働きがい偏差値で上場企業を測る時代がくる

2025.08.12 10:00
目次
財務偏重の終焉と、見えない価値への投資「働きがい偏差値」という新しい企業価値評価軸ISO 30414で「働きがい偏差値」を可視化する当社の支援で「働きがい偏差値」が変わった企業の事例働きがいは“主観”ではなく“戦略資産”上場企業の新たな信頼指標としての「働きがい偏差値」
財務偏重の終焉と、見えない価値への投資
長年にわたり企業価値の物差しは財務諸表上の数値が中心でした。P/LやB/Sで好成績を収め、株主価値=財務数値とみなす風潮が支配的でした。


しかしこの「財務偏重」の時代は終焉を迎えつつあります。


現代の企業価値の大半は、有形資産ではなく知的財産や人的資本などの無形資産が占めています。実際、米S&P500企業では企業価値の約90%が無形資産で占められており、有形資産は1割程度に過ぎないとの分析もあります。財務データだけでは測れない「見えない価値」が、企業の将来を左右する時代になりつつあります。


一方で、「数字は良いのに人が辞めていく」会社が現実に直面する課題も無視できません。業績好調でも社内では人材の離脱が相次ぎ、結果として採用市場でも「選ばれない会社」になってしまうケースです。


近年は転職サイトの口コミやSNSで社風や働きがいが可視化され、数字だけ良くても人材定着に失敗すれば企業評判は下がります。実際、新卒学生の就職活動でも社風や働きがいに関する情報は仕事内容と並ぶ重要項目となっており、半数以上の学生が企業選びで社内の雰囲気を重視するといいます。


財務数値さえ良ければ人は集まる時代は終わりを告げ、人が辞める会社は市場からも人材からも敬遠される現実が突きつけられています。


この流れに最も敏感に反応しているのが未来志向のグローバル投資家です。気候変動などと並び、「人的資本」への関心が機関投資家の主要テーマとして急浮上しています。


2024年の機関投資家調査では、人材の確保・育成戦略(人的資本管理)を重視項目に挙げた投資家が全体の71%にも達し、役員報酬や気候対応と並ぶ優先課題として位置付けられました。投資家は単に四半期業績を見るだけでなく、企業がいかに優れた人材を惹きつけ維持しているか、社内文化や従業員エンゲージメントを注視し始めています。また規制当局も動き出しています。米国では2020年に証券取引委員会(SEC)が30年ぶりに開示ルールを改訂し、上場企業に対し人的資本について重要と考える指標を10-K年次報告に開示するよう求めました。具体的な項目指定こそないものの、「人材リソースや人材施策の目標」を財務情報と並べて報告させるこのルールは、市場に人的資本情報の開示を定着させる転換点となりました。


要するに、企業の持続可能性はもはや損益計算書や貸借対照表だけでは測れないのです。


財務的に好調でも人的側面が脆弱な企業は長期的な信頼を得られず、逆に「人」という無形の資産に投資できる企業こそが選好される時代が訪れています。
「働きがい偏差値」という新しい企業価値評価軸
では、企業の「見えない価値」を測る新たな軸として何が考えられるでしょうか。


私たちは「働きがい偏差値」という考え方を持っています。


これは受験の偏差値のように、企業ごとの「働きがい」度合いを定量スコア化し偏差値として比較できるようにする試みです。平均値を50とし標準偏差でスコア化する偏差値の考え方を社内文化や人材活力に適用すれば、従来曖昧だった「働きがい」を客観指標として扱えるようになります。


その意義は、受験偏差値が学校選択の目安となったように、働きがい偏差値が企業選択や投資判断の新たな目安となり得る点にあります。


具体的には、従業員にとって働きがいに直結するいくつかの要素を組み合わせた複合指標を構想しています。例えば以下のようなKPIが挙げられるでしょう。


・離職率(特に若手やエース人材の離職率):社員が会社にとどまる魅力の程度を反映


・社内対話量(1on1ミーティング実施率や従業員提案件数など):コミュニケーションの質、風通しの良さやエンゲージメントを示す


・学習投資量(従業員一人あたりの研修時間・費用):成長機会の提供度合いを示す


・内部登用率(管理職や重要ポジションを社内昇進で賄った割合):社内人材育成と活用の度合い


これらは一例ですが、いずれも企業内部の「健康度」を表す指標です。実際、国際規格ISO 30414でもエンゲージメント(従業員満足度)や定着率、内部昇進比率、研修時間などが人的資本報告の重要指標として挙げられており、これらを組み合わせれば企業ごとの働きがいスコアを算出できます。たとえば離職率が低く内部昇進が多い会社は偏差値が高く、逆に離職率が高く学習投資も乏しい会社は偏差値が低い、といった具合に相対評価できるのです。


この「働きがい偏差値」は、投資家・求職者・取引先といった企業を評価・選択する立場のステークホルダーにとって有効な新指標となるでしょう。投資家にとっては、財務指標だけでは見えない企業の内在的な強さを数値で把握でき、社内の健康度=将来の投資魅力度として判断材料にできます。


求職者にとっても、自社を大切にする企業かどうかを偏差値という形で比較できれば、ミスマッチ防止に役立ちます。実際に「社風が合わず成長できない」という理由で転職を考える人は多く、ある調査では47%の求職者が社風の悪さを離職理由に挙げています。


取引先やパートナー企業も、人的資本に優れる会社とは長期的に安定した関係を築けると判断できるかもしれません。このように「働きがい偏差値」は企業の内側の健康度=外部への信頼度を示す新たな評価軸となり得るのです。
ISO 30414で「働きがい偏差値」を可視化する
上述のような働きがい偏差値の考え方を具体化するうえで鍵となるのが、国際標準化機構(ISO)が定めた人的資本開示のガイドライン「ISO 30414」です。


ISO 30414とは企業の人的資本情報を定量指標(KPI)と定性情報(ナラティブ)の双方から開示するための国際標準指標で、2018年に発表されました。それまで各社バラバラだった人事関連の測定指標を統一し、組織間比較を容易にする目的で策定されたものです。


ISO 30414には11の報告領域と計58の具体的な測定指標が網羅されており、企業は自社の人材に関する状況をこのフレームワークに沿って「見える化」できます。


報告領域には、コンプライアンス、コスト、ダイバーシティから始まり、リーダーシップ、企業文化(エンゲージメントや満足度)、健康と安全、生産性(従業員一人あたり売上など)、採用・離職(人材の流動性指標)、スキルと能力(人材開発投資額)、後継者計画、労働力の確保といった項目が含まれます。まさに企業の人的側面を360度評価できる項目が立てられているのです。


ISO 30414のユニークな点は、単なる数値の羅列ではなく語り(ナラティブ)と組み合わせて情報開示を行うよう求めているところです。定量KPIで現状を測りつつ、「なぜその数値なのか」「どう改善するか」といった背景や施策を定性情報として説明します。


例えば「離職率5%」という数字だけではそれが高いのか低いのか判断しにくいですが、業界平均や社内の取り組み(例:メンター制度導入で新卒定着率向上を図っている等)をナラティブで補足することで、ステークホルダーはその数字の文脈を理解できます。


このようにKPIの計測結果+経営の物語をセットで示すことで、企業ごとの人的資本の健康状態が立体的に伝わるのです。


ISO 30414は企業にとってまさに「組織ドック」のツールと言えるでしょう。


健康診断ドックが数値データから人の体調を診断し処方箋を示すように、組織ドックとしてのISO 30414も測定 → 診断 → 処方の流れを促します。


まず各種人事KPIを計測することで現状を見える化(測定)します。次に他社比較や目標値との差異から課題を洗い出し(診断)、最後にその課題に対する施策を打つ(処方)。


たとえば「エンゲージメント(従業員エンゲージメント調査スコア)が業界平均を下回り、離職率が増加傾向」という診断が出れば、原因を深掘りして「上司との対話機会不足」が浮かび上がり、処方箋として「1on1ミーティング制度の導入」といった施策が導かれる――という具合です。


ISO 30414はこうした一連の組織ヘルスチェックのフレームワークを提供しており、実際に国際的にもこの基準に沿った人的資本レポートが導入され始めています。特に欧米の年金ファンドや大型機関投資家は、ISO 30414に準拠した人材情報の開示を企業評価の参考にする動きを強めており、日本企業にも対応が求められつつあります。
当社の支援で「働きがい偏差値」が変わった企業の事例
では実際に働きがい偏差値向上に取り組んだ企業はどのように変わるのか――
ここでは、当社ITSUDATSU(人的資本経営コンサルティング)が支援した上場企業A社の事例をもとに、その過程をご紹介します。


A社は地方に本社を置く老舗メーカーで、近年業績は好調、財務指標も堅調でした。しかし社内に目を転じると、従業員エンゲージメントの低下と離職率の上昇という課題を抱えていました。


具体的には、従業員満足度調査のスコアは年々低下し、特に若手・中堅社員の離職率が直近で15%に達していたのです。採用面でも「地方企業で成長機会が少ないのでは」と敬遠されがちで、優秀な人材の確保に苦戦していました。
さらにIR(投資家関係)部門からも、「人的資本に関する開示を求める投資家質問が増えているが、明確な指標がなく困っている」と相談を受けていました。
財務数値は良いのに人が定着しない――まさに前述の「数字は良いが選ばれない会社」になりかけていたのです。


<課題発見:ISO 30414アセスメントによる診断>
私たちはまずA社に対し、ISO 30414のフレームワークを用いた組織ドック(人材アセスメント)を実施しました。11領域58指標のうち、A社の業態や課題感に照らして重要度が高いもの(エンゲージメント、離職・定着、育成投資、内部登用、リーダーシップなど)を選定し、データ収集と社員ヒアリングを行いました。


その結果、浮かび上がったのは次のような課題でした。


・内発的動機の欠如:社員が仕事にやりがい・成長実感を持てていない。昇進や評価が年功序列中心で、チャレンジ機会が不足。実際、「成長が感じられないので転職を検討」という若手の声がありました。


これは「成長実感の欠如」が離職につながる典型例で、ある調査では「最近退職した・退職を検討している社員の83%が『自分が成長していない』と感じていた」というデータもあります。A社でも同様に、成長機会の乏しさが士気低下と流出を招いていたのです。


・人材育成投資の不足:研修や学習の機会が限られ、社員がスキルアップに飢えている状態でした。ISO 30414指標で言えば「人材開発投資額」「平均研修時間」が同業他社平均の半分以下と判明。これは離職率増加とも関連が深い点です。


実際、94%もの社員が「成長の機会を与えてくれる会社なら今より長く勤めたい」と回答した調査もあります。A社では人材投資の遅れがそのまま社員の会社への期待値低下につながっていました。


・社内コミュニケーション停滞:管理職層の多忙やスキル不足により部下との1on1面談がほとんど行われておらず、現場の声が埋もれていました。社員提案制度も形骸化し、新しいアイデアが経営に届かない状態でした。「風通しの悪さ」がエンゲージメント低下の一因と分かりました。




・内部登用の低迷:管理職の大半が外部採用で占められ、社内昇進者(内部登用率)は25%程度と低水準でした。優秀な人材が社内でキャリアアップできず、中堅層のモチベーション低下を招いていました。


以上の診断結果から、A社の働きがい偏差値が低迷している主因は「成長環境の乏しさ」と「コミュニケーション不足によるエンゲージメント低下」であると特定しました。


これは表現を変えれば「人的資本への投資不足」に他なりません。人的資本投資=人材育成や組織風土づくりが不十分だと、短期的な利益は出せても長期の人材確保に綻びが出るという典型例でした。


<取り組み内容:KPI新設と文化変革の施策>
課題が明確になったところで、私たちはA社と協働し以下のような施策を展開しました。


1. 学習KPIの新設と人材育成改革:まず「一人あたり年間〇時間の学習」という新KPIを経営目標に据え、社員の学習計画を支援する仕組みを導入しました。当然ながら、学習の質も大事なのですが、まずはスモールスタートとして、そもそもの学習時間量を意識しようと合意しました。


具体的には、社内のナレッジ・事例勉強会や資格取得を奨励し、業務時間内研修も増やしました。従来予算のなかった人材開発費を捻出し、社内に「学習する文化」を根付かせる宣言をトップから発信しました。また各職種ごとのスキルマップを再設計し、「どのスキルを伸ばせばキャリアアップできるか」を社員と上司が共有できるようにしました。まさに「成長の見える化」です。研修後には受講者がチームに学びを共有する制度も始め、学習の効果を組織全体で波及させました。


2.社内対話量の増加とエンゲージメント向上:全管理職に対し1on1ミーティングの定期実施を義務付け、進捗よりも「キャリア」に重点を置く1on1研修も行いました。同時に、社員の声を経営に届けるため社内提案制度を刷新し、提案件数をKPIモニタリング対象に追加しました。提案が一定数以上採用された部署は評価に反映される仕組みとし、現場からのボトムアップを奨励しました。


経営トップ自身も月一回若手とのランチミーティングを復活させ、「経営陣が社員の声を聞く場」を演出しました。これらにより組織内コミュニケーション量(対話量)が飛躍的に増え、従業員サーベイでも「自分の意見を聞いてもらえている」という肯定的回答が大きく向上しました。


3.内部登用とリーダーシップパイプライン整備:優秀な人材が社内で成長しポストに就けるよう、「要ポテンシャル人材離脱率」というKPIを設定しました。ハイパフォーマーや将来のリーダー候補が会社に留まっているかを追跡する指標です。
この指標を人事評価に組み込み、各部門長が自部署の人材プールを育成・維持する責任を持つようにしました。具体策として、リーダー候補育成プログラムを新設し、複数部門を経験させるジョブローテーションやメンター制度も導入しました。また昇進要件を見直し、「〇年以上在籍」「年齢〇歳以上」など年功的な縛りを撤廃して能力主義に転換。
結果として若手管理職の登用が進み、内部昇進比率が大きく高まることになりました。


<結果:働きがい偏差値の劇的向上>
上記の取り組みの結果、3年あまりでA社の組織には目覚ましい変化が現れました。


まず離職率は、施策開始前の15%から直近では6%へと大幅に改善しました。特に「辞めてほしくない」若手層の定着が向上し、「成長実感が持てるので辞める理由がなくなった」という声が増えました。


加えて内部登用の活性化により社内昇格者比率が25%から42%へ倍増しました。今や管理職の半数近くが生え抜きとなり、社員にとって「自分にもチャンスがある」と感じられる環境になったのです。従業員エンゲージメント調査スコアも大幅改善し、「自社を人に勧めたい」と答える社員の割合が飛躍的に増えました。


こうした社内の変化は企業価値そのものの変化につながりました。人的資本の開示を強化し、ISO 30414準拠で作成した初めての人的資本レポートをIR説明会で発表したところ、投資家から大きな反響がありました。


「離職率低下や人材育成への具体的投資を示すデータは、御社の長期成長ストーリーを裏付ける」といった前向きな評価を得たのです。


ある機関投資家は「人的資本戦略をここまで明確に示す地方企業は珍しい。財務指標には表れない潜在力を感じる」とコメントしました。株価も中長期的に堅調に推移し、市場からの信頼感が向上したことを示しています。


まさに企業価値の変化は、まず社内から始まることをA社の事例は証明したと言えます。財務数値だけでは見えなかった「働きがい偏差値」の向上が、従業員の笑顔と投資家の評価に表れたのです。
働きがいは“主観”ではなく“戦略資産”
しかし、働きがい偏差値向上の取り組みには、当然ながら社内外で壁もありました。その一つが経営層の抵抗です。A社でも当初、ある役員が「働きがいなんて曖昧で主観的なものだ。経営の軸にはできない」と発言しました。多くの企業で見られるように、「働きがい」は福利厚生や従業員満足といったフワッとしたお題目に過ぎない、と軽視する向きがあったのです。


確かに数年前までは、エンゲージメント向上施策などは「お金にならないコスト」とみられがちでした。経営陣にとっては、売上や利益のKPIと違い、働きがいは測れない・経営に直結しないと映ったのでしょう。


この認識を変えるために、私たちはデータとロジックで説得を試みました。まずISO 30414のフレームワークを示し、「働きがい(エンゲージメント)も離職率や生産性といった客観指標で測定可能である」ことを説明しました。


実際ISOによる国際標準化の過程でも、「人的資本は客観的に測れない」との前提を覆そうとする試みが重ねられてきました。


つまり働きがいは決して単なる主観ではなく、数値で管理し改善できる経営指標なのだと認識してもらうことが重要でした。また「感じ方」の問題に見える働きがいも、要素に分解すれば構造化できます。たとえば「上司との関係性が良い」「成長実感がある」「処遇が公正」といった構成要素にブレークダウンし、それぞれ測定・モニタリングすることで、漠然とした不満やモヤモヤを見える化できるのです。


経営会議では、これら働きがい要素のKPIをダッシュボード化し、「温度感」を数値で議論する場を設けました。データを突きつけられると経営陣の意識も次第に変わっていきました。


さらに決定打となったのは、「働きがいは福利厚生ではなく立派な戦略投資である」という発想転換です。幸いA社の経営トップは数字に強い現実主義者でしたので、私たちは働きがい向上がもたらすビジネスインパクトをエビデンスとともに示しました。


例えば、「従業員エンゲージメントの高い企業は低い企業に比べ21%も収益性が高い」という調査データがあります。またエンゲージメント改善により顧客満足度や生産性も向上し、結果的に売上や利益に寄与するとの研究も多数あります。これらを提示し、「働きがい向上=利益向上の種まき」であると訴えました。


特にA社では人件費抑制のために採用を絞っていた経緯もあり、「限られた人材で成果を上げるには一人ひとりの熱意(エンゲージメント)を最大化するしかない」というロジックは経営陣の腹落ちにつながりました。


実際、人的資本への投資は中長期的に見れば最も高いリターンを生む可能性があります。人材が育ち定着すれば採用コストは下がり、生産性が上がり、イノベーションも生まれやすくなるからです。こうした観点から「働きがい向上施策はコストではなく未来への投資」と再定義し、経営戦略に組み込んでいきました。


最後に印象的だったエピソードをご紹介します。A社でCHRO(人事責任者)とIR責任者が初めて連携し、経営会議でプレゼンしたときのことです。CHROは社員サーベイ結果や離職率など人材KPIの現状を報告し、IR責任者はそれを受けて「このままでは投資家からの評価が下がりかねない」と市場の視点で補足しました。人事とIRが一体となって「人的資本経営」の必要性を訴えたことで、他の経営陣もハッと気付いたのです。


財務だけでなく人の面からも企業を語れなければ、投資家から選ばれないどころか、優秀な人材からも見放される――そんな危機感が共有されました。


この瞬間、働きがい偏差値向上の取組みは社内で揺るぎない経営課題として認識されたのです。
上場企業の新たな信頼指標としての「働きがい偏差値」
財務指標偏差値と働きがい偏差値の二軸で企業を測る時代が、いよいよ現実味を帯びてきました。


結論として強調したいのは、「開示」が企業の未来を変えるという点です。


A社の例でも、人材データをきちんと計測・開示しはじめたことで社内改革が加速し、結果的に投資家や求職者からの信頼が高まる好循環が生まれました。隠れた問題はまず測定・開示しなければ是正に向かいません。


企業も人と同じく、健康診断の結果を踏まえて生活改善するように、組織ドックの結果を公表することで初めて本気の対策が打てるのです。また開示は社内外へのコミットメントでもあります。「我が社は人的資本を重視します」「このKPIを改善します」と宣言しデータを示すこと自体が、企業の覚悟を示し行動を促すのです。


幸いにも、この流れは既に世界的な潮流となっています。ISO 30414を起点に、人的資本を企業価値へ転換する試みは各国で進んでいます。米国SECの人的資本開示義務化、EUの非財務情報開示指令の拡充、そして日本でも2023年3月期から有価証券報告書での人的資本情報開示が上場企業約4,000社に義務付けられました。日本政府も「人的資本可視化指針」を策定し、企業に開示すべき情報項目のガイドラインを提示しています。
これらはまさに「人の可視化」の時代の幕開けです。投資家も社員も学生も、企業を見る目に「人」という新たな物差しを持ち始めています。


これから訪れる未来、上場企業は「財務偏差値」×「働きがい偏差値」という二軸評価で価値を測られるようになるでしょう。


財務健全性と人的健全性、その両輪が揃って初めて企業の持続的成長力が評価されるのです。


企業経営者にとっては、自社の働きがい偏差値を高めることが従来以上に重要な経営課題となります。それは単に従業員のためだけでなく、投資家や取引先、地域社会との信頼関係を築く土台でもあります。


人への投資を正当に評価する時代において、企業は財務諸表の裏側にある物語――すなわち「人」の物語を語れるかどうかが問われています。私たちはその物語を創るお手伝いをし、企業と人のより良い未来を創る伴走者でありたいと思います。

あわせて読みたい

ふくおかフィナンシャルグループが人財ポートフォリオの構築と社員エンゲージメントの向上に向けタレントマネジメントシステム「タレントパレット」導入
PR TIMES
日本全国に電力を供給するJパワー(電源開発株式会社)が個人と組織の成長を通じた企業価値向上を目指し、タレントマネジメントシステム「タレントパレット」導入
PR TIMES
菊家のロングセラー商品「ぷりんどら」にカカオ香る「ショコラ」が新登場
PR TIMES Topics
錢高組、タレントマネジメントシステム 「タレントパレット」 でデータに基づく戦略的な人材育成と組織変革を推進
PR TIMES
株式会社フジテックス、セルフホワイトニング国内シェアNo.1の株式会社シャリオンと業務提携
PR TIMES
アイランドタイプのリバーシブルキッチン「変化するままごとキッチン」発売
PR TIMES Topics
M&Aで“売れる会社”になる条件とは?いま注目の“人的資本情報開示”で企業価値を高める
PR TIMES STORY
なぜあの会社は辞めないのか?地方製造業で実践する“人的資本経営”と離職率の逆転劇
PR TIMES STORY
「FLUFFYDAY(フラッフィーデイ)」オンラインセレクトストア「60%」に日本初上陸
PR TIMES Topics
ROEだけでは語れない企業価値とは――ファイナンス学者が警鐘を鳴らす“理念なき数値目標”の危うさ
ダイヤモンド・オンライン
常陽銀行が「1500人の営業」を分析して分かった、スキルと売上成績の関係
ITmedia ビジネスオンライン
生はちみつ専門店「MYHONEY」より高活性のマヌカハニー「STRONG MANUKA」を発売開始
PR TIMES Topics
マルハン東日本、タレントマネジメントシステム 「タレントパレット」 で従業員エンゲージメントと定着率向上を実現
PR TIMES
有給休暇の取得率が高い会社ランキングTOP200
東洋経済オンライン
【あさぎり牛乳】あべのハルカス近鉄本店に初出店。夏限定メロンスイーツ販売 
PR TIMES Topics
双日CFOが「5年で純利益倍増」は必達目標と断言!利益額2000億円の中身や6000億円投資、非資源シフトなどを徹底解説
ダイヤモンド・オンライン
「社員のキャリア形成に熱心な会社」トップ300
東洋経済オンライン
独自特殊構造のブラシを採用したスカルプブラシ誕生
PR TIMES Topics
株式会社Smart相談室、コーチング新サービス「Smartマイコーチ」リリース
PR TIMES
業界最大手の結婚相談所「ツヴァイ」が、顧客と従業員のエンゲージメントを高める「エングラフ」を導入
PR TIMES
秋の味覚をひと足先に!タンテ・アニーより「栗のフレッシュチーズケーキ」数量限定発売
PR TIMES Topics