過去に挑戦はしているけど……軽とかリッターカーとかの小排気量ディーゼルが存在しないワケ

2022.11.28 11:40
この記事をまとめると
■軽自動車などの小排気量エンジンにディーゼルが存在しない理由を解説
■ディーゼルエンジンは構造上高回転でパワーを稼ぐ方式の小排気量エンジンとは相性が悪い
■ごくわずかに小排気量ディーゼルエンジンは登場しているが、多くはコンセプトカー止まり
ディーゼルエンジンは小排気量に向かない?
  2015年に発覚した「ディーゼルゲート」は、フォルクスワーゲン・グループにおけるディーゼルエンジンの規制逃れが問題となったもので、それがきっかけになって欧米の自動車メーカーは電動化トレンドを推し進めている。
  もし、ディーゼルゲートがなければ、おそらく欧州系メーカーはいまでも「CO2削減効果の高い内燃機関こそ正義」といった主張をしていたことだろう。そうなれば、全方位ディーゼルといった商品戦略が強化され、日本の自動車メーカーも追随する時代になっている可能性もあった。歴史に「if」はないというが、もしフルラインアップディーゼルが求められたとすれば、必ず必要になったのがコンパクトカー向けの小排気量ディーゼルエンジンだ。
  もっともディーゼルエンジンというのは圧縮着火型の内燃機関であり、その特性から高回転まで使う設計は向いていない。小排気量エンジンというのは、どうしても回転によって馬力を稼ぐ必要があるためディーゼルとの相性がいいとはいえないのだ。
  また、昨今の厳しい排ガス規制をクリアするためには、コンパクトカーを前提とした場合、ディーゼルエンジンの排ガス後処理装置のコストがユーザー許容範囲を超えるという見方もある。高価なコンパクトカーを望むのは、現実的には少数派なのも事実だ。
  というわけで、世界的にみても小排気量ディーゼルというのは超レアなパワーユニットとなっている。
  そのなかで、もっとも最近の小排気量ディーゼルといえるのがスズキの「E08A型」エンジンだろう。現在は、ディーゼルエンジンからフェードアウトしているスズキだが、2015年の発表当時は驚くべきスペックの小排気量ディーゼルとして話題を集めた。
 E08A型エンジン主要スペック
  エンジン形式:2気筒DOHC 8バルブ・インタークーラーターボ ボア×ストローク:77.0×85.1mm 総排気量:793cc 圧縮比:15.1 最高出力:35kW/3500rpm 最大トルク:125Nm/2000rpm
  軽自動車でも見かけないような2気筒レイアウトの選択は、おそらく気筒当たり容積を400cc級としたかったからだろう。それにしても、ターボ過給しているとはいえ、793ccという排気量で125Nmの最大トルクを発生しているのには驚かされる。
技術的には生産可能だが肝心なコストがかなりかかる
  しかしながら、ニッポンの伝統的には小排気量ディーゼルといえばダイハツを忘れるわけにはいかない。
  1980年代にダイハツ・シャレードに搭載された「CL」型 1リッター3気筒ディーゼルエンジンは、当時の世界最小排気量ディーゼルだった。のちに『ロックンディーゼル』というキャッチコピーで宣伝されるなど、ディーゼルをポジティブに捉えるムードを高めたエンジン、モデルとしても記憶に残る。
  シャレードのラインアップとしては廉価版として自然吸気バージョンがあり、パフォーマンス仕様としてターボディーゼルが用意されていた。筆者の経験は、かなり年式の経ったNAディーゼルの印象しかないのだが、残念ながらディーゼルに期待するトルク感を味わえるような代物ではなく、単に非力で振動の大きいエンジンという印象だった。
  そんなこともあって、ダイハツのリッター・ディーゼルは1990年代半ばには量産ラインアップから消えてしまった。それでも3気筒で1リッターということは、1気筒削って2気筒にすれば660ccになるはずで、軽自動車の規格が660ccになったことにはCL型エンジンの系譜が軽自動車用として蘇ることを期待する声は根強いものがあった。
  そんな過去もあってか、2003年の東京モーターショーにてダイハツ小排気量ディーゼルのDNAは、突然に復活を遂げた。
『TOPAZ 2CDDI(トパーズ ツーシーディディアイ)』と名付けられたディーゼルエンジンは、660ccの直列2気筒エンジン。しかも直噴・2サイクルであり、スーパーチャージャーとターボチャージャーによる過給&掃気システムを搭載という凝ったメカニズムで、コンセプトカー「ai」に搭載する設定だった。
  2サイクルだが、ヘッドはDOHC4バルブ。直噴方式、コモンレールシステムの採用により優れた燃焼性能を獲得し、大きな低速トルクと超低燃費を追求するという謳い文句だったが、軽自動車用のエンジンとしては、あまりにも高コストなメカニズムであることは明らかであり、量産エンジンとして陽の目をみることはなかった。

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