乗り心地にとことんこだわる シトロエン「C5 X」快適性とは

2022.10.26 14:30
シトロエンの旗艦モデルとして「C5 X」が発表された。2010年代に「C6」、「C5」の生産が終了して以来、久しぶりに“ビッグ・シトロエン”が復活したとあって、クルマ好きやフランス車愛好家の間で話題となっている。シトロエンC5 Xは、実にシトロエンらしいモデルだった。では、「シトロエンらしさ」とは何か?ちょっとだけ歴史を振り返りながら紹介したい。
1919年創業のシトロエンは、1934年に前輪駆動車の「トランクシオン・アヴァン」を発表した。この時代に前輪駆動を採用したのは画期的で、初代「ミニ」が1959年、初代フォルクスワーゲン「ゴルフ」が1974年だったことを思えば、いかに先進的だったかがわかる。 また、1955年にはハイドロニューマチックサスペンションを装備したシトロエン「DS」がデビューした。通常のサスペンションには金属をぐるぐる巻きにしたコイルを用いるけれど、ハイドロはオイルとガスを封入したコイルを用い、ふんわりとした乗り心地を実現した。また、DSを筆頭に「SM」、「XM」、「BX」などの歴代モデルは宇宙船のようなデザインでも注目を集めた。ひとつ小ネタを披露すると、1927年に大西洋を横断したチャールズ・リンドバーグが残した名言に「翼よ、あれがパリの灯だ」とある。「パリの灯」とは、エッフェル塔に掲げられたシトロエンの電飾看板のこと。つまり、広告やマーケティングの分野でも一歩先を行く、ユニークな存在だったのだ。
新型C5 Xの外観は特徴的だ。クーペのようにエレガントなルーフラインは、実用的なハッチバック形状へとつながっていく。最低地上高を少しだけ上げているあたりに、ほんのりとSUVの風味も感じられる。モデル名の「X」はおそらく、クーペとハッチバックとSUVがクロスオーバーしていることを意味しているのだろう。 ステーションワゴンをベースにSUVのテイストを加えたメルセデス・ベンツ「オールテレイン」や、アウディ「オールロードクワトロ」とも異なる独特の存在感を放つ。全長が長くなるステーションワゴンではなく、コンパクトなサイズに収まるハッチバックをベースにしたのは、いかにも合理的なフランス人らしいし、二段構えになっているリアスポイラーもほかでは見たことがない造形だ。
個性的な外観に比べると、インテリアはすっきりとまとまっている。さすがにフラッグシップモデルだけあって質感は高く、シートや内張りにはシトロエンのアイコンであるダブルシェブロン模様をあしらっているあたりも芸が細かい。シートに座ると、これがいかにもシトロエンといった掛け心地だった。表面はふんわりとしているのに中はしっとり、というとまるで食パンか肉まんの食レポのようだけれど、絶妙な硬さと柔らかさで、身体を支えるのではなく包み込んでくれる。
C5 Xには1.6リッター・直列4気筒ガソリンターボエンジン仕様と、このエンジンにプラグインハイブリッドシステムを組み合わせたPHEV仕様がラインアップされている。今回試乗したのは1.6リッター・直4のガソリンターボ。アイシン製の8段オートマチック・トランスミッションとの組み合わせで、滑らかに、力強く走るけれど、特にこれといって光るところはなかった。 だが、この特に光るところがないエンジンというのも、シトロエンらしい。このブランドは昔から、「エンジンは効率よく走ればそれでいい」と考えている節があり、マセラティ製のエンジンを積んだシトロエン「SM」を例外とすると、エンジンには無頓着なのだ。音がいいとか回転フィールがいいとか、エンジンの官能性なんかどうでもいいと割り切っているようにお見受けする。
その一方で、こだわっているのが乗り心地だ。C5 Xはいかにもシトロエンらしい、上下方向にゆったりと動く快適な乗り心地を提供してくれる。人によっては筋斗雲( 鳥山明の漫画『ドラゴンボール』に登場する架空の乗り物)に乗ったようとか、魔法のじゅうたんに乗ったようと表現するこの乗り心地は、プログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)という独自のサスペンションシステムによるものだ。ハイドロニューマチックサスペンションとは仕組みが異なるけれど、乗り心地にかける熱い思いは不変なのである。 通常のサスペンションのダンパーは、大きく上下にストロークした時に、最終的にはゴムやウレタンのパーツが衝撃を吸収する。結果として、これが粗い乗り心地につながってしまうのだが、PHCは大きく動いた時のために、もうひとつダンパーを用意して衝撃を吸収する構造になっている。これこそがシトロエンのこだわり抜いた乗り心地のタネ明かしだ。
ちょっと風変わりで、ほかにライバルがいないのがシトロエンC5 X。ただしハッチゲートの使い勝手の良さや長距離でも疲れ知らずの乗り心地は、ゴルファーに向いているともいえる。あとひとつ、こんなことを書くとシトロエンは怒るかもしれないけれど、誰かとカブるリスクが少ないクルマ選びであることは、間違いないだろう。
シトロエンC5 X SHINE(受注生産)  車両本体価格: 484万円(税込)ボディサイズ | 全長 4805 X 全幅 1865 X 全高 1490 mmホイールベース | 2785 mm車両重量 | 1520 kgエンジン | 直列4気筒 DOHC ターボ排気量 | 1598 cc変速機 | 8速 AT最高出力 | 180 ps(133 kW) / 5500 rpm最大トルク | 250 N・m / 1650 rpm
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Text : Takeshi Sato

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