ろう者の家族の中でCODAとして育った監督の、10年をかけた企画!言語の違いとその対立など、幼少期からまとわりつくように感じていた違和感を、悲劇ではなく喜劇として表現することで、今までの言語マイノリティ作品とは一線を画す映画が出来ました!この作品を、一人でも多くの人に応援してもらいたいです!—私たちとこの映画について
はじめまして。映画プロデューサーの小澤と申します。
私たちが制作をした、映画『みんな、おしゃべり!』という作品は、ろう者の家族と、対立するクルド人家族が、コミュニケーションのちょっとしたすれ違いから大きな騒動になっていく、「言語」をテーマにした喜劇映画です。
一般的にコメディ、と表現も出来ますが、この作品はどちらかというと、喜劇、という表現が似合う作品です。—このクラウドファンディングの意図
今回、そんな映画の応援をして頂ける方々を募集するべく、クラウドファンディングに挑戦することといたしました。
この映画は当初、制作費を抑えたコンパクトな企画として立ち上がりました。
ところが、言語をテーマにした本作は、ろう者と日本手話を取り巻く環境、対比するクルド人やクルド語の環境、その中でのCODAや聴者やその他言語を扱う人々の存在、こうしたあらゆる外的・内的事象を、可能な限り最大限、丁寧に描くことが必要不可欠でした。
撮影現場の環境も、2022年に機構としてスタートした、日本映画適正化機構(映適)のガイドラインに則った就労時間とするべく、一日の撮影時間を従来の映画制作より少ない時間とすることで、健全な現場づくりを行いました。
こうした制作事情から、制作費が想定よりも少しだけオーバーをして、「現状のままでも宣伝活動は可能だが全国の人に確実に届けられるかは分からない」という宣伝費が残りました。
それでも、その縮小した宣伝費でやっていこうと覚悟を決めたのですが、2025年3月20日に行われた、初号試写(注:関係者向けのお披露目の場)にて、本作が大変なご好評をいただいたのです。
私はその仕事の性質上、特に初号試写は身内の労いの場であり、各自それぞれの仕事の振り返りを行う機会であるので、作品の良し悪しというコメントはいつも話半分で聞いていました。大体どんな映画でも、みんな良かったと言いますし、自分の仕事はともかく作品は良かった、という人が多いので。
もちろん本作においても、過去の作品と同様のスタンスで臨みました。
ところが、終わって出てくる人出てくる人、90名弱。ほとんど全ての人が、高評価でした。
会場の映写技師さんやスタッフの方も、「こんなに盛り上がる初号はあまり観たことがない」と言われる次第。
世間の評価と多少の乖離はあるだろう。でもそれにしても、そんな評高価を今のところいただいている本作、でも宣伝費が全国分はない……。
—結論として
前置きがとても長くなってしまいましたが、そういう事情で、急遽クラウドファンディングを立ち上げることにしたのです。
リターンは全てに前売券が付くものとなっていて、ご支援いただくこと=映画を観ていただくこと、ということを念頭に置いた返礼品の設定となっています。
ご支援いただいた資金は、全額、この映画を一人でも多くの方に観ていただくための宣伝活動費として大切に使わせていただきます。
映画の宣伝活動費というのは、通常、ポスターやパンフレットのデザイン&印刷代、宣伝活動に関わる交通費などの諸経費、予告編制作費、WEBサイト制作費、広告出稿費、舞台挨拶やそれに関わる諸経費、手話通訳費などです。
みなさん一人ひとりのご支援で、この映画を全国に届けたいと思っています。ご支援、応援のほどよろしくお願いいたします!—スタッフ・キャストからメッセージ動画
ー監督:河合健/プロフィール・コメント
河合健 / Ken Kawai
1989年生まれ、大阪出身。日本映画学校(現・日本映画大学)卒業後、助監督として瀧本智行、熊切和嘉、入江悠などの監督作品に携わる。また、その傍ら制作した自主映画『極私的ランナウェイ』(2012)がぴあフィルムフェスティバル2012、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2013に入選、『ひつじものがたり』(2015)がゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016、ニッポンコネクション2016、カメラジャパン2016に出品される。『なんのちゃんの第二次世界大戦』(2020)で劇場公開デビューを果たす。ろうの親をもつCODAである。
コメント
『映画の登場人物たちと同じように、日本語・日本手話・クルド語が入り乱れ、ああだこうだと言い合う現場でした。言葉の壁を乗り越えるというよりは、言葉の壁を使って遊ぶような日々でした。
みんなが一つになるわけではなく、それぞれにしか分からないこと、譲れないものがあり、それらを受け入れながら進んだ結果、とんでもないものが撮れました。改めて、素敵なスタッフ・キャストに感謝しています。
また、本作では字幕も表現の一部です。いわゆる「バリアフリー」ではなく、「バリア」を活かしたオリジナルの字幕を作りました。それぞれの第一言語を持つ観客にしか見えないもの、感じ取れないものがあり、その“ズレ”や“抜け落ち”こそが、この映画の核になっています。
前の席や隣の席に座る異なる文化・言語を持つ観客の反応も含めて、楽しんでもらえたら嬉しいです。』ーろうドラマトゥルク・演技コーチング:牧原依里/プロフィール・コメント
牧原依里 / Eri Makihara
1986年生まれ。映画作家・演出家。一般社団法人日本ろう芸術協会代表。視覚と言語としての手話を軸に、身体感覚に根ざした視点から作品を制作。映像やパフォーマンスなど多様な形式を用いながら、作品を通じて現れる「現象」を可視化する装置としての表現に取り組んでいる。
コメント
『本作では、初めて演技に挑戦するろう者や子どもたちを中心に、演技コーチングを担当しました。またドラマトゥルクとしても、河合監督と対話を重ねながら、作品の方向性を模索し、監督の意図を汲み取りながら並走してきました。
初めて脚本を読んだ際、冒頭のシーンをみて「これはすごいことになる」と直感したのを今でも鮮明に覚えています。河合監督ならではのユーモアあふれるアプローチで、これまで誰も正面から扱ってこなかった、いわば“タブー”とされてきたテーマに、ウィットに富んだ視点から果敢に挑んでいます。脚本を読んだ段階では理解しきれなかったラストシーンも、今では私がもっとも愛する場面のひとつとなりました。
ここまで多言語を本質的に取り入れた映画作品は、かつてなかったのではないでしょうか。実は、字幕の見せ方ひとつをとっても長い議論を重ねてきました。最終的にどのような形になったかは、ぜひ劇場でご覧いただけたらと思います。
この作品は、まさに“私たちがこの社会をどう生きているのか”を映し出すものです。
映画界のみならず、ろうコミュニティにおいても語り継がれる一本になると確信しています。』
ークルド表現監修:ワッカス・チョーラク/プロフィール・コメント
ワッカス・チョーラク/Vakkas Colak
1981年生まれ、トルコ出身。2006年、同国ディヤルバクルにあるディジュレ大学よりトルコ語・トルコ文学学士号および教育学修士号を取得。2009年より日本で暮らす。日本クルド文化協会・事務局長、東京外国語大学クルド語講師。
コメント
『クルド表現監修のワッカス・チョーラクです。
言語をテーマにした作品で、クルド語が描かれると知った時、とても嬉しく思いました。
在日クルド人二世の言語問題、また出身地によりトルコ語・アラビア語に分かれたクルド人のリアルな現状を切り取りつつ、映画ならではの驚くような展開が待ち受けています。
深刻化する世界の分断や言語の壁を、シニカルにユーモラスに描いた素晴らしい作品です。ぜひ映画館で楽しんでください。』—映画概要
映画『みんな、おしゃべり!』
2025年11月下旬 全国順次劇場公開
出演:長澤樹、毛塚和義、福田凰希、ユードゥルム・フラット、Murat Çiçek、那須英彰、今井彰人、板橋駿谷、小野花梨
監督:河合健
脚本:河合健、乙黒恭平、竹浪春花
プロデューサー:小澤秀平
ろうドラマトゥルク・演技コーチング:牧原依里
手話指導:江副悟史
ろう俳優コーディネート:廣川麻子
クルド表現監修:Vakkas Colak
協力:日本ろう芸術協会、東京都障害者スポーツ協会他
企画・製作プロダクション:GUM株式会社
配給協力:Mou Pro.
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会
©2025映画『みんな、 おしゃべり!』製作委員会—あらすじ
マイノリティを誘致する街で、長年暮らす、ろう者の父と弟がいる古賀家と、その街に新しく越してきたクルド人一家が、些細なすれ違いから対立する。二つの家族の通訳として駆り出されたのは、古賀家で唯一の聴者である娘の夏海と、クルド人一家で唯一日本語が話せるヒワであった。二人は次第に惹かれ合っていくが、両家の対立は深まるばかりであった。そんなある日、古賀家の弟・駿の描いた落書きから、小さな対立は街を巻き込む問題へと発展していく。—今作の監督
さて、この項から、監督やこの作品、或いはそれを取り巻く現代の環境などについてお伝えしていこうと思います。
監督は、ろう者の家族の中で、CODAとして育った、河合健監督です。
言語の違いやそれに起因する対立など、幼少期からまとわりつくように感じていた違和感を、悲劇的に描くのではなく、喜劇として表現することで、今までのろう者や言語マイノリティたちが出てくるエンターテインメントとは一線を画す作品を、10年かけて、ようやく完成させました。
CODA(Children of Deaf Adults)とは、ろう者のもとに生まれた、聴者の子どものことです。
2021年度の米国アカデミー賞作品賞を受賞した『コーダ あいのうた(2021)』で多くの人に知られる存在となりましたが、まだまだ日本では認知されていません。
—日本手話という言語
⼿話は世界各国、国ごとに違います。もっと⾔えば、地⽅によっての方言の違いもあります。
さらに国内の手話には大きく分けて「日本手話」と「日本語対応手話(手指日本語)」があります。
「日本手話」は手話独自の文法で語られた、日本のろうコミュニティから生まれた自然言語であり、「日本語対応手話(手指日本語)」は日本語を手の表現に置き換えたものです。
初めて触れる方には理解が難しいかもしれませんが、簡単に言えば、手話には手話の文法があり、口語には口語の文法があるということです。日本手話は日本語の置き換え表現ではない、ということだけまずはご理解いただけたらと思います。
日本手話は言語として認められなかった歴史を持ち、ろう学校の教育でも口話法を用いられ、音声言語の読み取りや発声訓練を受けていました。2011年に交付された改正障害者基本法の中で日本手話が言語であることが明記されましたが、手話言語が音声言語と違う独自の言語体系を持つことは未だに社会に認知されていないのが現状です。—クルド語という言語
クルド人はもともとはトルコ・シリア・イラク・イランにまたがる山岳地域に住み、国家を持たない世界最大の民族です。使用言語はクルド語と居住国の第一言語ですが、居住国からクルド語抑圧を受け、公的な場でのクルド語の使用が禁止されたり、言語として認められなかった歴史を持ちます。現在では言語使用が認められておりますが、今なお抑圧された状況は続いている為、クルド人の中にはクルド語を話せない人も数多くいます。—両言語の類似性
日本手話とクルド語は共に、世界中のどの国おいてもマイノリティ言語・消滅危機言語であり、かつては言語として認められておらず、使用を禁止された歴史を持ちます。
作品内で、両言語の類似性は表出されませんが、なぜ日本手話なのか?なぜクルド語なのか?は、きちんと理論的に決定がなされた本作の設定です。—企画立ち上げ
これより、映画の企画から完成までを追体験いただけるように、出来るだけ細かく、この映画の制作過程を書き出していきます。
この映画の構想が始まったのは、河合さんが映画を作り始めた18歳のころ。日本映画学校(現:日本映画大学)の卒業制作の際に、自分のルーツである、ろう者の作品を撮りたいと考えましたが、様々な事情により、その時は正式な企画としては立ち上がりませんでした。—脚本執筆開始
2019年、河合さんの劇場公開デビュー作となる『なんのちゃんの第二次世界大戦(2020年劇場公開)』撮影終了後、本格的に企画として動き始めました。
映画のテーマは、言語。今までの映画やドラマ作品で違和感があったろう者の描き方を根本から見直し、ろう者が使う言語をテーマにすることにしました。
どうしても自分の境遇やパーソナルな感情に基づく物語となることが予想された為、映画として客観性を持たせた作品とするために、当初一人で書いていた脚本を、三人体制へと変更しました。
同時期に、物語中で対立する家族に、もう一つのマイノリティ言語であるクルド語を話す家族を登場させました。
とはいえ、主人公:夏海のCODAとしての在り方は、やはり河合さんのCODA像と映画としての主人公像を照らし合わせながら執筆を進めました。
そして2023年に、現在の台本のベースとなる脚本が、ようやく出来上がりました。—牧原さんたちとの出会い
2023年春、私たちは、ろう者の作り手たちを探していました。
従来のろう者を描いた作品に感じていた、悲劇的なお話や、ろう者の生活や聴者が演じる手話表現と一線を画すため、ろう監修という領域を越えて、ろう演出と呼ぶべき範囲まで一緒に関わってくれる人として、映画作家の牧原依里さんがろうドラマトゥルク・演技コーチングとして参加が決定。さらに、ろう俳優コーディネートに廣川麻子さん、手話指導に江副悟史さんがチームに加わりました。
—ワッカスさんとの出会い
同時期にクルド表現監修を依頼するため、ワッカス・チョーラクさんにお会いしました。
ワッカスさんは日本クルド文化協会の事務局長を務め、映画『マイ・スモールランド』でクルド監修にも携わっています。
今回は言語を題材とした作品のため、クルド語を第一言語とするクルド人の出演は必須でした。
ですが、就労問題や、そもそも普段働いているので平日の撮影ができない方など、候補者を探すだけでも困難を極めました。
ワッカスさんは在留資格などの条件をクリアする方の中から、さらに本作の登場人物の役柄を踏まえたキャスティング候補者を選出してくれました。
こうして、今作の、ろうチーム・クルドチームが出来上がりました。
—第一言語に基づいたキャスティング
今作は、言語がテーマですので、基本的に全ての出演者を、その人の第一言語に基づいたキャスティングで行っています。ろう者は日本手話、クルド人はクルド語話者と、徹底して行いました。劇中ではマイノリティですが、もちろん聴者は聴者が演じています。
実はこの手法、ハリウッドをはじめ海外では当たり前のことになりつつありますが、日本の映画やドラマ産業においては、まだ一般化されておりません。聴者がろう者を演じるなど、知名度などに準じたキャスティングが多数を占めており、障害当事者の雇用を奪うといった見方をされるケースもあります。
とはいえ、私たちは、こうした人権的な事柄のみを考えこのキャスティング手法を選択したのではなく(もちろんそれは存在しますが)、エンターテインメントの作品として、ろう者とは、クルド語とは、言語とは……ということを深掘りしていった結果、言語をテーマに作品を描ききるには、必要不可欠な前提条件として選択したに過ぎません。
ろう者のオーディションは、23年12月〜24年3月にかけて行われました。デフアクター(ろう俳優)として活躍されている方から、今まで表現活動はしていなかったけどやってみたい!という方まで含め、80名ほどの方とお会いし、決定しました。
クルド人のオーディションも同様で、前述の条件をクリアした人で、且つ表現活動をしたいという人は、日本国内では数少ないため、全員とお会いし、決定しました。
—主人公:夏海のキャスティング
CODAは、音声言語と手話言語の中で育ち、第一言語が定まっていない人が多いです。河合さん自身も、手話は少ししか使えず、親とのやり取りは、極めて個人的なコミュニケーション方法でやり取りしています。……他人に説明が難しいとのことですが、これはCODAあるある、だそうです。
ですので、夏海を演じるには、作劇上必要な手話を覚えるだけでなく、CODAとしての身体表現や目や口の動きなど、ろう者と日々過ごしていく中で培われたコミュニケーション方法を表現する必要がありました。
そんな19歳のCODAを演じるオーディションは、23年10〜12月にかけて行われました。
書類審査も含めて、100名ほどの方から、長澤樹さんを選びました。
結果としてそれがぴったりはまり、ろう表現やCODAの表現の、国内のエンタメ作品としては最高到達地点になったと自負出来るほど、素晴らしいCODAを演じてくれています。—CODAを演じるということ
企画当初、監督が一番悩ませたのはCODAについてでした。
監督がCODAという名称を知ったのは20歳を過ぎてから、他のCODAと会ったのは30歳を過ぎてからだったので、この企画は監督自身の無意識の中にあるCODAを意識化する時間でもありました。
牧原依里さんの紹介で、他のCODAの方に取材する機会をいただいたり、CODAに関する資料・映像を調べる中で、少しずつ理解を深めていきました。
一度はCODA監修を入れるかどうかも検討しましたが、CODAは家庭環境によって、ろう文化と聴文化にどう触れてきたか、手話表現だけでなく、ろう者と向き合う際の所作も変わってきますし、悩みも様々ですので、最終的には牧原さんたちの意見を聞きながら、監督によってCODAの主人公を作り上げました。
しかし、CODAヘの理解が深まったことで、大きな課題が見えてきました。
CODAを演じる上で、手話を覚えるだけでは不十分であり、無意識で行う所作の一つ一つを指導するのはかなり難易度が高く、仮に出来たとしても、演じる側のお芝居がそこに集中してしまうのではないか。つまり、「CODAらしく見せることだけに演技を費やしてしまうこと」が懸念されました。
そこで、夏海役の長澤樹さんには約1ヶ月間スケジュールを空けてもらい、ろう者とのコミュニケーションの中で生まれる視線の動かし方や所作などを無意識で出来るようにするための特訓が始まりました。—リハーサル
2024年5月、本格的なリハーサルが始まりました。
場所は、西日暮里にあるデフスペース「5005」で行いました。
夏海役の長澤樹さん、夏海の父役の毛塚和義さんのお芝居を中心に連日行い、
休日など数日おきに、クルド人チームや他のろうチームの大人数のシーンのリハを行いました。
ろう者の毛塚さんは西日暮里でラーメン屋を営む麺屋「義」の店長です。
今回、演技初挑戦ですので、ろうドラマトゥルク・演技コーチングの牧原さんによって、台本を1行1行を日本手話で説明しながら、監督と共にリハーサルを行いました。
そして、長澤さんはまずCODAの身体感覚を掴んでもらうため、日中は手話指導の江副悟史さんと共に街を巡りながら、音声言語を封印してコミュニケーションを取るところから始めました。
監督から江副さんには「これまでのどのドラマ・映画よりも最もCODAにしてほしい」とハードルの高い要望を出していました。
基本的に毎日、江副さん・はせさん(通訳者)・長澤さんの三人で、東京都内を歩き回りながら、コミュニケーションを深めていきました。
それとは別に、本作の出演者でもある那須英彰さんのご厚意に甘えて、那須さん宅で約3週間暮らしてもらうことで、私生活からろう文化を身体に馴染ませました。—ロケ地について
物語の舞台は、街の電器屋さんです。
また、地域ぐるみで街興しをしている人(沖田:板橋駿谷さん)が出てくる関係で、出来れば商店街などがある場所が良いということもあり、60箇所ほどの目星をGoogleMapでリスト化し、2024年の1月〜2月にかけて、端から端まで一軒ずつ交渉をしていきました。
行き着いたのは、神奈川県横浜市の、三ツ境駅の商店街と電機店です。
撮影時に、商店街の各お店が順番にロケ弁を手配してくれたり、連日の撮影でも快く受け入れてくださったりと、大変感謝しております。
この映画に関わる皆様も、是非遊びに行ってみてください。駅前の蕎麦屋の、「角よし」さんがおすすめです。
—撮影
撮影は2024年6月、ちょうど一ヶ月間で行われました。
ろう者・聴者、さらにはクルド人と、常に三つ以上の言語が飛び交う現場となりました。
さらに出演者の半数ほどは演技初挑戦ということもあり、リハーサルには通常の数倍の時間を費やしながら行い、さらに、ろう俳優が出演するシーンでは全シーン、牧原さんによる確認も行いながら撮影は進められました。
当然ですが、脚本は日本語で書かれていますので、異なる文法を持つ日本手話にそれを翻訳したとき、おかしな表現になっていないか?脚本の意図通りのセリフになっているか?など、一つひとつ丁寧にチェックを行いました。
ー字幕
2024年8月に編集が終わり、字幕制作に取りかかりました。
本作は、全国の映画館で全ての回に国内版字幕がついていますので、いつでもどの回でも、字幕付きでご覧いただけます。
本作の字幕は作品の一部として組み込まれており、聴者・ろう者双方向けに作られています。ですので、字幕あり・なしのバージョン違いはありません。また、バリアフリー字幕という名称ではなく、国内版字幕と表記しています。
既存の作品の多くは、聴者(セリフ、効果・背景・音楽などの音情報)に合わせて、ろう者が受け取れる情報を聴者と均一にすることを目的として、字幕が作られています。
しかし、情報格差を無くすことで同じ内容を理解出来ても、映画として同じ面白さにつながるものではありません。
聴者は表現を見て、ろう者は説明(情報)を読む瞬間があります。そこにどうしても面白さの壁は生まれます。
誤解なきように補足すると、これは字幕の問題ではなく、世の中の多くがあくまで聴者向けに作られている関係で、聴者が作る作品は、どうしても無意識に、聴者が一番面白く観られるように作られているからです。
そこで本作では、聴者とろう者の情報量を均一にするのでなく、バラつきを持たせることにしました。
その一例で、演出として、本編に一部字幕がつかないところがあります。
つまり、映画の中で聴者にしか分からない瞬間があり、ろう者にしか分からない瞬間が存在します。
そして、さらにはクルド人の方にしか分からない瞬間もあるので、部分部分でマジョリティとマイノリティの関係性が入れ替わるような構造の字幕となりました。
もちろん脚本段階から想定して作られています。分からない部分があっても最後まで楽しめるように工夫しておりますのでご安心ください。ー完成
2025年3月、ようやく映画本編が完成いたしました。
上述した通り、本作は全ての映画館で全ての回、ろう者・聴者向けの国内版字幕上映となります。
いつでもどこでも、どなたでも本作を観る環境が整っています。(UDCastによる音声ガイドにも対応しております)
是非、劇場公開まで楽しみにお待ち頂けますと幸いです!—今後のスケジュール
2025年5月 クラウドファンディング開始
2025年8月 クラウドファンディング終了
2025年10月 一部リターン発送&メール配信
2025年11月下旬 東京を皮切りに全国劇場公開開始(ぜひ前売り券を持って、映画館に来てください!)
2026年3月頃 非売品メイキングBlu-ray発送—資金の使い道
映画宣伝費(国内&海外)
・宣材制作費、ポスターやパンフレットのデザイン&印刷
・宣伝活動に関わる交通費などの諸経費
・予告編制作費
・WEBサイト制作費
・広告出稿費
・舞台挨拶やそれに関わる諸経費
・マスコミ向け試写会場費
・国内外の映画祭へのエントリー費
・通訳費(手話通訳・クルド語通訳)—結びに
この長い文章を、最後まで丁寧に読んで頂き、有難うございます。
何度もお伝えしているように、この映画は10年をかけた、CODAの監督による覚悟の一作です。
現在のエンターテインメント作品の中で、ろう表現として最高到達地点であると自負しています。
是非、劇場でご覧になって頂けますと幸いです。
そしてこのクラウドファンディングの趣旨である、全国に届けるための宣伝費を、ぜひご支援ください。
一般的に映画興行は、公開一週間でその後の全国展開や期間の規模が決定します。
つまり、その期間に観客が少ないと、すぐ上映が終わってしまうのです。
是非、皆様には、最初の一週間で映画を観に来て頂きたいと思います。よろしくお願いいたします!—キャスト紹介
古賀夏海 役:長澤樹/プロフィール・コメント
2005年10月24日生まれ、静岡県出身。「破壊の日」豊田利晃監督(20)にて銀幕デビュー。「愛のゆくえ」(24)で第34回日本映画批評家大賞新人女優賞を受賞。近年の映画出演作には「光を追いかけて」成田洋一監督(21)、「ハウ」犬童一心監督(22)、Netflix「ちひろさん」今泉力哉監督(23)、「BISHU〜世界でいちばん優しい服〜」西川達郎監督(24)、「カーリングの神様」本木克英監督(24)などがある。
コメント
初めて脚本を読ませて頂いた時とてもワクワクし、この作品の力になりたい!と強く思ったのを覚えています。このテーマの一つとして「手話」があり夏海は「コーダ」の女の子です。監督からは「手話を覚えるのではなく本物のコーダを目指して欲しい」と言われました。沢山話し合いを重ねた結果、ろう者の那須さんのお宅に3週間程ホームステイすると言う贅沢な時間と環境をつくって頂きました。手話指導の江副さんや通訳の方と街を歩いたり色々な方と交流もしました。その時間があったからこそ「夏海」が完成したと思っています。支えて下さった方々に感謝の気持ちでいっぱいです。初めて出来上がった作品を観たときは何とも言えない感動がありました。なにより面白かった!!笑い声があがったり子供から大人まで楽しそうに作品を観ていて「映画ってやっぱり素敵だな、好きだな。」と嬉しくなりました。監督を始めとした関わってくださった全ての人が強い情熱を持って挑んだ作品です。是非、劇場でご覧ください。
—古賀和彦 役:毛塚和義/プロフィール
毛塚和義 / Kazuyoshi Kezuka
1980年生まれ。千葉県松戸市出身。2006年に世界初のろうプロレス団体「闘聾門(とうろうもん)JAPAN」を立ち上げ、全国、世界を行脚する。2016年には西日暮里に「麺屋 義」をオープンし、2018年にはラーメン女子博2018に出展し、第一部でトップを獲得するなど人気を博し現在に至る。本作で演技挑戦となる。
1967年3月山形生まれ。幼い頃から映画と演劇に興味を持ち、大学時代に青森の劇団、後に日本ろう者劇団で計 15 年間、舞台出演。日本ろう者劇団退団後は一人芝居、二人芝居を中心に全国各地、アメリカ、イギリスで上演。 1995 年、NHK手話ニュースキャスターに抜擢され、NHK Eテレ「手話ニュース 845」で毎週木曜日夜 8 時 45 分~9 時に出演中。 その他、全国各地で講演、一人芝居活動中。 2023 年 12 月 NHK ドラマ「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」に出演。
『手話が愛の扉を開いた』(ノンフィクション 宙出版 1996 年)
『出会いの扉にありがとう』(写真エッセイ 新風社 2006 年)
竹田 役:今井彰人/プロフィール
1990年12月26日、群馬県出身。2009年日本ろう者劇団へ入団。米内山氏の指導の元、舞台「エレファントマン」(10)初主演で俳優デビュー。牧原依里・雫境共同監督『LISTENリッスン』(16)、KAAT短編映像『夢の男』(22)主演、宮崎大祐監督『MY LIFE IN THE BUSH OF GHOSTS』(24)、日比野克彦総合監修 牧原依里構成・演出「黙るな 動け 呼吸しろ」(25)出演。
沖田 役:板橋駿谷/プロフィール
1984年7月1日生まれ、福島県出身。舞台、映像を中心に活動。映画「マイスモールランド」、「異動辞令は音 楽隊!」、「笑いのカイブツ」、「花まんま」ドラマ 「ケの日のケケケ」、「警視庁麻薬取締課MOGURA」などに出演。また、舞台「オイディプスREXXX」 ではラップの作詞・指導で第26回読売演劇大 賞優秀スタッフ賞を受賞。
山際 役:小野花梨/プロフィール
2006年にドラマ『嫌われ松子の一生』でデビュー。23年公開の映画『ハケンアニメ!』で第46回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。W主演を務めた『初恋、ざらり』(TX)は第50回放送文化基金賞ドラマ部門優秀賞を受賞した。近年の主な出演作に映画『プリテンダーズ』(21)、『52ヘルツのクジラたち』(24)『ミッシング』(24)ドラマ『透明なわたしたち』(24 ABEMA)、「スノードロップの初恋」(24 KTV)、「私の知らない私」(25 NTV)、大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺』が放送中。
ルファト役:Murat Çiçek
—その他スタッフ紹介
手話指導:江副悟史/プロフィール
日本ろう者劇団代表。手話狂言やろう者によるコメディ劇団「男組」メンバーとしても活躍。2010年3月までNHK『こども手話ウイークリー』のキャスターを務める。映画『獄に咲く花』で杉敏三郎役を演じる。3.11震災後にネット手話ニュース『DNN』を立ち上げる。2017年より日本ろう者劇団の劇団代表を務める傍ら俳優、講演、手話表現者(国際手話など)、手話弁士、キャスターなど幅広く活動中。
ろう俳優コーディネート:廣川麻子/プロフィール
NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク理事長。1994年より日本ろう者劇団にて俳優・制作として活動。2018年より東京大学先端科学技術研究センター当事者研究分野にてユーザーリサーチャー/特任研究員として文化芸術におけるアクセシビリティ社会実装の研究を行う。一般社団法人日本ろう芸術協会 理事。全日本ろうあ連盟教育文化担当委員。
<募集方式について>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。