創薬研究の成果をひらき、次の発見へ 世界の研究者とつながるオープンイノベーションプラットフォーム「opnMe」

2026.10.05 13:00
創薬研究では、一つの医薬品が患者さんに届くまでに多くの化合物(薬のタネ)が検証されますが、その大半は最終的に医薬品として実用化に至りません。しかし、これらの化合物にも、研究を通じて培われた知見や技術が蓄積されており、異なる専門性や発想と出会うことで、新たな価値を持つ可能性があります。


こうした可能性を引き出すために、2017年にベーリンガーインゲルハイムが立ち上げたのが、独自のオープンイノベーションプラットフォーム「opnMe(オープンミー)」です。創薬に必要な技術や情報を社内に閉じるのではなく、自社の研究成果やデータ、研究資源を可能な限り広く共有し、多くの研究者との連携を通じてサイエンスを前進させる。ベーリンガーインゲルハイムが大事にしているこの考えを形にしたのがopnMeです。組織の枠を越え、創薬の可能性を広げるopnMeに込めた思いと具体的な取り組み、そしてopnMeを活用した日本発のイノベーションへの期待についてご紹介します。
開発を中止した化合物に「第二のチャンス」を与える
創薬研究の過程においては、数多くの化合物の検証がなされますが、医薬品として使用できるようになるのはごくわずかであり、大半は患者さんのもとへ届くことはありません。その理由は様々ですが、その化合物自体に科学的な価値がないことを意味するわけではありません。異なる専門性を持つ研究者が、別の疾患や新たな研究アプローチから検証を行うことで、それまで発見できなかった価値や可能性を見出すことがあります。
一方で、製薬企業が創薬研究の過程で創製した化合物やその関連データは、広く提供・公開されることが少なく、一般的に社外の研究者が活用できる機会が限られています。ベーリンガーインゲルハイムはそうした壁を取り除き、新たな創薬の可能性を広げるため、開発候補品としての特性を十分に評価した約100種の化合物(2026年9月時点)について、opnMeを通じて世界中の研究者に無償提供しています。また、外部の研究者がopnMeの化合物を用いて得た研究成果は、研究者が自由に発表することができ、そこから生まれた知的財産も研究者に帰属します。このような研究の独立性を尊重した仕組みが、opnMeの大きな特徴です。


openMeについてはこちら
すでに、opnMeには60カ国から約8,400人の研究者が登録しており、化合物の提供に関しては12,000件以上もの依頼実績があります(2026年9月時点)。実際の利用者からは「信頼性の高い研究を進めるには高品質な研究材料が必要だが、その入手は必ずしも容易ではない。opnMeを活用することで、これまで入手できなかった高品質な化合物を研究に利用することができる」「アカデミアが新たな研究に取り組む際には、コストや技術面でさまざまなハードルがある。opnMeは、こうしたハードルを下げ、新しい研究に挑戦する機会を広げてくれる」といった声が寄せられています。


このように、社外の研究者が、自らの着想に基づきそれら化合物を活用することで、新たな知見や次の研究につながる発見が生まれる。これは、開発途中で役割を終えた化合物に「第二のチャンス」を与える取り組みでもあります。
「提供する」だけでは終わらない、研究者との共創を実現するオープンなプラットフォーム
opnMeの活動は、化合物の提供にとどまりません。ベーリンガーインゲルハイムが具体的な研究課題を公開し、世界の研究者からの独創的なアイデアや研究提案を募ることで、共同研究へと発展させる仕組みも備えています。


例えば、「opn2EXPERTS」では、新しい治療コンセプトや、疾患の標的に関わる基礎的な検討などについて提案を募集します。「techMATCH」では、新たなモダリティや、創薬に関する技術的課題に焦点を当てて、募集を行います。こうした仕組みによって、組織や既存のネットワークを超えて、多様な専門性を持つ研究者が創薬研究に参加することができます。
このように、opnMeが目指すのは研究資源を公開することだけではありません。研究の内容や研究の段階に応じて多彩な入り口を設けることで、アカデミアによる研究の発展を多面的に支援していることも、共創を生み出すプラットフォームとしてのopnMeの価値です。
「自前」か「外部」かを越え、opnMeを通じてサイエンスを前進させる
ベーリンガーインゲルハイムは長年にわたり、革新的な医薬品の創出には、多様な専門性や視点を結集することが不可欠であると考え、アカデミアやスタートアップ、研究機関との幅広い協働を推進してきました。オープンイノベーションは、私たちの研究開発戦略を支える重要な考え方の一つとなっています。


そのような私たちの戦略の根底には、創薬に必要なすべての知識や技術を自社だけで抱え込むのではなく、研究成果やデータ、研究資源を可能な限り広く共有し、より多くの研究者との連携を通じて新たな価値を生み出そうという考え方があります。その最たる取り組みがopnMeなのです。


2024年のAnnual World Open Innovation Conferenceにおいて、opnMeが2024 Best Practice Awardを受賞したことは、この考え方が実際の成果として評価された一例と言えます。この賞は、オープンイノベーションを実践するうえで、独創性だけでなく実際の成果や社会的インパクトを生み出した取り組みに対して贈られます。opnMeは、アカデミアと製薬業界をつなぎ、創薬研究の新たな可能性を切り拓くオープンイノベーションの実践例として高く評価されたのです。
日本のサイエンスを世界の患者さんへ
日本は、長年にわたり世界トップレベルの基礎研究を生み出してきました。ライフサイエンスや医学の分野においても独創的な研究成果が数多く創出されており、世界の創薬研究を前進させる重要な役割を果たしています。ベーリンガーインゲルハイムは、日本のアカデミアが有するこのような高いレベルの基礎研究の成果を、グローバルなイノベーションの重要な源泉の一つと捉えています。


「opnMeの活用により生まれた日本発の画期的な発見を、世界中の患者さんにとっての新たな価値へと育てていきたい」
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
神戸医薬研究所 R&Dアライアンス部 部長 前田朋子


これまで、非常に多くの日本の研究者がopnMeを活用くださっています。たとえば、化合物は439件の依頼をいただいており、opn2EXPERTSではこれまでに35件の共同研究の提案をいただいています。日本ベーリンガーインゲルハイムでオープンイノベーションを担当する前田さんは、「日本の研究者の皆さんによって、化合物の新たな可能性が見いだされれば、画期的な治療法の創出につながり、患者さんに新たな価値を提供することができます。opnMeを通じ、研究者の皆さんと一緒に日本の創薬力のさらなる向上に貢献していきたいと思います」と話します。


日本で生まれた新たな発見や着想を、創薬研究へと発展させ、患者さんに新たな治療法としてお届けする。その可能性を広げるため、ベーリンガーインゲルハイムはこれからも日本の研究者の方々との共創を推進していきます。

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