消耗品ではなく“仕上げの一手” フォックス・アンブレラと始める装い改革

2025.07.23 14:51
時代やトレンドに左右されることなく、長年愛用できるアイテムには格別な存在感がある。手にするだけで、これまで以上の満足感を得られ、自分自身もさらに磨かれていく。BRUDER編集部が選んだそんな『大人名品』と呼ぶにふさわしいアイテムを毎月紹介します。大人名品vol.6 
FOX UMBRELLAS(フォックス・アンブレラ)傘
日常で、最も使用頻度の高いファッションアイテムは何か? 答えは意外にも「傘」かもしれない。雨の日はもちろん、強烈な陽射しから身を守る意味でも、もはや傘は毎日持ち歩く装備と言える。
日本では近年、消耗品としての意識が高く、ファッションアイテムとしての存在感が薄れている傾向にある。それでも、傘は本来、着こなしの“カッコつけ”アイテムでもあり、コーディネートを完成させる特別な存在だ。その美学を体現しているのが、英国を代表する名門ブランド「FOX UMBRELLAS(フォックス・アンブレラ)」である。傘のルーツは“日よけ”だった 王侯貴族に愛された始まり
そもそも傘は雨よけではなく日よけの道具で、古代エジプトや中国では王侯貴族の女性たちが、強い日差しから肌を守るために使っていた。当時は自分で差すものではなく、従者が差し掛けるものであり、持つことすら特権だったという。「傘=地位の象徴」という文脈は、後のヨーロッパにも継承され、やがて男性たちのあいだでも、威厳や気品の象徴となっていった。傘を差した男は笑われた 紳士の装備となるまでの物語
たかが傘、されど傘。その存在にこだわった“変わり者”は、いつの時代にもいる。18世紀のロンドンで、人々の視線を一身に集めた男がいた。その名は、ジョナス・ハンウェイ(Jonas Hanway、1712-1786)。慈善活動家として知られる彼は、公共の場で男性として初めて傘を差した人物とされている。
当時、傘はもっぱら女性が使うものとされており、男が使うなんて前代未聞。彼が街を歩くたびに、通行人は冷やかしの声を浴びせ、馬車の御者たちは“傘男”を狙って泥をはねたという逸話も残っている。それでも彼はひるまず、傘を差し続けた。そしていつしか傘は、男性の実用アイテムとして市民権を得るようになった。
その後、英国では彼の精神を継承するようなキャラクターも登場する。たとえばステッキ型の傘を持って映画に登場したチャールズ・チャップリン。あるいは、パンク詩人ジョン・クーパー・クラークが、自らのアイコンとして傘を掲げた例もある。
いずれも共通しているのは、傘にはその人の「間合い」や「美意識」があらわれるということ。傘を丁寧に扱う男はどこか所作が美しく、気遣いがにじむ。“格”を醸す装備として、じわじわと効いてくるのだ。フォックス・アンブレラが生んだ傘の“革命”
傘は長い歴史のなかで、ゆっくりと進化した。加速をもたらしたのが、1868年にロンドンの金融街・シティで誕生した『FOX UMBRELLAS(フォックス・アンブレラ)』だ。創業者はトーマス・フォックス。日本が江戸から明治に移行した頃、遠く離れたイギリスで、傘業界に静かなる革命が起ころうとしていた。
設立から12年後、経営権はワイヤー加工業の名手・ディクソン家へ移った。ここから物語は一気に工業革命的な展開へ進む。最も画期的だったのは、スチール製の傘骨の開発だ。熟練の技術を持つサミュエル・ディクソン氏が、ワイヤー技術で応用できるのではないか? とひらめいたのがきっかけ。その結果、今では当たり前となったU字断面のスチールフレームが開発され、頑丈さが増し、量産が可能になった。
時は進み、第二次世界大戦後の1947年頃、フォックス・アンブレラは小型パラシュートの製作にも携わっていた。そこで、余った素材「ナイロン」を傘に応用するという革命的なアイデアが実現し、世界初の化学繊維傘が誕生した。
ナイロンの軽さと耐久性、スチールフレームの強さ、そしてデザインセンスが合わさることで、細くしなやかで、開いたときも閉じたときも美しい、現代の“傘の理想形”が完成した。以降、フォックス・アンブレラは英国王室をはじめ、世界中の紳士淑女に愛され続ける存在となった。消耗品ではなく“仕上げの一手” 傘が装いに与える力
スーツに革靴、時計にネクタイ。装いの要となるアイテムには、すべて意味がある。傘もまた「仕上げの一手」として機能するアイテムだ。特に英国では、スタイルの完成度を左右する“カッコつけ”の美学を宿すものであり、ビジネススーツの色と調和させ、雨の日でも抜かりない装いを保つのが、英国紳士の矜持である。
ご存じの方も多いだろうが、英国紳士にとって欠かせない“三種の神器”は、三揃いのスーツ・ボーラーハット・そしてステッキ(=アンブレラ)。傘は単なる実用品ではなく、ステッキのように扱われる“演出装置”でもあった。
その象徴とも言えるのが、フォックス・アンブレラが誇る細巻き傘だ。まるで一本のステッキのように、キリリと細く巻かれた佇まいは、開いたときだけでなく、閉じたときのシルエットまで美しい。そのこだわりの象徴として、かつて英国には、傘を美しく巻き上げる「アンブレラーローラー」という専門職まで存在していたという。いかに“美しく見せるか”に心を砕くことこそが紳士の美学だった。傘がくれるふるまいと所作の美学
創業当時からほとんど変わらぬ製法とデザインを貫き、それでいてどんな時代の空気にも自然と馴染み、装いに品格と静かな主張を添えてくれる。クラシックであることが、今なお“新しい”。スーツスタイルにはもちろん、カジュアルな服装にも寄り添い、さりげなく全体の印象を引き締めてくれる。
傘一本にそこまでの力があるとは、思いもよらないかもしれない。だが、自分のために選んだ一本には、確かな“意味”が宿る。こだわりのある道具を持つことは、単なるおしゃれを超えて、日々のふるまいや心のありようにも作用する。
ほんの少し足を止める余裕、丁寧に動く意識。小さな選択が、暮らしの質をゆっくりと高めてくれる。大人の“カッコよさ”とは細部にこそ宿るもの。「ただの傘」ではなく、「これを持つ」と決めた一本を。その選択が、装いにも、あなた自身にも、確かな変化をもたらしてくれるはずだ。
メンズ傘¥39,600~、レディス傘¥42,900~、折りたたみ傘¥22,000~/すべて税込
お問い合わせ先
VULCANIZE London ヴァルカナイズ・ロンドン
TEL:03-5464-5255/https://vulcanize.jp/
Text : Yumi Takahashi
Edit : Junko Itoi

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