この記事をまとめると
■スバルが手掛けたFF車を紹介
■元々スバル車はFFがベースということもあり相性がいいとされている
■最近はFFモデルが設定される車種が増えつつある
AWDのイメージを持つスバルはFFも得意だった
スバルといえばAWDのパイオニア的存在としての地位を確立しているメーカーだ。
しかし、そのルーツにはFFモデルが欠かせない存在であった。初のスバル製の乗用車といえば軽乗用車であるスバル360が有名だが、量産小型乗用車は1000ccの水平対向4気筒エンジンを搭載したスバル1000というモデルになる。1966年に発売を開始したこのスバル初の小型乗用車がFFを採用していた。
以後、1972年の初代レオーネ エステートバンにAWDが設定されるまで小型乗用車はFFのみのラインアップとなっていた。ちなみにFFとAWDに水平対向エンジンの組み合わせという印象の強いスバルだが、じつはスバル360登場前の1954年に試作されたスバル1500(コードネーム:P-1)という小型乗用車は直列4気筒のFR車であったことは意外と知られていない。
2012年にBRZが発売されるまでの60年近くの間スバルにはFR車が存在しなかった。それだけスバルはFFとAWDの膨大なノウハウが蓄積されたメーカーといえるだろう。さて、今回はそんなFF車にルーツを持つスバル車のなかでも名車として誉れ高いモデルを4台を紹介しよう!
スバル1000
先述したようにスバル1000は同社初の小型乗用車。スバル360を成功させた百瀬晋六氏が手がけた乗用車で、キャビンは広く、走りは軽快というパッケージング。インボードブレーキやダブルオフセットジョイントといった当時としてはかなり凝ったメカニズムも多数採用された。
筆者も実際にステアリングを握ったことがあるが、車両重量はわずか695kgと驚くほど軽量でわずか55馬力というスペックながら、とても軽快に走る。現代のクルマと比較しても心地よいと感じるほどだ。当然ながらパワーステアリングなど装備されていないものの、その必要性をまったく感じないほど低速域での操作も軽く、扱いやすい。出力が大きくないこともあり、目立ったトルクステアなども感じさせないフィーリングで、そのスペックには舌を巻くほどであった。
初代 レガシィセダン VZ
レオーネからレガシィへ世代交代を果たし、主力を徐々にAWDとしていったスバル車だが、2代目まではFFモデルもラインアップされていた。初代にはセダンのみの設定となるが、2リッター水平対向4気筒DOHCエンジンにMTを組み合わせることのできるVZというグレードが存在した。もちろんAWDやATの設定もありながら、2リッターという排気量のDOHCエンジンにMTを組み合わせたFFのレガシィは初代モデルのみ(2代目の2リッターFF仕様のレガシィはブライトンやTX系といったSOHCエンジンのみ)。
EJ20エンジンの気持ちの良いフィーリングをあえて自然吸気エンジンで楽しむモデルとしては、車両重量がわずか1200kgという初代レガシィVZのFF仕様は、純粋にエンジンのフィーリングを楽しめるモデルともいえる。最高出力こそ150馬力と控えめだが、5MTで操ればワインディングでも十分に楽しめるモデルであった。速さのGTやRSに対し、ピュアにEJ20を満喫するという愉しさを満喫できる希少なモデルといえる。
駆動方式こそ違えど、軽量ボディでエンジンのフィーリングをNAで愉しむという点ではBRZにも通じる部分もあるとも言える。
エクシーガ 2.0i-S
スバルの国内販売車で最後の多人数モデルとしていまなお根強い人気を誇るエクシーガ。7人乗りでありながら、その卓越したドライブフィールはワインディングでも多人数乗車を感じさせない軽快な走りが自慢のモデルだ。
このエクシーガ、EJ20ターボを搭載した「GT」が注目されがちだが、じつは2リッターNAエンジン搭載車に設定されたFFモデルが存在した。登場時はNAエンジン搭載車はすべて4速ATだったが、改良モデル時に、リニアトロニックCVT車と4AT車を設定。とくにEJ20エンジン+リニアトロニックCVTでFFモデルという組み合わせはエクシーガだけに設定されたレアなコンビネーション。さらにFFのリニアトロニック車は10.15モード燃費が15km/Lと優秀な点も見逃せない。
搭載されるエンジンは、2リッターDOHCのEJ204。吸気側のバルブタイミング機構AVCSを搭載している。7シーターで、EJ20+リニアトロニックCVTをFFで軽快に楽しめる魅力を備えるモデルだ。
インプレッサ STI Sport
「SGP=Subaru Global Platform」と呼ばれる、新世代のプラットフォームを初めて採用したスバル車として話題となり、「2016-2017 日本 カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した記念碑的モデル。圧倒的な動的質感の向上は、モデルチェンジのタイミングもあり、フラッグシップモデルのレガシィシリーズを一時的ではあるが凌駕したことで”下剋上モデル”とまで言わしめた。
そんな現行型インプレッサのなかでも、STIがチューニングを施したサスペンションをもつ「STI Sport」は、スバル車としてもっともベーシックなモデルに設定することで、STIというブランドを広く知ってもらえる登竜門的存在としても注目された。もちろんSTIの名に恥じない、しなやかな乗り心地とステアリングフィールは絶品! SGPとの相乗効果で高い評価を得ている。また、STIを冠した歴代モデルではじめてFF車を設定したこともこのモデルにおける大きなトピック。AWDでなくてもSTIの”味”を試せるモデルとしてイチオシの存在だ。
スバル車=AWDのイメージだが、そのルーツはFF車であり、現行モデルでもその魅力は決して色あせていない。話題の最新SUV「クロストレック」にもFFが設定されており、軽さとコストパフォーマンス両立した「スバルのFF」にもぜひ注目したい。