スマイルズ&スープストックトーキョーが考える“働き方改革”ではない“働き方開拓”とは?

2018.07.25 00:00
J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で様々な企業が取り組んでいる「働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。1日のスタートに「新しい働き方」のヒントをシェアしています。

7月2日から5日の放送では、食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」、ネクタイ専門店「giraffe」など、新しいコンセプトのブランドをつくり続ける株式会社スマイルズ・株式会社スープストックトーキョーの働き方をシェアしました。

飲食だけにとどまらず、ファッション、リサイクルショップ、ホテルなど、多くの業態で画期的なビジネス展開を続けているスマイルズですが、昨年4月より、「業務外業務」というサービスをスタートしました。このサービスについて、スマイルズ 代表取締役社長 遠山正道さんに伺いました。
「元々は3年前のエイプリルフールで、私が1日社員をやりますと発表したところ、300件くらいの問い合わせがきました。これは面白いということで、『業務外業務』という名前で商品化しようと思ったのがきっかけだったんです」

スマイルズの「業務外業務」のページをみると、大きくこう書かれています。「やりたかったけど 誰からも頼まれなかったことを 仕事にする」。
ここでは、スマイルズの社内の人だけでなく、社外のアーティストや建築家、雑誌の編集長も登録して、それぞれのやりたかったことを「商品」として売っています。ちなみに遠山社長自身の業務外業務は、「手品」「洋服のコーディネート」。そして「ナレーション」だそうです。遠山さんの声、素敵なんです。

「いま、人生100年時代といわれています。その流れの中、単に企業に依存するのではなく一人一人が自分で生きていく力を養っていかなくてはいけないと思っています。だからと言って、いきなり会社を辞めるというのもリスクがあるので、この『業務外業務』を使い、楽しみながら自分を見直し、さらに自分の価値はどこにあるのか、お金を貰う価値提供ができるのかを見直すいい機会になればと思っています。いわば、試し打ちみたいなものですね。そもそも、スマイルズの基本的な考え方は『自分ごと』なんです。つまり、ビジネスも『マーケティング』によるものではなく、自分たちがやりたいと思うことからスタートすることにしています。例えば、銀座にある森岡書店。ここは5坪で1冊だけの本を売る書店ですが、海外から来た観光客にも認知度が高いんです。そして香川県の豊島で1日1組限定でお客さんを迎えている「檸檬ホテル」も、11月まで予約がいっぱいというほどの人気です。どちらも個人のサイズで事業を始め、リスクが少ないからユニークで面白いことができるし、価値が遠くまで届く。大事なことですが、そのどちらも3期目で僅かながらでも利益を出しているんです」(遠山さん)

元々「スープストックトーキョー」自体、遠山社長が在籍していた三菱商事の社内ベンチャー事業からスタートしています。今ではグループ全体で100億を越える売上を記録するまでに成長したその理由が、「他人ごと」ではない、「自分ごと」という言葉に込められているのかもしれませんね。
さて、6月に国会で働き方改革法案が可決・成立しました。しかし現状では、「働き方改革」という言葉だけが、一人歩きしているような感じも受けます。言葉は知っていても、具体的にどう「改革」していいかわからない・・・、そんな中、「働き方改革」ではなく、「働き方開拓」という言葉を使っているのが、スマイルズから分社化した、「株式会社スープストックトーキョー」です。
2日目は、この「働き方開拓」という言葉についてスープストックトーキョー 取締役兼人材開発部部長の江澤身和さんに伺いました。

「『改革』という言葉には、誰かが決めてトップダウンで実行していくイメージがあります。そうではなく、みんなで作り上げていく『開拓』という言葉に、会社としてのメッセージを強く込めています。そもそも働き方は人事部や偉い人が考えるのではなく、みんなが考えるもの。他人ごとにならないよう、一人一人が考えて欲しいということも『開拓』という言葉に込めています」

さて、この「働き方開拓」の一環として、今年4月よりスープストックトーキョーでは新たなチャレンジをスタートしました。その名も「ピボットワーク」です。
「これ、簡単に言いますと、複業の解禁です。バスケットボールのピボットターンのように、本業であるスープストックトーキョーを軸足にして複業を体験できる制度です。社外の複業でもいいし、グループ内のスマイルズの業務でもいい。そのためにスープストックトーキョーの他の部署を見学できる『社内仕事旅行』という制度も作りました。社員みんながいろんなことにチャレンジできるような会社にしていきたいと思っています」
(江澤さん)
3日目は、実際に「複業」をしている社員の方にお話を伺いました。
スマイルズの広報を担当している中神美佳さんは、同時に、出身地である北海道大樹町で地域おこしをする会社を作って働いています。もともとスマイルズの面接を受けた時にはまだ複業は解禁されていませんでしたが、入社する時には、複業を希望する社員が増えていたので、会社としても正式に複業ができる制度を作ってしまったそうです。まさに「自分ごと」で変えていく「働き方開拓」ですよね。ちなみに大樹町と言いますと、最近もニュースで伝えられましたが、JAXAや民間ロケットベンチャーなど、宇宙にまつわる様々な実験がおこなわれています。中神さんは、そのPRをはじめ、2016年から町内で初めての夏フェスも立ち上げています。現在、中神さんの仕事の割合は9対1。9が東京のスマイルズで、1が北海道大樹町、ということだそうですが、ご自身の将来についても伺って見ました。

「自己実現のためにいくつも本業を持っている感覚です。私は北海道に家族がいるので1ヶ月に1、2回帰っていますが、将来的には場所にとらわれないリモートワークもしようと思っています。リモートワークができれば、例えばお子さんがいるママさんや、介護が必要な家族がいる方にとってもいい働き方の提案になると思います。そのように自分が理想とする働き方や生き方にチャレンジしていいんだと思うひとがどんどん増えていけばいいと考えています。100人100通りの働き方があっていいなと思っています」(中神さん)
最終日の放送では、お子さんを持つママさん社員の方の働き方を伺いました。スープストックトーキョー ルミネ立川店でアシスタントマネージャーをしている武慶子さん、4歳と6歳の息子さんがいるママさんです。
「私は月に135時間の時短制度を利用しています。さらに今年から1ヶ月に9回休みをもらえるようになったので、充実した生活を送ることができています。そのおかげで、PTAや地区のパトロールを含め、子供の学校行事や習い事に自分も参加できているので、自分や家族が安心するまちを作っていこうという気持ちにもなりました。仕事と自分の生活という、二つの居場所を作ることができたのは、生きていく安心感にも繋がりますし、両方の活動をすることで自分自身も成長できたと思っています」
さて、時短勤務でいろんな働き方を実践している方は、スマイルズにはまだまだいらっしゃいます。スマイルズ 遠山正道社長に伺ってみました。

「スープストックトーキョーの社員に、社労士の資格を取得するために時短制度を利用して学校に行って勉強している人がいます。また、制度を利用しながらカードゲームを作るために勉強している人もいます。このように自分の持ち味を生かした、働き方を考えてほしいと思っています。いきなり会社を辞めて他業種に飛び込むのではなく、本業を持ちながら新たな選択肢や可能性を試しながら発見していくのが大切。そうやってひとりひとりが自分の可能性を広げていくうちに、会社全体の視野も広がっていくし、会社自身の多様性が広がっていくことになると思います」

そして、今週のお話から導き出した「WORK SHIFT」のヒントは・・・・「一つにこだわらない、人生100年時代の『働き方』 」
会社員を続けていても、いろんな局面で行き詰まっていくことがあります。そんな時、すぐに会社を辞めるのではなく、自分に合う働き方をまず探してみる。まさに働き方を「他人ごと」ではなく、「自分ごと」として考えていくことが大切なんですね。
ちなみにスマイルズが仕事の上で大切にしている言葉は「世の中の体温を上げる」。自分に合う働き方をひとりひとりが実践することで、その人自身が活性化していくと、自然と世の中の体温も上がってくるのかもしれません。