従業員の生の声に耳を傾けることが、働き方改革への第一歩

2019.04.12 00:00
J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で様々な企業が取り組んでいる「働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。1日のスタートに「新しい働き方」のヒントをシェアしています。

3月18日~3月21日の放送では、一人ひとりがイキイキと働くための職場の取り組みに光をあてるプロジェクト「第5回GOOD ACTION アワード」を受賞した、「株式会社はるやまホールディングス」が取り組む働きかた改革をご紹介しました。

「株式会社はるやまホールディングス」は、岡山市に本社を置くアパレル関連企業。「はるやま」など、全国に530店舗を展開しています。現在、さまざまな働き方改革に取り組んでいますが、きっかけは、2014年から始めた「退職者ヒアリング」でした。管理本部・執行役員の竹内愛二朗さんによると・・・退職届には「一身上の都合」と書いてあるのが普通ですが、面談をしてみると、実際には、「こういうところがイヤだった」とか「新しく興味が沸いた職につきたい」とか、いろいろな意見があることに気づきました。
そこで、「せっかくいろいろな意見があるのならば、データ化して確認してみよう。もしかしたら、辞めなくてもすむ人がいるのではないか?」と思ったのがきっかけだったとか。この「退職者ヒアリング」では、「ぶっちゃけて言ってください」と率直な意見を聞くことにつとめ、面談者の聞いた感触も記入するようにしたそうです。中にはかなりネガティブなことも出てきて、そこが、「制度改革をしよう」という始まりになりました。
実際、「この件は勘違いでは?」というようなこともあり、直接話してみて退職を思いとどまった人がいたり、「営業をしたい」ということで部署異動した人がいたり。「いろんな職にチャレンジしてみたい」「地元に戻る」「結婚していて親の介護がある」・・・という人には、辞めなくてすむような別の働き方を提案しているとのことです。
2日目には、2017年4月に導入した「No残業手当」についてうかがいました。
当初、1ケ月平均「15時間」だった残業時間・・・いろいろな業務改革を行った結果「11.8時間」まで落ちましたが、これ以降、落ちなくなっていたそうです。たとえば、お客様が閉店間際に来られたら、帰るわけにはいいきません。「これは仕方ない」という社内の声もあったものの、「仕方ないで済ませてはいけない!」ということで、「皆が残業をしない風土になれば変わるのでは?」と、<意識改革>をしようと導入したのが「No残業手当」でした。面白いのは、この「No残業手当」導入にあたっては、かなり強引に踏み切ったということ。「No残業手当」を導入します・・・と1月に宣言しただけで、具体的な説明がないまま4月に導入。「どうしたらいいのかわからない」というマイナスの意見が当然多かったのですが、「みんなに自分で考えてもらおうと思っていた」と竹内さん。
たとえば、接客は長ければ良いわけではない・・・など、実際にみんながいろいろ試行錯誤する中から、「残業が減れば手当てがもらえる・・・」という風にだんだん意識が変わってきたそうです。結果、残業時間は「10.2」時間に!「長く働けば売り上げがあがる」と思っていたのに、逆に、いままでより短い時間で売り上げアップという結果が1ケ月目に出て、社員のみなさんもビックリだったようです。
3日目は、「退職者ヒアリング」をきっかけに生まれた、さまざまな働き方改革についてさらにうかがいました。
その中のひとつが、「希望して職種を選ぶことができる」という「社内公募制度」。たとえば、ずっと販売をしていて腰が悪くなったという方の中には、事務職になりたい、作る側になってみたい・・・という方もいて、「社員に新しい充実感を覚えてほしい」と作ったのがこの制度です。また、同時に導入したのは・・・従業員はふつう上司や配属先を選べませんが、選べるようになったらもっとモチベーションがあがるのでは?と考えて導入した「キャリアチャンス制度」。「2年間実績を出した社員(40~50名)は自分の配属店舗を選べる」というもので、いろいろな希望が出る中で毎年5名ぐらいが実際に異動しているとのこと。そして、この「社内公募制度」「キャリアチャンス制度」、ともに画期的なのは、両方とも上司をとおさず人事に直接申請できること。もし応募して不採用になっても誰にも知られません。竹内さんによれば、「指示や命令は上司からなされるべき。ただ、直属の上司だからこそ言えないことがある。それを部長・役員・社長にまで直接言うことは問題ない。いままで問題は発生していない」とのこと。かなり風通しの良い組織のようです。
最終日もまずは、もうひとつの重要な改革についてうかがいました。それは「総合職の地方限定コース」です。
会社員には付き物の「転勤」・・・以前は、たとえば「中国地方」「東北地方」という分類で転勤の希望を出していましたが、いまでは、「希望する4都道府県」という風に変更されています。改革にはどんな経緯があったのでしょう?「岡山の人はどこへ転勤するなら大丈夫なのか?」と調べてみると、「岡山・広島・兵庫・香川」と、「地方」という意味では「中国」「近畿」「四国」の3地方となりました。ただ、距離的には近い。「だったら本人希望の4都道府県にしたら転勤しやすくなるのでは?」と導入したところ、「東京・名古屋・大阪・福岡が良い」という人が出てきたり、「大学で住んでいた地域」「配偶者の実家があるところ」といった選び方ができる・・・ということで、「転勤はしないという一般職」 100名がこの「地方限定の総合職」になったそうです。転勤がイヤで辞めようとしていた方が、この制度ができたことで、いまでも働いているという例もあるとか。こうしたさまざまな制度の導入によって、どのような成果が現れているのでしょうか?本社勤務の1割が「社内公募」で異動して活躍しているのをはじめ、「No残業手当」によって、「残業をしない」というのがだんだん「社風」になってきていると竹内さんは語ります。さらに、5年前は15%程度だった退職率は現在、8.8%になっているとのこと。

今週のお話から導き出す「WORK SHIFTのヒント」は・・・『従業員の生の声に耳を傾けよう』。
生の意見に真摯に耳を傾けることが、独自の制度改革~働き方改革への第一歩となります。