まるで“オーダーメイド”の乗り心地 BMW「アルピナ B4 グランクーペ」

2024.04.24 12:00
F1マシンの設計はドライバーの腰骨の幅を測るところから始まる。ドライバー個人に合わせた究極のワンオフ(オーダーメイド)だ。一方、一般車は量産品であり、不特定多数の顧客に向けたものに過ぎない。だが、ステアリングを握り、走り始めた瞬間に「おっ、これは!」という不思議なフィット感に包まれるプロダクションカーがあった。今回試乗したBMW「アルピナ B4 グランクーペ」だ。
2019年にデビューしたG26型のBMW「4シリーズグランクーペ」がベース。BRUDERでは以前、ディーゼルMHEVの「アルピナ D4S グランクーペ」をレポートしている。ざっくりと言うならB4はガソリン版なのだが、ことアルピナに関しては、そう簡単に結論を導き出すことはできないだろう。
D4Sは355psの最高出力を高めのギア比で伸ばす高速クルーザーであるのに対し、B4は495psの圧倒的パワーとギアをクロスさせたAT(オートマティックトランスミッション)による攻撃的なモデル。走り出してみると、その違いは誰にでも理解できるはずだ。ドライバーを駆り立てるようなキャラクターの源泉となるのは、BMW M社製の3.0リッター、直列6気筒ビターボ(ツインターボ)の「S58ユニット」。最近ではめずらしい純粋なハイチューンのガソリンエンジンだ。
レーシングエンジン並みのパワーを誇るS58の鼓動は、思いのほか静かだった。コイルスプリングで懸架された20インチのピレリタイヤも、一般的なペースでは穏やかな乗り心地だ。そして右足に少しだけ強く力を込めると、クルマ全体に生気がみなぎり、世界観が一変する。アルピナらしいブルーの文字盤のスピードメーターの上で、乗り手が想像する以上の勢いで針が跳ね上がり、シフトアップが繰り返される。特に5000回転を超えてからの鋭いパワーは真骨頂といえる。
ステアリングを切り込んだ時のフィーリングも優れている。前輪の舵角でクルマを曲げていくのではなく、車体全体が抵抗感なくコーナーに吸い込まれていく感覚。自分がイメージしていた以上にすっきりとした身のこなしを披露してくれる。そこで多くのドライバーはこう思うだろう。「このクルマは自分のために、あつらえられたのでは?」と。この感覚こそクルマ好きが口にする“アルピナ・マジック”である。
ときに自動車世界の神話のように語られるアルピナだが、その“マジック”とは一体何なのか? もちろん実際のアルピナは一人のオーナーのためのあつらえ品ではない。年間わずか1700台ほどではあるが、ドイツのアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペンGmbHによるプロダクションカーである。
走りに関わるすべての部分に手が入れられていることが“アルピナ・マジック”の物理的な要因といえる。独自エンジンのパワー特性と、専用開発された標準装着タイヤの合わせ込みの妙。そこにはもちろんギア比や変速タイミング、サスペンションとボディ剛性のバランス、超高速域のスタビリティを確保するエアロの追加といったものまでが含まれる。
特に一般的なクルマの専用開発タイヤは1モデルにつき2~3社から供給されるが、アルピナの場合は1社1銘柄だけ。その専用タイヤに向けピンポイントでセッティングを詰めていけるからこそ、アルピナ独特の一体感、シャープなドライブフィールが現出する。以前D4Sをドライブしたときには、滑らかなクーペシルエットの中に確保されているリアシートの存在を意識せずにはいられず、家族で使いたくなるモデルだった。今回のB4は純粋なスポーツクーペのオルタナティブになりえると確信した。それは今日、味わうことができる究極の一台といって差し支えないだろう。
BMW アルピナ B4 グランクーペ  車両本体価格: 1495万円(税込)ボディサイズ | 全長 4790 X 全幅 1850 X 全高 1440 mmホイールベース | 2855 mm車両重量 | 1910 kgエンジン | 直列6気筒 ビターボ ガソリン(ツインターボ)排気量 | 2992 cc最高出力 |  495 ps(364 kW) / 5500 - 7000 rpm最大トルク | 730 N・m / 2500 - 4500 rpm変速機 | アルピナスウィッチトロニック8速ATお問い合わせ先alpina.co.jp
Text : Takuo Yoshida

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