住友商事が導入した時間と場所にとらわれない新しい働き方とは

2018.12.05 00:00
J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で様々な企業が取り組んでいる「働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。
1日のスタートに「新しい働き方」のヒントをシェアしています。

11月12日~11月15日の放送では「住友商事株式会社」の働き方をご紹介しました。

住友商事では、今年11月1日から、時間と場所にとらわれない新しい働き方として「テレワーク制度」と「スーパーフレックス制度」を、国内勤務の社員およそ5000人すべてを対象に始めました。2016年、「働き方改革」を策定する全社横断的なプロジェクトチームが発足。オフィス環境やワークスタイルを見なおしてきましたが、本社が晴海から大手町に移転したのをきっかけに、本格的にこのふたつの制度を導入したということです。人事厚生部の山田裕志さんによれば、両制度とも目的は同じ。従来の枠にとらわれないで、自律的かつ柔軟に働ける環境を整備、社員のアウトプット志向の働き方を推進することが目的で、ひとりひとり(会社も含めて)のパフォーマンスを最大化させるのがポイントということです。福利厚生的なものではなく、あくまでも働き方のひとつのオプションであり、パフォーマンスを高めるためのツール。なので、全員が対象となっています。「特定の方にだけフォーカスすると働き方は変わらない。全員で取りくむのが大事」と山田さん。そして、この11月に制度を本格的に導入するにあたって、トライアルを合計3回行っています。

1回目は2017年3月、今回のプロジェクトが発足した翌月に50人ほどでスタート。そこで問題点を洗い出したあと、2回目は東京勤務3000人のうちの3分の1の1000人が参加。そして3回目は2000人で実施。これでおおかたの課題がクリアになったことで、11月1日から導入することができました。「まずはやってみる。そして、自分で体感してみて、何が課題かを自分で考えるのが大事」と山田さんは強調します。
2日目は、制度を導入するにあたっての会社の意志について伺いました。

テレワークもスーパーフレックスも、基本的に「性善説」に立った制度設計となっているのが特徴です。「会社が社員を信じるのは当たり前のことで、今回『100%性善説に立って実施する』ということを社員に公言。プロジェクトの中でブラさない軸とした」と語ります。「『コアタイムがないと悪用する人がいるんじゃないか』という懸念はあるかもしれない。が、そこも含めて、100%社員を信じて、社員がパフォーマンスを発揮しやすいような制度にする」。ここまで言われれば、社員も、それにこたえよう!とするでしょうね。
では、コアタイムを外すことによって、具体的にどんなメリットが生まれているのでしょうか。商社では、海外の取引先との打合せが非常に多く、テレビ会議・ウェブ会議を深夜に行うケースも頻繁にあります。いままでは「在宅勤務」が認められていなかったため、例えば23時からアメリカとウェブ会議をする場合、ずっとオフィスにいなければならなかったのが、今回、テレワークとスーパーフレックスを取り入れたことによって、いったん18時で切り上げて帰宅し、プライベートな時間を過ごして23時から仕事を再開、ということが可能になりました。特に海外とのやり取りが多い方には非常に有効なツールとなっているようです。無駄にオフィスにいなければならなかった時間を、有効活用・・・。これは社員にとって、ありがたいことですよね。
3日目は、実際に制度を活用している社員の方・・・リスクマネジメント第四部の佐藤桂輔さんにお話を伺いました。

「今回導入された制度は、業務効率の向上、プライベートの充実という観点でも素晴らしい取り組み」と語る佐藤さん。「特に、ストレスフルで無駄とも思える通勤の時間が削減されたことが大きい。その時間を仕事に割り当てたり、必要な仕事だけを効率的に行って18~19時にはきっぱり切り上げて、自己研鑽の時間、自分の趣味の時間を過ごせている」そうです。これまでとは随分、時間の使い方が変わってきているのではないでしょうか。
では、佐藤さんが感じている、今後の課題はどんなことでしょう?「テレワークは、直接的なコミュニケーションは取りづらい。その代わりとなるのがITインフラだが、そういったツールで、上司と、フェイストゥフェイスと同様のコミュニケーションが取れるかどうかは疑問。また、上司の人たちがこういったツールに抵抗を示さないような会社の雰囲気作りが必要」と語ります。確かに、「フェイストゥフェイス」のコミュニケーション、大事ですよね。制度はまだ始まったばかりですから、課題はこれから解消されていくことになるはずです。
最終日。11月から両制度を本格導入することでどんな課題が見えてきたのか、人事厚生部の山田さんに伺いました。

「完全にペーパーレス化できていないことなど、課題はたくさんある」とのことですが、制度は11月1日に導入したものの、これはゴールではなくスタート。今後、現場の声をしっかりとらえて、スピード感を持ってブラッシュアップするのが大事、と語ります。「ペーパーレス化」でいうと、「紙のプロセス」が牽制機能を担っているという意味もあるので、一足飛びにはいかないそう。従業員の声もふまえて一歩ずつ進むという覚悟です。とはいえ、やはり、一歩一歩、進んでいることは実感しているようです。「トライアルをとおして社員の意識も変わってきたし、制度を入れたことで変化に加速度がついた。社員も、1年前、2年前、5年前と比べて確実に働き方は変わっている」
さらに・・・「働き方改革は終わりがなく、ゴールはない。常にいまより良い状態を目指している。逆にいうと、いまが一番良くない状態であり、明日・明後日とさらに良くなるように、いま何をするか? 個人単位でも会社としても真剣に取り組んでいる」と力強く語っていただきました。

今週のお話から導き出す「WORK SHIFTのヒント」は・・・『改革に終わりはない。まずはやってみよう』

まずはやってみる。そして、自分で考えてみる。それがとても大事なんですね。少しずつでも進んでいれば、やがて、いつのまにか意外と遠くまで来ていることに気が付くのかもしれません。