サッカースタジアムで鳴り響くあの名曲の正体とは?

2025.08.13 09:30
暑さが続くこの季節にふさわしい一曲を、音楽ライター・小川智宏さんにセレクトしていただきました。
この7月は密かにサッカーが盛り上がっていた。「密かに」と書いたのは世間的にはそこまでフィーバーしていた印象ではなかったからだ。だがアメリカでは、クラブチームの世界一を決めるFIFAクラブワールドカップが開催され、決勝戦ではイングランドのチェルシーが下馬評をひっくり返し、チャンピオンズリーグ覇者のパリ・サンジェルマンを3対0で下してみせた。また、東アジアのナショナルチームが競うEAFF E-1サッカー選手権では、Jリーグの選手を集めた日本代表が見事3連勝で連覇を達成した。
こうした国際大会を見ていると、知らず知らずのうちに脳裏にこびりついて離れなくなる曲がある。The White Stripesの名曲「Seven Nation Army」だ。ナショナルチームによるW杯でも、今回のクラブワールドカップでも、スタジアムに流れるこの曲が中継映像を通して耳に入ってきた。あまりにも印象的なリフ(ベースにしか聞こえないが、じつは音程を下げてエフェクトをかけたギター)は、一度聴いたら忘れられない。THE WHITE STRIPES『ELEPHANT』(2003)
1997年にジャック・ホワイトとメグ・ホワイト(姉弟という設定だったが、実際には夫婦だった)によって結成されたThe White Stripesは、2000年代を通して大活躍したロックデュオだ。ギターとドラムだけで鳴らすブルージーなロックンロールは、音楽シーンに登場した瞬間からあまりにも鮮烈だった。“超”がつくほどオーセンティックな音像に、赤・白・黒で統一されたアートワークや衣装。故きを温ねて新しきを知るようなスタイルは、2000年代に勃興したガレージロックリバイバルの波に乗り、瞬く間に世界を席巻した。
2004年にグラミー賞の最優秀ロックソング賞を受賞した本曲は、4作目のアルバム『Elephant』のオープニングトラックだ。曲名はジャックが幼い頃に「救世軍(Salvation Army)」を「Seven Nation Army」と勘違いしていたことに由来するが、歌詞は救世軍とは一切関係がないし、もちろんサッカーとも無関係だ。「奴らをぶっ飛ばしてやる/“七か国軍”に俺は止められない」というフレーズで始まるこの曲は、自身を抑圧し、すべてを奪い去っていく体制に反旗を翻すレジスタンスの歌だ。
サッカー界でこの曲がアンセムとなったきっかけは、2003年にベルギーの「クラブ・ブルッヘ」のサポーターが、チャンピオンズリーグでイタリアのACミランと対戦した際に歌ったことだったといわれている。その光景を見た対戦相手のサポーターは感銘を受けたのだろう。やがてイタリア・セリエAの複数クラブの応援歌となり、2006年ドイツW杯では、イタリア代表が優勝した際に選手たちもこの曲を大合唱する様子が世界中に放送された。その効果もあってか作品はこの年、イタリアの音楽チャートで最高3位を記録した。それ以来、世界中のサッカーファンにとって文字通りの「アンセム」となり、2018年のロシアW杯ではついに公式の入場曲となった。
「やってやんよ!」という勇猛果敢な姿勢と、問答無用で高揚感を煽るサウンドに覚えやすいリフのメロディ。確かにこの曲は、無性に拳を突き上げたくなるようなパワーソングだ。この曲だけではない。アルバム『Elephant』は、全編が反骨精神や我が道を行く凛々しい態度に満ちていて、バンドの中でも最もパンク的な熱を感じる作品である。
いよいよ来年2026年はW杯イヤー。再び「Seven Nation Army」がスタジアムを揺らし、世界中を興奮させるはずだ。一緒に歌えるように、今からしっかり覚えておこう。
小川智宏(おがわ・ともひろ)/音楽ライター
1983年生まれ。音楽雑誌「rockin'on」「ROCKIN'ON JAPAN」編集部を経て、現在はキュレーションサービス「antenna」(https://antenna.jp)の編集長を務める傍ら、音楽ライターとして各種雑誌・WEBメディアでアーティストへのインタビュー、レビューなどを執筆中。
Edit : Yu Sakamoto

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