究極の無音 最新にして最高のロールス・ロイス「スペクター」

2025.06.13 13:51
世界最高のクルマとは何か――。その問いに対するひとつの明確な答えが、「ザ・ベストカー・イン・ザ・ワールド」と称されるロールス・ロイスであることに異論はないだろう。1906年創業の英国の名門が送り出す最新作は、ブランド初のフル電動モデルとなる4シーター2ドアクーペ「スペクター」である。
ひと目見ただけで、それがロールス・ロイスであることは誰の目にも明らかだ。全体の佇まいは、かつてのV12エンジン搭載モデル「レイス」に近い。なめらかで優美なプロポーション。先端には、彫刻家チャールズ・ロビンソン・サイクスによる名作「スピリット・オブ・エクスタシー」が光り、荘厳な存在感を放っている。エンジンか、モーターか。その違いなど些細だと思えるほどに、ロールス・ロイスは「様式美」を最も重んじるクルマだということをスペクターは明快に示している。全長は5475mm。BMW「7シリーズ」よりもわずかに長いサイズながら、ドアは2枚のみ。しかも、開閉は観音開きではなく、後ろヒンジで後方に向かって開くという仕様だ。ロールス・ロイスらしい非日常性と格式は、こうした細部にこそ宿っている。
ドアノブに手をかけると、まるで舞台の幕が開くように室内が現れる。象徴的なメッキ仕立てのパルテノングリルに対し、レザーでまとめられたインテリアは、神殿の奥にあるサロンのような静謐(せいひつ)さをたたえている。視覚と触覚の両方から、乗る人を“別の世界”へと誘う空間だ。注目すべきは、2ドアクーペでありながら、リアシートの仕立てにも妥協がないこと。足もとには余裕があり、後方ヒンジのドアによって乗降も自然。後席に座ること自体がステータスであるロールス・ロイスの哲学が、このクルマにはしっかりと受け継がれている。
やわらかなシートに身をあずけ、操作系に目をやる。スイッチ類はタッチ式ではなく、あくまで物理ボタン中心。電動化されたとはいえ、ガソリンモデルの「レイス」をそのまま引き継いだような印象だ。メインスイッチを押しても静寂は破られず、BEV(電気自動車)であることに気づくのは、メーターの表示を確かめたときくらいだ。もともとガソリン車のロールス・ロイスも極めて静かだった。静かさの次元が、もはや常識を超えている。ステアリングコラム右側のレバーでシフトを操作し、いざ発進。タイヤノイズや風切り音が意外と目立つこともある一般的なBEVとは異なり、スペクターが滑るように走り出すその瞬間、耳に届くのは“無音”という名の音。イヤーマフをつけたときのような、外界から完全に隔絶された感覚。これほどまでの静寂は、これまでのどんなクルマでも味わったことがなかった。
エアサスペンションが路面をいなす動きもまた優雅。ドライバーでありながら、まるで後席でくつろいでいるような錯覚すら覚える。しかも、床下に敷き詰められたバッテリーの重量が気になる場面は皆無。そもそもロールス・ロイスは重量級。バッテリーの重さなど、あってないようなものなのだろう。BMW由来のアダプティブクルーズコントロールの制御も実に自然で、あらゆる操作が「努力」を感じさせない。これが本当のラグジュアリーだ。前後に1基ずつモーターを搭載し、駆動方式はAWD。かつては「必要にして十分」として出力すら明かさなかったが、今では数値が示されている。スペクターの最高出力は584ps、最大トルクは900Nm。そしてBEVとしてのもうひとつの指標である一充電航続距離は、WLTCモードで530kmと発表されている。だが実際にステアリングを握ってみれば、スペックよりもなによりも、この動的質感――とりわけ静けさのインパクトに圧倒されるはずだ。
広大なラゲッジスペースには、キャディバッグが2本余裕で収まる。パートナーとともにクラシック音楽を流しながら、静かにコースへと向かう。そんな風景こそ、スペクターにふさわしい時間の使い方だろう。移動の質が人生を変える――そう思わせてくれる、まさに最新にして最上のロールス・ロイス。スペクターは、進化し続けるザ・ベストカー・イン・ザ・ワールドの現在地である。
ロールス・ロイス スペクター  車両本体価格: 4800万円(税込)ボディサイズ | 全長 5475 X 全幅 2017 X 全高 1573 mmホイールベース | 3210 mm車両重量 | 2890 kgシステム最高出力 | 584 PS(フロント:258 PS 、リア:490 PS)システム最大トルク | 900 N・m一充電走行距離 | 530 km(WLTCモード)お問い合わせ先
www.rolls-roycemotorcars.com
Text : Takuo Yoshida

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