株式会社バイオフィリア(本社:東京都新宿区、代表:岩橋洸太、以下:当社)は、どうぶつ健康科学研究所所長 獣医師・獣医学博士 小沼守先生と共同で、皮膚症状のある犬における、スキンケア用手作り食(以下、手作り食)の機能性について共同研究を行いました。その結果、食物アレルギーを含めた皮膚症状のある犬において、原料の関係で状態を改善させる可能性が示唆されました。
■共同研究の背景
皮膚疾患は外的・内的刺激による病的反応であり、欧米の動物医療機関では小動物の皮膚病診療が全症例の20~75%を占めると報告され(※1)、日本でも同様に診療数の多い疾患です(※2)。犬の皮膚疾患を改善する大きな要因が食事構成にあることも示唆されており(※3)、総合栄養食ドッグフードや療法食を使用することが一般的ですが、食物アレルギーや嗜好性の問題から手作り食も選択肢の一つになっています。
栄養学的管理として、低アレルギー食、必須脂肪酸の適切な構成バランス、プロバイオティクスで良好な腸内環境を形成することで、免疫機能の維持や抗アレルギー効果を発揮します。(※4)
そこで今回、良質な原材料と殺菌乳酸菌を添加した手作り食の有用性について、当社と各研究機関の研究者が共同で研究を行いました。
※1 Scott, D.W., Miller, W.H., Griffin, C.E.: Diagnostic Methods. In: Muller & Kirk's Small Animal Dermatology (Miller, W.H., Griffin, C.E., Campbell, K.L., eds.), 7th ed., pp. 57-107, WB Saunders, 2012.
※2 Scott, D.W., Paradis, M.: A survey of canine and feline skin disorders seen in a university practice: Small Animal Clinic, University of Montreal, Saint-Hyacinthe, Quebec (1987-1988). Can. Vet. J., 1990;31(12):830-835.
※3 百田豊:皮膚病と栄養 皮膚病に関わるアレルギーと肥満細胞の機から見た皮膚病食。ペット栄養学会誌、2014:17(1):26-33.
※4 大森啓太郎:アレルギー性疾患。ぺット栄養学会誌,2022:25(1):33-36.
■研究概要・結果
一般家庭で生活している皮膚症状のある犬3頭を対象に、犬のスキンケア用手作り食の給与試験を4週間実施しました。手作り食の主な原材料は、鹿肉、豚肉、サツマイモ、カボチャ、ニンジン、舞茸、ビーツ、ケール、真鯛オイル、ウコン粉末、寒天、ごま、フィッシュオイル、昆布、殺菌乳酸菌/ビタミン類、ミネラル類です。結果、3例中2例で、痒みまたは皮膚症状の改善が認められ(図1~4)、さらに腸内細菌叢において有用菌である3種の酪酸産生菌が増加し、非有用菌で炎症を促進するBacteroidaceae属が減少しました(図5)。α多様性は、症例1および3について高まりました。以上より、症例数は少ないものの、食物アレルギーを含めた皮膚症状のある犬において、原料の関係で状態を改善させる可能性が示唆されました。
1991 日本大学 農獣医学部 獣医学科卒
1995 おぬま動物病院開業 院長
2011 日本大学大学院 獣医学専攻卒
2012 大相模動物クリニック開業(移転・改名)院長(現 名誉院長)
2017 千葉科学大学 危機管理学部 動物危機管理学科 教授(現 特担教授)
2020 どうぶつ健康科学研究所設立(旧 どうぶつ医学教育研究支援センター)所長
2023 日本サプリメント協会 ペット栄養部会長、日本ペット栄養学会 動物用サプリメント研究推進委員会委員
今回、皮膚に問題のある犬に皮膚ケアの手作り食を試してもらったところ、腸内細菌叢の変化によると考えられる皮膚症状の一定の改善が確認され、飼い主様にも喜ばれました。このように、腸内環境を変化させる適切な原料を用いた食事は、食物有害反応の関与する皮膚病と密接な関係があります。手作り食が愛犬と飼い主様の毎日の喜びや幸せにつながることを願っています。