。あくまで予想で設定するものでもあり、設定残価率維持のためにも残価設定ローンを利用すると、決められた月々の走行距離を超えたり、内外装の汚れや傷をチェックして基準点数を超えると、超過料金を取られることもある。
  ディーラーとしても販売した新車を、原則的に(再ローンを組んで乗り続けることができる)3年や5年後に当該車両を引き取り再販することになる。したがって、走行距離などに縛りを設けることで、一定レベルのコンディションを維持。当該車種の中古車相場を維持することで、魅力的な残価率を維持する必要があるのだ。
  事情通は、「以前は残価設定ローンを組むと、返済中の他メーカー車への乗り換えなどもできず、同じメーカー車を乗り続けることになっていました。しかし、いまでは残債があっても下取りして下取り査定額で残債を相殺するのが、多くのメーカー系正規ディーラーでも可能となっております。となると、自分たち(メーカーやメーカー系正規ディーラー)の手もとを離れるクルマも多くなってきたので、さらなる囲い込みを図る意味でも、個人向けカーリースが登場してきたものともいえるでしょう」と話してくれた。
  ローンで買うか現金で買うかは別としても、いままでは購入を希望する新車を扱うディーラーに下取り車として処分するのが常道とされてきた。車両本体価格からの値引き額に幅があり、オプションからも積極的に値引きができ、さらに購入予算に近づけるために、下取り査定額に値引き不足分を上乗せすることが一般的だったからである。
  しかし、いまでは物価高騰などにより値引き原資であるディーラー利益が圧迫され(コストアップ分を値上げをしたとしても十分に吸収することができない)、車両価格からの値引きを原則ゼロとする車種も登場してきた。さらに、オプションも製造コストアップを吸収するほどの値上げもなかなかできないなか、オプション値引きも抑えられてきた。以前に増して新車を売っても儲からなくなってきたなか、下取り車の再販のほうが儲かるとするディーラーも多くなり、下取り査定額の上乗せも期待できなくなっている。
中古車取引業社の不況が新車販売業社の不況を招く
  こうなると、買い取り専業店や買い取りもやっている中古車店へ、いままで乗っていた愛車を自力で売却したほうがメリットはありそうだとしたかったのだが……。ここでネックとなるのが、某大手中古車販売及び買い取り店の数々のスキャンダル。このスキャンダルの影響で、中古車だけでなく、新車販売業界でも慎重な動きが目立ってきている。「お客さまによかれと思ってやろうとしても、いまは疑惑の目で見られる可能性が高いので自粛気味に動いています」とはある新車販売セールススタッフ。
  慎重な行動が心がけられるようになれば、際立った高値買い取り額も提示しにくいし、提示されたほうとしても「何かあるのでは?」と疑心暗鬼になってしまうことだろう。
  アメリカでは新車購入した際に、それまで乗っていたクルマは個人間売買して処分するのが一般的。デジタル社会の最先端を行くかのように見えるアメリカだが、街なかではいまだにクルマに「FOR SALE」と書いたボードをつけているクルマを見かけることがある。一度個人間売買にアメリカで立ち会ったことがあり、当時はまだ新聞やタウン誌などに告知していたのだが、意外なほど早いタイミングで問い合わせがあり、購入希望者が現車を見に来たその日の晩には現金で車両代金を受け取り売買が成立し、当該車を引き渡して帰ってきた。
  日本では名義変更手続きがアメリカよりはるかに煩雑であったりするのでなかなか難しいが、個人間売買を橋渡しして、名義変更を代行することで手数料にて儲けるようなビジネスモデルが普及してもいいように見える。
  ただ、実務上の難しさだけでなく、自己責任というものも重視されるので、日本社会の現状を考えると、その意味でも普及は諸外国ほど進まないとも考えている。
  今回のスキャンダル発覚で、残念ながら消費者が中古車販売業界に向ける目は厳しくなっている。とはいっても、当該中古車&買い取り店は業界でも最大手などともいわれるほど全国規模で手広くやってきており、問題があったとしてもその規模の業者が、現状では「開店休業」のような状態になっていることによる、自動車販売業界への影響ははかりしれない。
  めぐりめぐって、新車購入時に利用する残価設定ローンの設定残価率へ悪影響が出れば、新車販売にも影響しかねない。とにかく、一刻も早い事態の沈静化を願うばかりである。

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