J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で、様々な企業が取り組んでいる「働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。1日のスタートに「新しい働き方」のヒントをシェアしています。
8月19日~8月22日の放送では、「日本ランズエンド株式会社」が取り組む「働き方改革」をご紹介しました。
「ランズエンド」は、1963年に、アメリカのシカゴでヨット用品の販売からスタート、現在ではカジュアルウエアを中心としたアメリカ有数のファッションブランドとなっています。
日本では1994年に営業開始。カタログやインターネットによる通信販売を手掛け、今年が25周年となります。従業員数はおよそ220名。コールセンターを抱えていることもあり、従業員の8割が女性ということです。
「日本ランズエンド」では、日本の中ではかなり早い時期から「ワークライフバランス支援策」としてさまざまな施策を取り入れています。広報室マネージャーの山崎友子さんによれば、ここには“アメリカの風土”という背景があるそうです。
創業者はヨットマンでコピーライターであり、たくさんの指針を残していますが、そのひとつが「お客様と従業員を大切にしなさい。そうすれば成功はおのずとついてくる」というもの。「その理念がいまだに生きている」と語ります。
従業員を大切にすることは業績向上のうえで欠かせない要素・・・という文化が土台にあるので、そもそも女性従業員・管理職が多いし、また時間ではなくアウトプットで評価する、という考え方が根底にあるそうです。
2008年から始めた「ワークライフバランス支援策」の施策では、女性のライフステージに沿う・・・というところから、まずは育児に関する休業のことや育児休業の有休化からスタート。
育児休業期間に関しては事由によらず1歳6か月または1歳到達後の3月末まで取得可能とし、育児休業の有休化は男性も取得可能としました。これは当時ではかなり珍しいことでした。
2日目は、2010年に始めた、毎週金曜日の「ノー残業デー」についてうかがいました。
山崎さんによると、このころはまだ、けっこう遅くまで仕事していることが多かったので苦労していた時代で、定時になったら人事の人がカネを鳴らしながら歩いたりしていたとか・・・。いまからすると隔世の感があるということです。
アメリカ本社が非常に働きやすい会社であることもあって、「なぜ日本だけそんなに遅くまで仕事をしているのか?」と言われることが多く、インターナショナルのトップ(当時、日本ではまだ聞き慣れない言葉だった“サステナビリティ”推進の責任者でもあったとか)が出張で来て「定時だから・・・」と電気を全部消していったこともあったそうです。
ここには「定時に帰ることは家族との時間を大切にすること、そしてエコを考えることでもある」という考え方が背景にあり、しかも彼と日本人従業員の間には信頼関係があったので、「強引に・・・というよりは、お祭り騒ぎのようにキャーキャーいいながらの暗闇帰りで、そういうことがあったからこそ、皆が働き方についてしっかりと考えるようになった」と山崎さんは振り返ります。
ここで重要なことは何だったのでしょう?
「制度ができたからすぐに変わるとか、みんなに定着するということは絶対に無理。やはり根気強く続けることが大切で、いちばんのキモはトップ!トップが啓もうし、根気強く続けて自分も守ることが大切です」と山崎さん。現在のローガン社長にもハッキリとその姿勢があるそうで、そういう姿勢を見せられるから、社員もどんどん帰ろうとなるわけですね。
3日目は、2011年に導入した、5月下旬~9月上旬の金曜日は午後1時以降を退社可能とするという「サマーアワーズ」、そして2017年に導入した、毎月最終金曜日には午後1時以降を退社可能にするという「プレミアムフライデー」・・・このふたつの施策についてうかがいました。ただし決まった年から全員が取っているというわけではなく、2018年度になって78%の取得率になっているそうです。
山崎さんは「効率よく進めるために、ある意味学ばせられている」と語ります。
やらなければならないことは自分の裁量にかかっているわけで、ふだん休みを取ることに慣れると、長い夏休みを取るのにも慣れてくる。「申し訳ございません」と言いながら休むのではなく、「休むからには仕事はちゃんとやっている」と、堂々と休むようになるということです。
それにしても、このような大胆な施策を取り入れても仕事が上手くまわって行く・・・そのためには、何が必要なのでしょうか?
山崎さんによれば、「やらなければならないことをどうやって終わらせるか?を自分の中でマネジメントすることが大切」とのこと。
山崎さん自身、広報なので相手があることながら、その中でどのように折り合いをつけられるか?はいつも考えているし会社にいないときにもマネジメントしていく、という考え方を徹底しているそうです。外にいるときも自分が動きやすいような状況を作る・・・これも効率化。それが人生にもプラスになるし、自分と会社が互いにいい形で仕事をする状況が整えられるのが、「ワークライフバランス支援策」の良い結果では?と語っています。
最終日は、こういった制度を整える中で、積極的に取り入れている、福利厚生的な取り組みについて・・・中でも、「ファミリーデイ」は従業員の家族、とくに子供を対象に職場見学とレクリエーションを提供するもので、子供たちが“ランズエンド・ファミリー”へ感謝するという意味もあるそうです。
また、「マッサージサービス」は、月に2回ぐらい出張してもらうというもので、会社の中でもリラックスする時間と集中する時間をマネジメントすることが必要という考えから生まれたものだそうです。「日本ランズエンド」ではほかに、「社内ヨガ教室」や「オフィスBGM導入」なども導入しています。
さて、そんな中で現在どんな課題があるのでしょうか・・・?
「有給休暇の取得やサマーアワーズの利用などが100%ではない。なぜ全員が取れないのか?100%取得するためにはどうしたらいいか?が課題」とのことで、「どんな人も取りこぼさないのがランズエンドらしい考え方」と山崎さんは語ります。
さらに・・・「外資ということもあり新卒で育ってきた人ばかりではなく、自分のプロフェッションやスキルを持って集まった会社でもあるので、会社が個人の人生に介入するのは簡単ではない。制度としてだけでなく、もっと詳細に繊細にアプローチしていく必要がある」と語っていただきました。
今週のお話から導き出す「WORK SHIFTのヒント」は・・・『お客様と従業員を大切にしなさい。そうすれば成功はおのずとついてくる』
「ランズエンド」の創業者でヨットマン、ゲリー・コマ―のこの精神が「日本ランズエンド」にも受け継がれています。