未来の社会を支える!AIを上手に取り入れた新しい医療の在り方とは

2019.07.24 00:00
J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で
様々な企業が取り組んでいる「働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。1日のスタートに「新しい働き方」のヒントをシェアしています。

7月1日〜7月4日までの4日間は、医療現場の働き方に関するアクションに注目しました。今回お話を伺ったのは三浦半島の中核病院、神奈川県横須賀市の横須賀共済病院の病院長・長堀薫さんです。横須賀共済病院では現在、医師や看護師の業務改善を主な目的に「AI」への業務のタスクシフトに関する実証実験が行われています。
病院内で行われた調査によると医師、看護師ともに時間内の業務においてカルテ作成などの「入力業務」が3割を占めているそうで、今回の実証実験で音声入力による「カルテ作成」に関する実験が行われています。
長堀先生によると横須賀共済病院は、1日約1800人の外来患者さんが訪れ、約600人の入院患者さんを抱えているそうで、年間で換算すると外来は約42万人、入院は21万人の診療を行っており、業務のうち3割を占める「入力業務」の負担を軽減することで、医療従事者のココロとカラダを守る取り組みにつながるとお話してくださいました。
また、こうした入力業務が音声で入力できるようになることで患者さんとの向き合い方も向上することが期待されているそう。このAIプロジェクトは、AI開発企業「9DW」と共同で取り組んでいるプロジェクトで、現在は専門用語が多い医療の現場において、そうした「専門用語」をAIに学ばせている段階とのこと。今年度末を目標に「音声によるカルテの自動入力技術」の確立を目指して、今後も取り組みが行われていくそうです。
一方でAIという技術だけではない「働き方」「組織改革」も行われている横須賀共済病院。副院長を経て、院長になられた長堀さんですが、院長就任後に感じていたのは「病院のガバナンスを確立したい」という思い。こうした思いを実現するべく、院長就任後にMBAのセミナーに通い、マネジメントに必要なファクターを学ばれたそう。
その後、大きな方針の下それぞれの動きは、各部署が自発的に取り組みを行うという組織改革。長堀院長によると以前は、内科や消化器内科、整形外科など、「テナント型の組織」だった関係が改善され、組織の中での連携が強化されたこともあり、現在は救急患者の応需率が98%まで改善。
また患者さんの来院数も増加。三浦半島の中核病院としての「役割」を大きく担う病院から、ワールドベストホスピタルへとさらに進化を遂げたということです。
他にも離職率が高くなっていた勤続4年目から、5年目の看護師を対象にした研修制度が設けられており、こうした離職率が高い層への仕事に対するモチベーションの向上を目指した取り組みによって、以前は14% だった看護師の離職率が去年は7%台にまで改善。
また、病院内で「表彰制度」を設け、職員を表彰するなどさまざまな取り組みを実践されています。
組織改革からAIまで、医療現場の「改革」に取り組む横須賀共済病院。
長堀院長は「横須賀共済病院を理想的なAIホスピタルにしていきたい」と今後のビジョンをお話してくださいました。今後、人手不足や高齢化社会など日本の社会が抱える課題の中でこのままでは、「6人に1人が介護を含む医療従事者になっていかないと回らない」ことが予想されている中で、病院は「労働集約産業」という固定概念から脱し、「ヒトからヒトへのタスクシフト」だけではなく「ヒトからAIへのタスクシフト」を実践していくことで、これからの「未来の社会」に向けた医療現場の在り方を横須賀共済病院が示していってくるのかもしれません。
4日間に渡ってご紹介した「横須賀共済病院」の働き方と取り組みから番組が導き出した「WORK SHIFT」のヒントは『奮闘型組織から活性型組織へ』でした。
AIによるワークシフトに取り組む横須賀共済病院ですが、実証実験の段階の現在は多少の不便もあり、現場の医師や看護師に「負担をかけている側面もある」というお話がありました。ただこの「不便」も、直近の未来を見据えた業務改革のための「奮闘」。
がむしゃらに働く!という時代ではなくなっている現代ですが、時には、「奮闘」も必要なのかもしれません。一枚岩になって取り組んだ「奮闘」の先に、未来の社会を支える「活性化する組織」が生まれるのかもしれません。