2025年5月13日『新住宅産業論』出版記念シンポジウムを開催しました

2025.05.21 09:30
一般社団法人日本モバイル建築協会
一般社団法人日本モバイル建築協会(本部:東京都千代田区、代表理事:長坂俊成)は、2025年5月13日に『新住宅産業論』(2025年4月8日発売)の出版記念シンポジウムを開催しました。

当日は、建築業・林業・行政・学術の各分野の実務者や研究者が集い、「森林を起点とする木造住宅産業の再構築」に向けた活発な議論が行われました。
シンポジウムの背景と目的
本書『新住宅産業論』では、以下のような課題意識が共有されています。
- 巨大災害(南海トラフ地震等)に備えた住宅供給力の確保
- 木材利用を通じた再造林・森林循環の実現
- 中小工務店でも参加可能な“開かれた工業化”の仕組みづくり
- 全国1,000か所に分散する「認定工場ネットワーク」の構想
- 災害応急住宅と恒久住宅を接続する新たな供給モデルの実証

これらを受け、本シンポジウムでは、今後の巨大災害(南海トラフ地震等)への備えとして、応急仮設住宅の大量供給と木材の備蓄・循環利用をどう両立させるかを出発点とし、解決のための方策を検討するためのキックオフの場として位置付けられています。

特に令和6年能登半島地震で実施されたモバイル建築版応急仮設住宅を261戸、その他、支援者向け仮設宿泊所300戸をはじめとした、仮設工房・仮設商店等の供給という実践を通じて得られた教訓から、今後の災害時に実戦可能な地域主導かつ高性能な住宅供給体制の再構築を推進します。
セッション1
テーマ:中小工務店の住宅の高性能化を支える工業化とサプライチェーンの戦略と方法
セッション1の様子:左から大場友和、塩地博文、小見康夫、長坂俊成、萩原浩、中山紀文(敬称略)
議論の要点
- 中小工務店の地域対応力の強み地域の実情や施主の要望にきめ細かく対応できる柔軟性が評価された一方で、スピードと高性能の両立には構造的な支援が必要であるとされました。
- 共通仕様と形式住宅による効率化断熱や耐震といった性能要件を標準化し、設計の共通化を図ることで、工務店側の負担軽減と品質の安定化が期待される仕組みとして整理されました。
- 小規模分散型の認定工場ネットワーク地域単位での製造・施工一体化を実現する手段として、「駐車場レベルの工場」や「移動型生産拠点」の構想が提示され、実装可能性が検討されました。
- 若手育成と設計・技術支援の体制整備中小の担い手不足に対応するため、協会や大学が設計面から継続的に支援を行う体制の構築が必要とされました。
- 工務店と認定工場の水平連携による新しいビジネスモデル製造・施工・設計の機能を分離せず一体化する「水平型サプライチェーン」が、今後の住宅供給モデルとして有効であると評価されました。
セッション2
テーマ:再造林の責任を果たし国難に備える木材備蓄とオープンな認定工場の戦略と課題
セッション2の様子:左から塩地博文、酒井秀夫、本郷浩二、長坂俊成、中山紀文(敬称略)
議論の要点
- 再造林の仕組み化と住宅産業の役割再定義住宅業界が「伐採の出口」となるだけでなく、「植林の入口」としての責任を担うべき産業と位置づけられました。
- 木材備蓄に対する国家的支援の必要性災害時の急激な需要増加に備えるため、平時からの木材備蓄体制が国家単位で整備されるべきであると提案されました。
- 中小製材・加工拠点の活用拡大大規模工場への集中を避け、地域に根差した中小規模の製材所やプレカット工場が認定工場として活躍できる体制が必要とされました。
- 木材活用の多様化と柔軟な供給体制の構築建築用部材のみならず、エネルギーや内装などへの展開も視野に入れた供給モデルの多目的化が重要視されました。
- 木造住宅を国家政策と連動させる意義の確認脱炭素、防災、地方創生などの複数の国家的課題に対して、木造工業化が戦略的に位置づけられるべきであると整理されました。
総括と今後に向けて
総括として、主催者である日本モバイル建築協会代表理事の長坂より「今日の議論は制度、現場、学術の連携による共創モデルとして展開していくことが必要」とのメッセージが示されました。

また、両セッションの議論を踏まえ、新住宅産業化の方向性として、以下の方針が確認されました。
- 森林(林業)とつながり、持続可能な地域経済の循環の中で、職人不足に対応できるオープンなオフサイト生産により高性能・高付加価値な木造住宅を供給する分散型サプライチェーンの構築を目指すことが確認された。
- この新たなサプライチェーンが国難級の災害に備える応急住宅(動くみなし仮設住宅)の供給プラットフォームとなる。


今後、日本モバイル建築協会では、
- 全国の工務店・製材所との連携強化
- 認定工場ネットワークの制度設計
- モバイル建築による災害時供給モデルの標準化

などを柱とした実装フェーズに移行していく予定です。
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