婦人之友社より刊行された『0円で楽しむ自然観察さんぽ』。本書は、お金をかけず、歩いて身近な生き物や植物を観察し、五感を使って楽しむためのアイデアが詰まった一冊です。
著者は、長年の自然観察経験を生かし、数多くの児童書の執筆でも知られる谷本雄治さん。「身のまわりの小さな生き物、植物との対話を楽しむ」——そんな谷本さんの観察スタイルと、本書に込められた思いをひも解きます。
半径1〜5メートルの世界が変わる!
10月初旬のある日、谷本さんと待ち合わせたのは、船橋駅近くの弁天池公園。人工池と子ども向けの遊具がある都会の小さな公園です。谷本さんは公園に踏み入れた途端にしゃがんでミミズの糞塚(ふんづか)を見つけたかと思えば、樹木を観察し、愛用のカメラで樹皮についた地衣類(藻類と共生する菌の仲間)の接写を始めました。
目の前の植物や小さな生き物に好奇心を向けると、わずか半径1〜5メートルの景色が、「小さな宇宙」へと変わります。
農業の専門紙の記者として全国各地へ取材に赴いていた谷本さんが、近所の自然を見つめ直すきっかけとなったのはコロナ禍。遠くに出かけなくても、歩き慣れた散歩道の中に、豊かな世界があることに改めて気づかされ、「0円散歩」を楽しむようになったといいます。
名古屋の埋立地で育ち、大学は生き物部へ
谷本さんは、名古屋市南部の海に近い埋立地で育ち、カブトムシもクワガタも見ることが叶わない幼少期を過ごしました。自然への興味が一気に深まったのは大学時代。生き物部で蛾(が)の研究に取り組み、山を歩くフィールドワークの経験を積みました。
作家・畑正憲さんのみずみずしい文章や、北杜夫が昆虫に向けるあたたかな眼差しに憧れを抱くなかで、大学卒業後は農業専門紙の記者を選択。取材の傍ら、農家や地域の人々が伝承してきた「草木などの自然素材を日常の道具や遊びに生かす知恵」にも深く触れていくことになります。
自然との出会いはいつも新鮮
谷本さんが観察において最も大切にしているのは、見るだけでなく「音を聞く」「触ってみる」「匂いを嗅ぐ」「食べられるものは口に入れてみる」といった、五感をフルに使うこと。この日も、公園でツバキの実を見つけ、コンクリートにこすって削り、穴を開け、唇を押し当て息を吹き込んで笛にしてくれました。
「本で読んだことを実際に自分の手で触れて確かめること。忘れてしまうことも多いので、自然との出会いはいつも新鮮です。家には植物のつるや実がたくさん置いてあります。いずれ工作をしようと思って集めている材料です」
と、キラキラした笑顔を見せてくれました。
秋はカラスウリの観察を
本書には、日常の中で試せる具体的な観察のアイデアが多数紹介されています。
その一例が、雑木林のふちや藪、フェンスにつるを伸ばす「カラスウリ」です。
本書は春・夏・秋・冬の四季で構成。四季ごとに楽しむポイントを伝えています。
カラスウリのタネはまるで「打ち出の小槌」。昔から「財布に入れるとお金が貯まる」という縁起物としての言い伝えがありました。 集めたタネをイベントでプレゼントしたエピソードが本書の中で紹介されています。豊富な知識と好奇心のかけ合わせで、こうした造作の妙を味わうのが谷本さんの自然観察です。
「特別なものやめずらしい昆虫ではなく、何でもないものが好きです。その中に自分なりの面白さや関心を見出せる探求心、好奇心をこれからも大切にしたいと考えています」
谷本流! 散歩を楽しむ8つの心得 ~はじめにより~
1 持ち歩くのは「?」と「!」
2 小さな発見、大きな満足
3 朝寝坊でもかまわずお出かけ
4 半径1メートルも「小さな宇宙」
5 5歩進んで1歩立ち止まる
6 五感だけはサボらせない
7 見つけるより、気づくを楽しむ
8 きょうの見のがし、明日の楽しみ
「近所でお金をかけずに自然観察を楽しみたい方はもちろん、子どもたちにも手に取ってもらい、写真や身近な疑問をきっかけに、世界を広げるきっかけになればうれしいです」
目の前にある自然をじーっと見ることで、ご近所散歩は100倍楽しくなります。
身近な動植物を好奇心のおもむくままに見ながら、楽しく歩くきっかけになる一冊です。
書名:0円で楽しむ自然観察さんぽ
著者:谷本雄治
価格:1,870円(税込)
サイズ:A5判
頁数:128ページ
ISBN:978-4-8292-1140-3
【書籍・取材に関するお問い合わせ】
株式会社 婦人之友社
〒171-8510 東京都豊島区西池袋2-20-16
TEL:03-3971-0104 FAX:03-3982-8958
書籍:菅 /宣伝:三宮
ホームページ: