個性がつながり、アイデアもきっかけも生まれるBuranoの環境づくり

2018.09.19 00:00
J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で
様々な企業が取り組んでいる「働き方」から、これからの変化や未来を考える
「RECRUIT THE WORK SHIFT」。
1日のスタートに「新しい働き方」のヒントをシェアしています。

8月27日~8月30日の放送では、一般社団法人「Burano(ブラーノ)」の働きかたをご紹介しました。

「Burano」は、0歳から18歳までの「医療的ケア児」や「重度障がい児」たちを1日に5名預かるデイサービス事業、そして、そのお母さんたちが働けるコワーキング事業、このふたつをあわせた複合施設です。
秋山政明さんが理事、妻の未来さんが代表理事として今年4月にオープンしました。
きっかけは、2年前の5月にご夫妻の第2子が仮死状態で生まれたこと。
半年間そのまま入院し、退院したものの、喉に呼吸器をつけ、痰の吸引が必要でミルクも鼻から点滴のように垂らすという状態で、このような「医療的ケア児」を家族がみる場合、24時間ケアしないと命にかかわる、という現状に直面しました。
地元の市会議員をやっている政明さんが行政に提言しても、国としての方針が決まっていないので、市として打つ手がない・・・。
であれば、自分でやるしかない、と、思ったのが、昨年の3月でした。
ご夫婦はその後、同じような問題を抱える親御さんたちと非営利組織を立ち上げ、施設開設のための企画書を作って、日本財団(にっぽんざいだん)に提案。ついに助成が決まり、今年の4月にオープンした、ということです。
そもそも「Burano」とは、イタリアのベネチアにある島の名前。
一軒一軒がいろいろな色で彩られたカラフルな街で、この色には、漁師が霧深い夜にも安全に家に帰ってこられるように目印にしたという意味があるそうです。現在は観光名所となって世界中から人々が訪れ、いろんな人とつながることができます。
秋山さん夫妻は、「ひとりひとり全く違う障がいをもつ子供たちは、それぞれが個性的。その個性が集まるこの場所に、いろんな人が来てほしい。そこでいろんな人がつながってほしい」という思いからこの名前を付けたということです。
ホームページやパンフレットを見ても、とてもカラフル。施設自体も、一軒家をリノベーションしたとても居心地の良い空間となっているのが印象的です。
2日目はまず、実際「Burano」ではどのような態勢でお子さんたちを預かっているのか?ということからうかがいました。
お子さんたちを預かるのは9時半~午後5時までで、その時間帯に、小児病院の経験がある看護師がふたり、保育士(介護士の免許も持つ)、ほかに非常勤の看護師ふたり、非常勤の保育士がひとり、特別支援学校で働いていた教員がひとり、障がい者施設で働いていた社会福祉主事の資格を持つ人がひとり、そこに秋山ご夫妻、という計10名が働いています。
この中で、社会福祉主事の方のお子さんには重度の障がいがあるため、子供が生まれて10年仕事をしていなかったそうです。が、現在は、一階で子供を預けながら久しぶりに仕事復帰。実際、自分の子供が目の前にいて、ほかの子も見られるという働き方を喜んでいるとか。
子供が生まれて働かなくなって以来、髪を切るのが2年に1回になるなど、自分にかける投資ができなくなっていたところ、「ブラーノ」で働き始めて、最初の給料で髪を切りに行ったそう。
「子供を預けて安心。さらに、稼ぐことで自分への投資も躊躇せずできるようになって嬉しい」と語っています。
実は、全国でもこのような施設は少なく、「医療的ケア児」が1万7千人ほどいる中で、約300施設しかない状況ということです。
オープンする場合、経済的な面ももちろんですが、看護師、保育士、児童発達管理責任者、さらに理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)といったスタッフが揃わなければならないという条件があるため、なかなか参入できないというのが現実のようです。
3日目は、代表理事をつとめる妻の未来(みく)さんにうかがいました。
2階建ての一軒家をリノベーションし、居心地の良い空間となっている「Burano」では、1階が「重度障がい児預かりサービス」のための「titta(チッタ)」、そして2階が、お母さんたちが働くコワーキング・スペース「kikka(キッカ)」と名付けられています。
この「titta」と「kikka」、どういう意味なんでしょうか?
実は、「titta」はスウェーデンの幼児語で「見て見て!」という意味。
子供が、なにかを発見したり、なにかができたときに身近な大人にいう言葉だそう。
そして、「kikka」は日本語の「きっかけ」から。
子供の世話と病院と学校ぐらいしか居場所がなかったお母さんたちのつながりを、新しく横に広げていくための、さらに社会とつながっていくための「きっかけ」になったらいいな、という願いを込めているそうです。
この「kikka」では、1階に子供を預けているおかあさん以外にも、地域のお母さん方にも来ていただこう! そして一緒に働こう!と仲間を募っています。
障がいが子供にあってもなくても、働くことはたいへんです。
子供が小さいと、風邪をひいたり、ケガをして早退、というようなことは往々にしてあります。子供が小さいころの働きづらさは一緒だから、みんなで働いていけたら・・・と、いろいろ試行錯誤しているとか。まだまだ試運転状態ですが、現在は8人ぐらいが登録。徐々に仕事量を増やしていけたら・・・という気持ちでやっているということです。
最終日、まずは政明さんに、障がいのある兄弟を持ついわゆる「きょうだい児」についてうかがいました。
兄弟に障がいがあると、健常児と比べて十分な外遊びをしていなかったり、兄弟に付き添って病院に行くため急にお母さんがいなくなったりと、寂しい思いをする子供が多いそうです。
このため、思春期になるといろんな問題が発生する可能性があります。
たとえば、両親が亡くなったら障がいのある兄を自分が面倒を見なくてはならないというプレッシャーを感じたり、兄に遺伝的障がいがある場合、自分が結婚するとき破談になったりと、根深い問題もあります。
このように、兄弟に障害があることがマイナスに働きやすい社会ですが、「Burano」には、だからこそ、兄弟児の居場所を作っているとのこと。
兄弟に障がいがあったからこそ「Burano」に遊びに来ることができて、「Burano」に遊びに来たからこそ友達が増えて、いろんな人と出会って成長できた、と思えるように、「兄弟に障がいがあったことがプラスに働く場所を作らなければいけない」と政明さんは訴えます。
一方、お母さんたちのワークコミュニティ「kikka」では、これから、どんな展開を考えているのでしょうか?
いろんなお母さんが集まってくると多様な趣味があって、面白いアイディアが生まれます。
たとえば、裁縫が得意なお母さんが中心となって子供たちの衣類や医療的グッズを作る場合・・・。
気管切開をした子が首に入れているカニューレを止めるカニューレ・バンドは、既製品ではカワイイものがなかなかないのでそれを一緒に作る。このように、特殊な知識・技術を自分の子供のためだけでなく、共有することでそれを生かすことができます。
「アイディアを持ち寄って新しい価値を生み出すことができそうだし、面白そう!」と未来さんは語ってくれました。
そんなお話から導き出す「WORK SHIFTのヒント」は…
『世界はもっとカラフルにできる。』

これは、「Burano」のホームぺージのトップに出てくる言葉です。
ひとりひとり全く違う障がいをもつ子供たちは、それぞれが個性的。その個性が集まるこの場所に、いろんな人が来てほしい。そこでいろんな人がつながってほしい、という思いから名付けたという「Burano」・・・。
考え方・やり方次第で、世界はもっとカラフルにできる。
そうすれば、障がいのある・なしにかかわらず、みんながもっと幸せになれる・・・ということではないでしょうか。