繊細にしてどう猛な走り BMW「アルピナXB7」

2022.10.17 08:44
BMW「アルピナXB7」は、「X7」をベースに、アルピナが製作したフルサイズのSUVモデルだ。アルピナといえば4ドアのリムジン(4ドアセダン)が有名だが、2014年に同社初のSUVモデルである「アルピナXD3ビターボ(BiTurbo=ツインターボ)」をリリースして人気を博し、“背の高いアルピナ”の需要を証明した。
BMW史上で最大級のキドニーグリルと「ALPINA」の文字を掲げたフロントのチンスポイラーが作り出す顔の威圧感は相当なものだ。サイドにはアルピナ伝統のデコストライプが走り、テールエンドもアルピナ製のリアエプロンと、左右2本のスポーツエグゾーストがスポーティーな印象を与えている。ホイールもアルピナの伝統を引き継ぎ、20本スポークの鍛造“アルピナクラシック”21インチが標準装備されているが、今回の試乗車はオプションの23インチが装着されていた。
XD7というクルマの存在価値は2点に絞られる。アルピナはクルマ好きにはすっかりおなじみの稀有なブランド。BMW車をベースとすることを正式に認められていることも例外だが、そこに年産1700台ほど(BMWは252万台)という希少性と控えめだが強烈なインパクトがあり、この巨体をしてなお、アルピナらしい精緻なドライブフィールを秘めていることだ。
XB7のパワーユニットは4.4リッター・V型8気筒ビターボと8速ATの組み合わせで、駆動はAWDとなる。エンジンの最高出力は実に621psで、これは同じシリンダーブロックと排気量の「X7 M50i」に搭載されたエンジンの530psを大きく上回る。また、車両重量2730kgに有効な最大トルクは800N・mに達している。走り始めてものの数分で、BMW X7を“アルピナ化”することのメリットに気づかされた。ハンドリングは、ドライバーのステアリング操作に対してほとんどギャップを感じさせない。その結果として、ボディの大きさや重心の高さといったフルサイズSUVの物理的なデメリットを、なかったことにしてくれるのだ。
XB7には走行状態に応じて自在にセッティングを変更するエアサスペンションや、後輪操舵といったハイテクがインストールされているが、その存在を感知させない仕立ての良さもまた“味付け”に定評があるアルピナらしい。通常走行時はフルサイズのSUVらしい運転席の眺めが印象的だが、高速走行ではスピードを感知したエアサスが車高を40mmも下げる。車高を落とせばボディのエアロダイナミクスや4つのタイヤのアライメントも変化するし、車体重心も下がることになる。これらを熟知した上で、機構的な部分だけでなくコンピューターソフトの内部にも入念な“アルピナ化”が施されている。
XB7は3列シート、7人乗りのフルサイズSUVとしての一面もあるが、高いロードホールディング性能を武器にして、高速道路を矢のように突き進むアルピナの伝統的なキャラクター性もしっかりと込められている。室内はBMWの基本設計を活かしつつ、随所にアルピナ仕様が見てとれる。青いメーターパネルやステアリングセンターのエンブレム、そしてシリアルナンバーが刻まれたシルバーの専用プレートは伝統的なモチーフと言えるだろう。オーダーメイドの内装材はブランドの代表色でもあるエクリュの上質なレザーと赤みを帯びたウッドの組み合わせが人気だ。
アルピナのADAS(先進運転支援システム)はBMWと全く同じなので、渋滞時にはハンズオフの状態でドライブが可能だ。またオーディオやナビゲーションシステムなどのインターフェイスは最新のものが搭載されるという点も、少量生産でありながら使い勝手の部分で妥協する必要がないアルピナの魅力と言える。
昨今はイギリスやドイツ、イタリア製のハイエンドSUVが市場を賑わせている。その中にあって、BMWアルピナXB7は外観上は派手なアピールを感じさせないが、ドライビングの質にこだわるドライバーの選択肢になることは間違いなさそうだ。
BMWアルピナ XB7   車両本体価格: 2528万円(税込)ボディサイズ | 全長 5165 X 全幅 2000 X 全高 1830 mmホイールベース | 3105 mm車両重量 | 2730 kgエンジン | V型8気筒 ビターボ排気量 | 4395 cc変速機 | 8速 AT最高出力 | 621 ps(457 kW) / 5500 - 6500 rpm最大トルク | 800 N・m / 2000 - 5000 rpm0-100km/h | 4.2 秒最高速度 | 290 km / hお問い合わせ先
ニコル・オートモビルズ合同会社alpina.co.jp
Text : Takuo Yoshida

あわせて読みたい

アルピナD3ビターボ(FR/8AT)約束された「知的な走り」
RESENSE
バスには最新技術満載だった!? 桁違いのトルク140kgmにエアサスまで採用! 主流となったフィンガーシフトってなんだ?
ベストカーWeb
これがにんじんジュース? 驚きのカゴメ新商品を体験レポート
antenna
レクサスUXと同車格なのに……LBXが小さくても高級に感じるワケって? 輸入車と比較して意外すぎる結果とは
ベストカーWeb
【海外試乗】マセラティ伝統の内燃機に昂る!V8トライデントのカーテンコール「マセラティV8レンジ・ドライビングエクスペリエンス」
CARSMEET WEB
持ち運びに便利なハンドルタイプのモバイルバッテリー「700-BTL054シリーズ」発売
PR TIMES Topics
まるで“オーダーメイド”の乗り心地 BMW「アルピナ B4 グランクーペ」
BRUDER
アルピナB5ビターボ(FR/8AT) アルファベットならずともBはDに先んじるか
RESENSE
白井屋ホテルから母の日限定”クッキー缶” 「ラ フェット デ メール」登場
PR TIMES Topics
これぞサラブレッド アストンマーティン「DBX707」ずば抜けた運動性能
BRUDER
【比較試乗】ビジネスエクスプレスに使うならステーションワゴンかSUVか?「BMW X6 M vs アウディRS6アバント」
CARSMEET WEB
限界に挑戦し続ける姿勢とサステナブルな価値観。ヨットレース「アメリカズカップ」に世界が熱視線を送る理由
antenna*
【比較試乗】共にV8ツインターボユニットを搭載するハイパフォーマンス・クーペSUV。バランス重視ならカイエンS、スパルタン好きならX6M一択!「ポルシェ・カイエンSクーペ vs BMW・X6Mコンペティション」
CARSMEET WEB
【比較試乗】ブランドを代表する究極の高性能モデル。スーパースポーツのそれぞれの世界観とは?「メルセデスAMG・SL vs BMW・M8クーペ vs アウディ・R8スパイダー」
CARSMEET WEB
【NEW ERA®✕ANEICA】コラボ第二弾!キャップとTシャツ発売開始
PR TIMES Topics
SUV、電動化……いまとこれからのトップエンドを考察するシン・フラッグシップ論「メルセデスベンツ・EQS SUV vs BMW X7 vs アウディ・Q8 e-tron」
CARSMEET WEB
【比較試乗】熟成の域に達したミドルサイズSUVに求めるのは俊敏なハンドリングかレスポンスか?「ポルシェ・マカン vs BMW iX3」
CARSMEET WEB
大型連休前 フランス気分を楽しめる「フランス展 2024」伊勢丹新宿店 にて開催
PR TIMES Topics
【究極の1台を探せ! ハンドリング編】走り好きの山田弘樹が本音で選ぶ、ワインディングでハンドリングが楽しいマシン!「アルピーヌ・A110R vs BMW・X1 vs マセラティ・グレカーレ vs マツダ・ロードスター」
CARSMEET WEB
マセラティの最新SUVが見せた完成度「グレカーレ トロフェオ」 
BRUDER
限界に挑戦し続ける姿勢とサステナブルな価値観。ヨットレース「アメリカズカップ」に世界が熱視線を送る理由
antenna*