ロータリーエンジンをフロントミッドに搭載! だが次期ロードスターではない! 「マツダアイコニック SP」が示すマツダの未来とは

2023.10.26 09:10
マツダのキーパーソンに見どころを聞いた
  ジャパンモビリティショー2023におけるマツダのプレスカンファレンスは、社員3人、それぞれのスピーチから始まった。営業や技術、SeDV担当と、職域はそれぞれ違えど「クルマのある人生」を自ら楽しみ、顧客のそれを支えていくという。
  あとを継いで壇上に立った毛籠勝弘社長は、「いいクルマのある人生は豊かな人生」であり、「マツダはクルマが好きだという感情を育みたい、そういう社員が大勢いる」と語った。人を中心とする開発哲学を掲げるメーカーとして、共感を呼び込むための大いなるイントロといえた。
  かくして本邦初公開、というか当然ワールドプレミア発表としてアンヴェールされたコンセプトカーが、「マツダアイコニック SP」だ。パワートレインなど、スタイリング以外の詳細は伏せられたままのミステリアスなコンセプトカーだが、イメージ動画には2つのロータリーが回転するシークエンスがはっきり挿入されていた。当然、MX-30で発表された「ロータリーEV」に準ずる、PHEVパワーユニットだろう。
  コスモスポーツから歴代RX-7、そして世界で累計120万台以上が販売されたロードスターまで、いつの時代もスポーツカーと走る歓びがブランドの根底をなしてきたマツダの、今現在の集大成であり、未来へのマニフェストともとれる。
  ほかに展示車両はNAとND、新旧のロードスターに、ほぼ正確な3分の2スケールで再現されたロードスターと大画面による子どものためのドライブシミュレーター、もちろん大人用のシミュレーターも数台用意されている。
  執行役員 R&D戦略企画本部長の佐賀尚人さんは、今回の展示テーマをこう説明する。
「今回、東京モーターショーからジャパンモビリティショーに変わった節目に、注意を払ったのは単なる新車発表の場ではないこと。モビリティの良さを発信することを起点に、同時にマツダとして毛籠社長の新体制下に会社としてのパーパス、社会的な意義を定義し直していました。それが、『前向きに今日を生きる人の輪を広げる』こと。どうしても自動車メーカーは技術が先行しますが、詳しくなくても毎日のようにクルマに接しているお客様も多いですよね。マツダはまだまだ一般の方に知られていませんし、『クルマ好き』という限られた層だけでなく、『クルマが好き』という感情を、魅力を伝えたい」
  あえて“クルマ好き”という限られた層だけではなく、“クルマが好き”という普遍的な感情に働きかけたいと、佐賀さんは強調する。
「クルマはこの先もモビリティのなかで存在し続けますが、ただ走るだけの移動体ではありません。家族とのドライブの思い出とか、子どもがミニカーで遊んだりとか、そういう感情をのせるものであり続けたい。そこから作る未来だと思うんです」
  電動化が進むほどにクルマはコモディティ化され、バッテリーを床下に積んでレイアウト効率を求めていくとBEVは無機質なものに収斂されていくかもしれない。だからこそアイコニック SPのようなスポーツカー・コンセプト、別の言い方をすれば好き、感動、感情を育み、魂の宿るものは、画一的な表現じゃないところにあるはずと、佐賀さんは続ける。
  ただ“クルマが好き”目線で、このコンセプトが次なる市販スポーツカーか? と問えば、佐賀さんははっきり否定する。
「次世代ロードスターのつもりで作ってはいません。いまの技術でこんなクルマができたら楽しいよね、そういうクルマの楽しさを伝える表現としてスポーツカーを選んでいます。とはいえ骨格や技術の要素はきちんとスタディしていています。スポーツカーらしい人馬一体の感覚は全長4.2m以下で、走りの楽しさは4㎏以下のパワーウエイトレシオが条件だと考えています。乗り手をクルマの中心に配したいので、2ロータリーは縦置きでフロントミッドシップです」
今後のマツダのデザインを示す一台
  近年のマツダといえばSUVのイメージも強いが、ロータリーとバッテリーを組み合わせたハイブリッドをコンパクトに作るノウハウは、スポーツカーだけではなくSUVその他の車型でも活かせるはずと、佐賀さんは強調する。むしろそれこそが、クルマをコモディティ化させないための武器にすらなるという。
「アイコニック SPが普通の電動車とは違うことを、見てもらいたいんです。“クルマが好き”をどう広げるか? なんです」
  ロータリーは復活したが、発電用で駆動用でないことに違和感を述べる“クルマが好き”もゼロではない。その点については、デザイン本部長の中山 雅さんが次のように解説してくれた。
「使い方はいろいろあると思います。発電機としてカーボンニュートラル燃料もバイオ燃料もいける多様なソリューションでもあるんですが、MX-30のロータリーEVがすべてではありません。アイコニック SPでは……秋の夜長に想像していただきたいところですが、発電機はフロントミッドシップで駆動モーターはリヤアクスル側、つまりトランスアクスルのハイブリッドです。でもプロペラシャフトは……有り無し、どちらにもできますよね。だから物理的にロータリーでドライブシャフトを駆動することも、スポーツモード限定でも、ありえなくはないんです。これ以上は言えませんけど、デザインを眺めてもらってそういう憶測を呼ぶコンセプトであって欲しい、そういうつもりで作っています」
  11年ぶりに復活させたロータリーエンジンを、マツダが他社にはないハイブリッドの独自モジュールとして発展させる、それは確かだろう。アイコニック SPは、どう育てていくのか、マニフェストであり足がかりでもある。
「単なるデザイン・アイコンではなく、技術や生産畑の人たちにとっても、ここを目指そう、そうした指標や目標としてのアイコンと思っています。前任者の前田育男が『靭(しなり)』を提案したように、自分がデザインのリーダーとして今後、マツダのデザインをどうしていきたいか示す一台、それがアイコニック SPです。でも今後の市販車のディティールを詰め込んだものではありません。それらは各車・各モデルのチーフデザイナーがアイディアを出すものですし。心構えというか、これから大切にしていくものをデザインでお見せすること。ですから昨年11月に中長期事業計画を発表した際の動画でも、先行的にお見せしました」
  では電動化の時代、スポーツモデルのデザインはどう変わっていくのだろう?
「今は、バッテリーの大きさ=航続距離ですよね。バッテリーは空になっても重量は変わらないので、長く乗れるから大きい電池を載せるのは申し訳ない、航続距離を重さで買うのはいかがなものか。ロータリーEVはその点、日常の走行域をうまくカバーできると思います。あとスポーツカーは冷却穴が多い分、空力がよくないと昔から言われていて、そのためにいろいろなデバイスが開発されました。でも美しさを犠牲にする空力デザインではなく、空力と共存できる美しいデザインでないといけません。マツダのエンジニアたちは魂動デザインの滑らかさを保ったまま、空気を流す技術を開発してくれたんですよ。詳しいことはまだ言えませんが。アイコニック SPはそれこそ今回、ターンテーブルの上で舐めるような視線を浴びるでしょうが、静的状態でも美しいと思える、そんな忘我の時を過ごしてもらいたいです」
  ちなみに中山さんがアイコニック SPのデザインにおいて、もっとも心砕いた部分は、上から見た時のコークボトル・ラインだという。
「今日の手法からするとタブーですらありますが、上からドラマあるデザインにしたかったんです。ショルダーもなく、むしろ古典的な文法に沿っています。あとこれは売り込みですが、世界一、発色にこだわったレッドを外装色に用いています。マツダはこれまでもレッドにこだわってきましたが、量産車じゃない段階の今はヴィオラレッドといいます。花や楽器にまつわる名前です」。
  では逆に、このコンセプトモデルのデザインは今後のマツダ車に、どれほど落とし込まれていくのだろう?
「そうですね、ディティールを拾わないと先ほど申し上げましたが、マネキンに着せた服をそのままもっていくのではなく、骨格の考え方を次のデザインに込めていく、そしてこのコンセプトで見たような驚きを、市販車で実現していくことでしょうね」

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