好きな場所で自由に。働き方のキーワードは「ポリバレント」

2018.06.13 00:00
J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で様々な企業が取り組んでいる「働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。1日のスタートに「新しい働き方」のヒントをシェアしています。
数々の働き方アワードに輝くダンクソフト、働き方のキーワードは「ポリバレント」
5月21日・月曜日から24日・木曜日の放送では、インターネットサービス、AI、IOT、クラウドなどICTサービス全般を手掛ける「ダンクソフト」の働き方の考えをシェアしました。

東京都が認める“東京ライフ・ワーク・バランス認定企業”でもあり、総務省のテレワーク先駆者百選など 働き方にまつわる数多くの受賞歴を誇るダンクソフト。創業は1983年とIT系では老舗のダンクソフトが、働き方を考えるきっかけは、伊豆高原に遊びを教えるNPOとオフィスを作ったことだった、、、そう振り返るのは株式会社ダンクソフト 代表取締役 星野晃一郎さん。
「その伊豆高原が、2011年3月の東日本大震災で停電になったり、通信速度が遅かったことがわかりました。その時たまたま縁があった徳島県神山町でサテライトオフィスの実証実験をしていたところ、ITが限界集落を再生しようとしていると、メディアに紹介されるようになりました。今では、それを含めて“働き方改革”の先駆けになったのではと思っています」

そこからスタートし、ダンクソフトは東京のほか、宇都宮 徳島など国内に8のサテライトオフィスを構えています。80年代からノートパソコンを持って地方や海外でパソコン通信を使って、遠隔地から東京の本社を経営していた経験から、通信を使ったテレワークにも違和感がなかったという星野さんに、遠隔地で働く社員とのコミュニケーションについて聞いてみました。
「今はSkype for Businessというマイクロソフトのクラウド製品を常時接続していて、朝そこに参加することを“出社”と呼んでいます。ですからダンクソフトのオフィスはSkypeの中にあるとも言えます。離れていてもコミュニケーションが取りやすい環境ですね」

さて、働き方改革を推し進める星野社長に、あえてダンクソフトが抱える問題点についても伺ってみました。
「ITが発達してきても、エンジニアが全てをまかなえるわけではない。やはり学びの時間が必要だと思います。ブラックになりがちなIT業界ですが、働く時間を短くして各自学びの時間を増やし、そこから得た能力を使うことで、より付加価値の高い仕事ができると期待しています」
国内に8箇所のサテライトオフィスを構えるダンクソフトですが、2日目の放送では、その中心となっている徳島県にフォーカスしました。
実は徳島県は、テレビの地上デジタル化に合わせて、全県で光ファイバー網が完備されました。これのおかげで、地域によっては東京の10倍以上の高速インターネット環境が整ったので、IT業界の注目が集まっていますが、そのきっかけが、ダンクソフトのサテライトオフィス設立だったのです。徳島市内のオフィスで働く開発チームマネージャーの竹内祐介さんにSkypeを使ってお話を伺いました。

「徳島県ではサテライトオフィスの誘致を積極的に進めていて、すでに50社ほど徳島県にオフィスを構えています。もちろん全て企業がもれなくテレワーク。中には個人でもテレワークしている人もいます。まさに徳島県はテレワーク先進県なので、積極的に発信をしていきたいと思います」

もともと徳島県の別の会社で働いていた竹内さんですが、東京転勤の話が出たのをきっかけに、徳島で仕事を続けたいということで、ダンクソフトに転職。家族と過ごすプライベートな時間も、テレワークで実現。さらに同じテレワークをしている他の会社とも繋がりが生まれるという効果もあるそうです。徳島オフィスもとても働きやすい環境になっているんですが、ただ一つ、IT系のイベントが開かれるのは東京と大阪に集中しているので、なかなか参加しづらいのがデメリット、だとおっしゃっていました。

さて、徳島でテレワークをしている竹内さんですが、最近では、地域との関わりも増えてきたそうです。

「私は現在、徳島県阿南市にある阿南工業高等専門学校で授業を持っています。教えることは私自身にとっても学ぶことが多いのですが実際に企業で働いている人間の知見が学生のうちから得られるということもメリットがあると思います」

ITのテレワーカーが地元の学校でプログラミングを教える……。2020年のプログラミング必修化を前にとてもいい試みですよね。さらにITを学んだ子供達が、地元で就職できるという、自治体にもメリットがある働き方が実現するかもしれません。
徳島市内のオフィスで働いている竹内さんに続いて3日目は徳島県神山町にある神山スマートオフィスを紹介しました。
神山町は徳島市内から車で40分ほどのところにある、人口およそ6,000人の、いわゆる限界集落と呼ばれる町です。スダチの生産量日本一を誇るものの、人口の高齢化率は46%に達する過疎地ですが、ここ神山に今、IT業界が注目しています。そのきっかけとなったのが、ダンクソフトのサテライトオフィスでした。

「ここには周りに誰もいないので、朝から晩までずっと集中して仕事ができます。街中のオフィスじゃ考えられない。一人でいるのが好きなのでさみしくはなかったですね」
Skype越しにこう話すのはダンクソフト神山スマートオフィスで、働いている本橋大輔さん。

神山町には、今ではIT企業が合わせて16社、本社やサテライトオフィスを構えています。徳島市内よりも人口が少ないので、ネットを使うにも混み合うことがないので常に快適だそうです。そんな神山町で働く本橋さんですが、最近ハマっているのが、「ドローン」なんだそうです。

「ドローンは住宅密集地では飛ばすことができませんが、神山町には住宅密集地が無いので自由に飛ばせることができます。そのうちに、地元の小学校からドローンの授業をしてくれというお願いがありました。いまではドローンを教えることをきっかけにして科学技術、テクノロジーについても知ってもらおうという活動もしています」
ドローンの他にも、本橋さんは、3Dプリンターやレーザーカッターを使用したワークショップなどで、数々の新規事業開発を行っています。そんな本橋さんに、将来の夢についても聞いてみました。

「神山町のような場所は日本中にたくさんあって、同じような課題を抱えている場所もたくさんあります。例えばそのような場所を1ヶ月ごと巡って仕事をしていくのはどうでしょうか。そういう移動しながら働く人が増えて行ったら、そこから新しい発想が出てくるのではと思います。そのために神山町のように受け入れてくれる自治体が日本中、世界中に増えていって欲しいですね」
ITが限界集落の神山町を変えたように、働き方次第では日本中の過疎地域を変えていけるのではないかという考え、面白いです!
さて、最終日の放送で、ダンクソフト社長の星野晃一郎さんに、ダンクソフトの働き方のキーワードを伺ったところ、出てきた言葉は「ポリバレント」。
サッカー日本代表の西野監督が強調したことでも知られる「ポリバレント」という言葉、“polyvalent” マルチタレント・多機能という意味を持ちます。

「最近は大谷翔平ですよね。ピッチャーもバッターもできる。そんなマルチタレントがプロスポーツで求められるようになってます。いろんなポジションができるとチームの編成を変えることができるので監督としてはやりやすいんですよね。これは会社組織でも言えます。何と言っても、社員がお互いに助け合うことができるので休みが取りやすくなります。今後は本当にプロフェッショナルでバリバリやるより人よりも、少しずついろんなことができる人が求められるようになっていくとおもいます。専門職だけやっていても、ある日突然AIが仕事を奪っていく可能性もあるので、できるだけ分散していた方がいいんです」

そんなポリバレントを体現しているのが、中香織さん。Skypeでお話を伺いました。

「私の肩書きはダイバーシティー推進マネージャーですが、社内の総務人事経理全般をやっています。私はオフィスには週1回出社。社内の経理関係のデータはクラウドにあるのでどこでもチェックできます。ただ、判子が必要な書類や請求書の確認などために週1の出社をしているんです」

さて、最後に、ダンクソフト星野社長が考える「未来のオフィス」について伺いました。

「今すぐできるかどうかは別として、数十年後にはオフィスが無くなると思っています。自分が働きやすい場所で働く。仕事はネットワークで結ばれて、社員だけではなくパートナーやお客さんも含めるような、そんなモデルを描いています。同じ場所で働くのは、今のようなクリエイティビティが求められる時代には必要ないのでしょう」

4日間にわたってダンクソフトの「働き方」を紹介してきましたが、今週のお話から導き出す「WORK SHIFT」のヒントは 『ポリバレントな働き方が、未来のオフィスを作って行く』
東京にこだわらない、スペシャリストにこだわらない、さらに会社の枠にこだわらない…。そんなポリバレントな考えが「働き方改革」そして「地方創生」にも繋がっていくのかもしれません。