終戦80周年。奴隷か、独立か──。欧米列強による圧政から立ち上がるべく、世界初の有色人種のみが一堂に会した国際会議があった。

2025.08.05 10:10
株式会社ハート出版
「ヨーロッパの栄光はアジアの屈辱である」岡倉天心――アジアの指導者たちの声が響く歴史的瞬間を、三浦小太郎が読み解く。『新字体・現代仮名遣い版 大東亜会議演説集』刊行
戦後社会は、戦争をすべて悪とし、聖戦なる概念は侵略の正当化とみなした。天心の思想も彼の美術史家、文明論者としての面のみが強調され「東洋の目覚め」のアジア主義的側面は軽視されるようになる。だが、アジア主義は近代日本において、西欧に抗しうる思想として、また運動として、犬養毅をはじめ政府当局者の中にも影響を与えていたのだ。確かに北一輝の処刑や中野正剛の自決に象徴されるように、民間のアジア主義はしばしば反政府思想として弾圧を受けた。だが、日本がついに欧米と決定的な対決に及んだ大東亜戦争の最中、岡倉天心は預言者として評価され、大東亜会議という場において、アジア諸民族の連帯は不充分とはいえ実現したのだ──(本文「はじめに」より引用)

文中「天心」とは見出しにもある通り、明治期に活躍した美術史家である岡倉天心のことです。天心は美術史家であるとともに、教育者であり、文明論者でしたが、実は優れた「アジア主義思想家」でもありました。しかし、天心のそんな側面は引用文中にもある通り、戦後完全に軽視、あるいは無視されることになりました。そもそも「あの戦争は何だったのか」という命題において、「日本による侵略戦争」というレッテルのみがコールタールのように日本人の心にへばりつき、それまでの「欧米列強による圧政を伴うアジア植民地政策」や「戦後のアジア諸国の独立=解放戦争」という側面はほとんど顧みられてきませんでした。

本書は昭和18年11月5~6日の二日間にかけて行われた「大東亜会議」における各国代表による演説を完全収録のうえ現代仮名遣いにて復刻し、それに三浦小太郎氏による解説を加えたものです。戦後教育においては、「日本の傀儡政権による単なるセレモニー」とほぼ無視されているこの大東亜会議ですが、実は世界初の「有色人種のみが一堂に会した国際会議」として歴史的な出来事なのです。

登壇者は日本代表・東條英機内閣総理大臣、中華民国代表・汪兆銘行政院院長、タイ国代表・ワンワイタヤーコーン殿下、満洲国代表・張景恵国務総理大臣、フィリピン国代表・ホセ・ラウレル大統領、ビルマ(現ミャンマー)国代表・バー・モウ内閣総理大臣、自由インド仮政府代表・スバス・チャンドラ・ボース首班の7名でした。

既に独立を維持していた日本、タイは言うに及ばず、フィリピンとビルマもそれぞれアメリカとイギリスに対し独立を宣言していました。インドは当時まだイギリスから独立していなかったため、自由インド仮政府代表のチャンドラ・ボースはいわゆる「オブザーバー」としての出席でしたが、演説内容は「アジア解放」と「インド独立」の熱に満ちたものでした。

特に「日本の傀儡」と批判されることが多い満洲国ですが、確かに日本による援助はあったものの独立国として富国強兵に努め、建国前に比べ大幅な経済的発展を果たしました。代表の張景恵による演説ではその内訳が詳細に語られています。

同じく「日本の傀儡」とされる中華民国の汪兆銘政権についても、これまで指導的立場だった蔣介石が「欧米の傀儡」で良しとしたことに対して明確に「NO」を突きつけ、同じアジアの解放に向けて日本と歩調を合わせたにすぎません。

演説は各国の代表がそれぞれの立場で話をしており、もちろん開催国であり当時のアジアにおけるリーダーシップを取っていた日本に対する感謝と引き続きのリーダーシップに期待する発言は見られるものの、全面的に阿(おもね)っているわけではなく、あくまでも「自国ファースト」の立場は崩していません。ここは、読まずに「会議自体が傀儡による日本への太鼓持ち」とレッテルを貼るくらいなら、読んだうえでその内容について批判できるところがあれば批判してほしいものです。

戦後における自称識者、進歩的文化人、共産主義系教育者たちがこの「大東亜会議」を恐れ歴史から抹消してきたのは、このアジア諸国代表による演説が広まることで、これまで作ってきた「日本がアジア諸国を侵略した」というシナリオが崩れ、「日本とアジア諸国が欧米諸国と戦って独立を成し遂げた」という真実が明らかになってしまうからではないでしょうか。

終戦80周年を迎える今年、日本に必要なのは「不戦の誓いと言いながら、アジアに新たな火種を与えるであろう首相談話」などでは決してなく、「歴史に埋もれた真実を掘り起こし、改めてアジア諸国の独立を喜びつつこれを不戦の誓いに代えること」ではないでしょうか。
その意味で、この「大東亜会議演説集」が改めて世に出る意義は大いにあるでしょう。
・著者プロフィール
三浦 小太郎(みうら こたろう)
昭和35(1960)年東京生まれ。
獨協高校卒。現在、アジア自由民主連帯協議会理事長。
著書に『信長・秀吉・家康はグローバリズムとどう戦ったのか』『漢民族に支配された中国の本質』(ともに弊社刊)、『ドストエフスキーの戦争論』(萬書房)、『渡辺京二論 隠れた小径を行く』(弦書房)、『日本人になったウイグル人たちに中国がやっていること』(産経新聞出版、日本ウイグル協会と共著)などがある。ほか、雑誌『正論』『Hanada』等に執筆。
・書籍情報
書名:新字体・現代仮名遣い版 大東亜会議演説集
著者:三浦 小太郎
仕様:四六判並製・256ページ
ISBN:978-4-8024-0244-6
発売:2025.08.04
本体:1,500円(税別)
発行:ハート出版
書籍URL:

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