たどり着いたのは、富士山だった。成分を届けるために、追い求めた針の形。

2026.11.05 13:00
11月12日は「マイクロニードル化粧品の日」。世界初※1の製品化を実現した「富士山ニードル」の設計技術
この写真は顕微鏡のミクロの世界。富士山のように、鋭く尖った先端となだらかに広がる裾野、コスメディ製薬が開発した「富士山ニードル」です。


私たちが創業時から追求しているのが、長さわずか数百ミクロンの針で薬剤を皮膚から届ける「マイクロニードル」。注射に代わる薬剤投与技術として研究を重ねるなかで、私たちはこの技術を美容領域に生かす道を見いだしました。


しかし、マイクロニードルを化粧品として製品化するには「わずか0.02mmの角質層に針を入れて、留める」という、美容領域ならではの課題をクリアする針の設計が必要でした。試行錯誤の末に生まれたのが、富士山のような形の針。この独自の設計技術により、2008年11月12日に世界初※1のマイクロニードル化粧品が誕生したのです。


2026年9月、
でもクローズアップされた日本発の技術「富士山ニードル」についてひもときます。
「溶ける針」の開発から、美容領域への挑戦へ
コスメディ製薬のマイクロニードル開発は、注射に伴う怖さや痛みのない「やさしい医療」の実現をめざす研究から始まりました。


2006年頃、米国などで研究が進められていたマイクロニードルは、金属やシリコンなどを材料とするもの。また皮膚の深部に入れるため、鋭いピラミッド状の形が主流でした。微細な針とはいえ、針の破損や皮膚内の残存など、安全性への懸念がありました。


そこで私たちが着目したのが、皮膚にも存在する成分「ヒアルロン酸」です。ヒアルロン酸の水溶液を微細な針に成形すれば、皮膚に刺した後、針そのものが皮膚内の水分で溶けていきます。金属やシリコンなどの針とは異なり、皮膚内の水分で「溶ける針」をつくる。この「針そのものを溶ける素材で成形する」という発想の転換から、コスメディ製薬は「溶解型マイクロニードル」の開発を進め、完成させました。
※医療・医薬品用溶解型マイクロニードル(顕微鏡写真)針長:800μm


しかし、溶解型マイクロニードルを医薬品として実用化するには、承認までに約10年以上という長い時間を要します。研究成果を早く実用化して、社会に届けたい。私たちは溶解型マイクロニードルを医薬品としての開発も進めながら、美容領域での応用に挑むことを決断します。


化粧品への応用を検討する際に着目したのは、溶解型マイクロニードルの素材であるヒアルロン酸でした。ヒアルロン酸は保湿成分として化粧品にも広く使われています。一方、分子量の大きなヒアルロン酸は、肌に塗るだけでは角質層に浸透しにくいという特性があります。そのため、美容クリニックでは皮内注射によってヒアルロン酸を送達していました。


すでに開発した溶解型マイクロニードルなら、ヒアルロン酸を針そのものとして角質層へ届けられる。医療のために生まれた「溶ける針」に、美容領域での新たな役割が見えてきました。
化粧品に求められた、新たな針の設計
医薬品をめざして開発した溶解型マイクロニードルは、化粧品にそのまま応用できませんでした。大きな違いは「成分を届ける深さ」にありました。
※当社研究開発資料より(イメージ)


医薬品の薬剤投与を目的とするマイクロニードルは、薬剤を表皮や真皮へ届けることを想定して研究されていました。一方、化粧品で美容成分を届ける範囲は、皮膚の最表層である角質層まで。化粧品にはこの角質層に適した針の設計が求められました。


そこで課題となったのが「針の長さと刺さりやすさの両立」です。
皮膚に刺さりやすく、しかも深く刺さりすぎない。
この相反する条件を満たすには、針の長さだけでなく、先端から根元までの形状、そして強度を含めた新しいマイクロニードルの設計が必要でした。
角質層へ届けるための、長さと形
角質層をターゲットとして美容成分を届けるには、針を短くするだけでは十分ではありません。柔らかく弾力のある皮膚に確実に刺さり、必要以上に深く入り込まないこと。そのために、針の長さと形状の両面から設計を追求しました。
長さ|角質層に届ける、200μm
※当社研究開発資料より(イメージ)


私たちはさまざまな長さの針で穿刺テストを繰り返し「角質層に届きながら、それより深い層には到達しない長さ」を検討しました。皮膚には弾力があり、針を押し当てると皮膚がたわんで変形します。つまり、針そのものの長さと、実際に皮膚に刺入する深さは同じではないのです。その結果、たどり着いた針の長さが「200μm」。わずか0.2mm、肉眼ではほぼ見えない微細な針です。
形状|鋭い先端と、なだらかに広がる裾野
※当社研究開発資料より(イメージ)


針は先端を細くすれば皮膚に刺さりやすくなる一方、折れやすくなります。反対に、強度を優先して太くすれば刺さりにくくなる。角質層に適した長さの針でも、確実に刺さるためには形状の工夫が欠かせませんでした。


そこで、先端の鋭さと根元の強度を両立するために開発したのが、先端から根元へとなだらかに広がる「コニーデ型」の形状です。
鋭い先端は皮膚に刺さりやすく、裾野のように広がる土台は微細な針を支えます。さらに、根元へ向かう大きなカーブが過剰な刺入を防ぎ、針を角質層に留めます。
刺さりやすさと強度を両立しながら、必要以上に深く刺さらない。その機能を追い求めた針は、まるで富士山のような形になりました。
顕微鏡で見たその姿が富士山に似ていたことから、私たちはこの独自の針を「富士山ニードル」と名付けました。富士山を模して設計したのではなく、必要な機能を突き詰めた結果、生まれた形です。
※美容用溶解型マイクロニードル「富士山ニードル」(顕微鏡写真)針長:200μm


富士山ニードルの開発で培われたのは、単に微細な針をつくる技術ではありません。届ける成分や目的に応じて、針の形状、長さ、密度を組み合わせ、最適なマイクロニードルを設計する技術です。富士山ニードルには長さや形状のさまざまなバリエーションが生まれ、設計は今も進化を続けています。
日本の富士山、世界が認めた針のデザイン
2023年、富士山ニードルは国際的なデザイン賞「iFデザインアワード」を受賞しました。iFデザインアワードは、1953年に始まったドイツ発の国際的なデザイン賞。外観の美しさだけでなく、機能性や革新性なども評価の対象となります。
※「iFデザインアワード2023」受賞プレート


機能を追求するなかで生まれた富士山ニードルの形状は、この国際的なデザイン賞で評価されました。美容成分を角質層へ届けるための工夫が「機能性と造形を兼ね備えたデザイン」として認められたのです。
小さな針で、社会の課題解決へ
注射に伴う痛みや恐怖を減らし、医療をもっとやさしいものにしたい。この思いから始まったマイクロニードル研究が「富士山ニードル」という設計技術の誕生により、生活者に身近な美容の領域で実を結びました。それまで美容注射でしか皮膚内に届けられなかった高分子成分を、セルフケアで安全に届ける新しい美容の選択肢が生まれたのです。


2008年11月12日、富士山ニードルは世界初※1の「マイクロニードル化粧品」として社会に届けられました。医療技術を美容に応用するという発想の転換から、これまでにない製品を生み出し、新たな市場を切り拓いた日。私たちはこの日を、イノベーションを象徴する「マイクロニードル化粧品の日」として制定しました。


コスメディ製薬にとって「富士山ニードル」は、私たちのマイクロニードル設計技術を象徴する存在。目的や適用部位、薬剤や成分に応じて、針の長さや形状を最適に設計する私たちの技術と知見は、注射に代わる「貼るワクチン」をはじめ、未来の医療のあり方を変える可能性を秘めています。


コスメディ製薬はこれからも「マイクロニードル」という小さな針の研究開発を通じて、「やさしい医療」の実現に挑み続けます。
※コスメディ製薬のマイクロニードル技術の象徴「富士山ニードル」のロゴマーク




※1:公益社団法人 日本薬剤学会発行 学会誌『薬剤学』第69巻第4号(2009年)pp.272~276「マイクロニードル製品化への道程」より

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