日本のサイエンスと人材を世界につなぐ、神戸医薬研究所が支え続けるイノベーション創出

2026.09.29 13:00
革新的な医薬品は、ひとつの発見だけで生まれるものではありません。優れたサイエンス、人材、そしてそれらを世界へつなぐ研究開発ネットワークが結びつくことで初めて、患者さんに新たな価値を届けることができます。


外資系製薬企業としては珍しく、日本に研究所を構え続けるベーリンガーインゲルハイム。神戸医薬研究所(KPRI)は、ベーリンガーインゲルハイムの研究開発ネットワークの一翼を担い、アジアで唯一医療用医薬品の実験研究施設を有する拠点です。


なぜKPRIはグローバルな研究開発ネットワークの中で重要な拠点であり続けているのか 。そして、神戸からどのように世界のイノベーション創出を支えているのか。その原動力や未来へのビジョンについて、研究所長の和田耕一さんのインタビューを交えてご紹介します。
日本のための研究所から、世界の研究開発拠点へ
「激しく変化する環境の中で、世界中の患者さんに貢献できる組織へと進化を続けてきたこと。それこそが、現在のKPRIを支える強み」
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
執行役員 神戸医薬研究所長 和田耕一


現在、ベーリンガーインゲルハイムは、世界各地の研究開発拠点をつなぐグローバル研究開発ネットワークを構築し、それぞれの専門分野や機能を生かしながら連携して医薬品開発を進めています。KPRIはその一員として重要な役割を担っています。しかし、その役割は最初から存在していたわけではありません。かつては、海外で創製された新薬を日本の患者さんへ届けるため、日本での承認申請を主なミッションとする組織でした。


1990年代以降、グローバル全体で医薬品開発は大きな転換期を迎えました。それまで各国ごとに行われていた研究開発や承認申請は、国際的なルールの整備が進んだことで、世界各国が連携して開発を進める体制へと変化していきました。こうした研究開発体制のグローバル化が進むなか、KPRIもグローバル研究開発ネットワークの一員として新たな役割を担うようになりました。


外資系製薬企業による日本の研究開発拠点の再編が進むなかでも、ベーリンガーインゲルハイムが日本に拠点を維持・発展させた背景には、世界に通用する専門性がありました。和田さんは「特に経口固形製剤の処方設計(薬の成分や配合の設計)や、当時、日本のアカデミアが世界をリードしていた薬物トランスポーター(薬の吸収や排出に関わる体内の輸送タンパク質)を扱う薬物動態分野はグローバルから高く評価されていました」と振り返ります。


こうした強みを生かして組織の再編が進められた結果、KPRIはグローバル研究開発に貢献する拠点として進化していったのです。
日本のサイエンスをグローバルにつなぐKPRI
KPRIには現在、製剤開発(薬の有効成分を体内に適切に届けるための剤形の開発)、薬物動態(体内における薬の吸収・分布・代謝・排泄)、安全性、申請関連機能(医薬品の承認取得のための申請業務)など、研究開発を支える高度な専門機能が集約され、グローバルのベーリンガーインゲルハイムにおける研究開発ネットワークの一翼として重要な役割を担っています。
現在、世界中でベーリンガーインゲルハイムが開発する経口固形製剤のうち約40%の製剤開発と、低分子医薬品の約60%の薬物トランスポーター試験をKPRIが担っています。和田さんは「こうした実績は、KPRIの専門性がグローバル研究開発ネットワークの中で欠かせない存在であることを示しています。また、私たちがグローバルの研究開発において、長年にわたり積み重ねてきた信頼の証でもあります」と語ります。


一方で、KPRIの役割はこうした専門機能だけにとどまりません。日本にはスタートアップや大学から生まれる世界トップレベルの研究成果や、患者さんに新たな価値をもたらす可能性を秘めた革新的なシーズや技術が数多く存在します。KPRIはパートナリング活動を通じて、そうした日本の優れたサイエンスとベーリンガーインゲルハイムのグローバルネットワークをつなぐハブとしての役割も担っています。有望なシーズや革新的な技術をグローバルな研究開発ネットワークへと橋渡しすることで、ベーリンガーインゲルハイムの開発パイプラインの強化に貢献するとともに、日本の創薬力向上にも寄与します。これらを実現するために、研究機関や大学などが集積し、多様なパートナーとアクセスしやすい神戸医療産業都市に位置することも、KPRIが日本発のイノベーションを世界につなぐうえでの利点だと考えています。
日本の患者さんへ一日でも早くあたらしい治療法を届けるために
ベーリンガーインゲルハイムは、世代を超えて人々の暮らしをより良いものにする新たな治療選択肢を、世界中の患者さんにいち早くお届けすることを大切にしています。だからこそ、革新的な医薬品を生み出す研究開発だけではなく、その成果を迅速に承認取得に結びつけることも欠かせません。KPRIが長年担う承認申請業務は、その実現を支える重要な役割を果たしています。


医薬品の申請業務には、研究開発の背景にあるサイエンスを深く理解し、その価値やデータを適切に日本の規制当局へ伝える高度な専門性が必要となります。近年、ベーリンガーインゲルハイムでは多くの研究開発パイプラインが着実に進展しています。こうした中、グローバルでの同時申請を実現し、日本の患者さんが世界の患者さんと同じタイミングで新たな治療選択肢にアクセスできるようにすることの重要性はますます高まっています。


和田さんは、「研究所ならではの知見や専門性を生かし、グローバルチームと緊密に連携しながら研究開発の成果を承認取得へとつなげ、日本の患者さんに新たな医薬品をできるだけ早くお届けしたい」と語ります。
「研究拠点」を超えたイノベーション創出の場
ベーリンガーインゲルハイムにとって日本の研究所は、研究開発拠点であると同時に、優れた人材、画期的なサイエンス、独創的なアイデア、そして多様なパートナーが交わり、新たなイノベーションを育む場でもあります。


KPRIの研究者はベーリンガーインゲルハイムの研究開発ネットワークの中で、日常的に世界中の研究者と協働しています。グローバルな研究環境で培われる知見や経験は、研究者の成長を促すとともに、KPRIの競争力を支える基盤となっています。


また、KPRIは大学や研究機関、スタートアップ企業との連携を通じて、社外の多様な人材や新たなアイデア、技術が集まる場でもあります。日本に研究所を構えているからこそ、社内外のさまざまな知見や発想が交わる接点を作り出すことができるのです。
和田さんは、「KPRIは、研究機能の集合体ではなく、イノベーションを生み出すエコシステムの一部である」と強調します。研究者を育てること、外部パートナーとの連携を深めること、そして日本のサイエンスを世界へつなげること。その積み重ねが、新たな治療選択肢を待つ患者さんへ価値を届ける原動力になると考えています。


神戸から世界へ。KPRIはこれからも高い専門性を磨き続けるとともに、人材、サイエンス、そして多様なパートナーとのつながりを育みながら、ベーリンガーインゲルハイムのイノベーション創出を支える重要な拠点として進化し続けます。

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