再資源化困難だったFRPを塗り壁材へ LIXILが目指すマテリアルリサイクルの未来

2025.03.18 15:00
株式会社LIXIL
優れた防水性と耐久性を持ち、浴槽などの素材として広く使われているFRP(繊維強化プラスチック)。その便利さの反面、樹脂にガラス繊維などを組み合わせた複合素材のためリサイクルが難しく、その多くが埋め立てや焼却処分されているのが現状です。FRPのマテリアルサイクルの可能性を探ってきたLIXILはこのたび、FRPを塗り壁材にリサイクルする新技術の開発に成功しました。開発した塗り壁材は、4月17日にLIXILの文化施設INAXライブミュージアム内にオープンする「トイレの文化館」の壁として生まれ変わることに。今回の技術が誕生するまでの過程や、新素材の工芸的な価値について、左官職人の久住有生氏とLIXIL 環境技術開発部 中瀬敬仁に伺います。
(写真左から)左官職人 久住有生氏、LIXIL 環境技術開発部 中瀬敬仁

長らく業界の課題だったFRPの再資源化

――LIXILとしてFRPの再資源化にこだわった理由を教えてください。

中瀬:LIXILは環境配慮技術の開発に注力をしています。金属や汎用的なプラスチックはリサイクルの手法が確立されていますが、FRPはリサイクルの処理が難しくチャレンジする価値のあるテーマだと考え、社として力を入れています。私の所属する環境技術開発部では、FRPの再資源化をはじめとするいろいろな環境技術を研究しています。
――FRPのマテリアルサイクルにより、どのような課題が解決されるのでしょうか?

中瀬:現状、使用済みとなったFRP製の浴槽は大半が埋め立てや焼却処分されており、一部がセメントの原料としてリサイクルされています。今回我々が開発した手法は、樹脂を高温で炭化させて塗り壁材にリサイクルするので、CO2の排出を大幅に抑え、資源として有効活用することができます。

――今回のリサイクルの手順について教えてください。

中瀬:今回の原料は当社の工場から出た成形不良のFRP製浴槽を使用しています。それらを40センチぐらいの大きさに切断して破砕機に入れ、細かい破片にします。その破片を700度で炭化した後、粉末状に砕いて塗り壁材の原料の一部として再利用しています。

――FRPのリサイクルを実現するにあたって、苦労した点があれば教えてください。

中瀬:FRPは耐熱性が高いので、焼いて炭化させる工程には苦労しました。初めのうちは炭にならず生焼けのまま出てきてしまうなど上手くいきませんでした。温度や時間、酸素濃度などの条件を細かく処理したところ、炭化することができました。

――FRPのリサイクルについては、業界の中でも大きな課題となっているのでしょうか?

中瀬:世界的にも問題視されていて、ドイツなどではFRPの埋め立て処分が禁止されています。リサイクルとしてはセメントの原料にする方法が主流ですが、FRPの素材の2割ほどは燃えてしまいCO2が発生します。我々の手法であればCO2の発生を最小限に抑え、塗り壁材などの素材として再利用することができます。

自然の美しさを壁の造形に取り込む

――今回、左官職人の久住さんに仕事を依頼した経緯を教えてください。

中瀬:FRPを炭化させ粉末にすることに成功したまではよかったのですが、明確な用途が見つからずに困っていました。成分を調べるとしっくい壁の組成に似ていることがわかり使えるかもしれないと思いましたが、自社製品にはないことから知見も少なく困っていました。そんな中、私の拠点からも近いINAXライブミュージアムの「土・どろんこ館」のことを思い出し相談に向かったところ、久住さんを紹介してもらい、計画中だった「トイレの文化館」に施工してもらうことで話がまとまりました。
――では久住さんに伺います。今回、FRPを塗り壁材にマテリアルリサイクルした取り組みについて、左官職人としての感想を教えてください。

久住:僕らのものづくりの仕事は基本的にゴミを出すので、できればゴミを出さずに、長持ちする作品をつくりたいという想いがあります。FRPは強度があって防水性も高く長持ちする工業製品ですが、リサイクルが難しい素材でもあります。いろいろな現場に入る中で、廃棄に苦労している業者さんを見てきましたし、僕らも型取りでFRPを使うことがあります。焼却や埋めることでしか処分できないFRPを大量に生産して、その後はどうするのか不安に感じる気持ちもあったので、今回のLIXILさんの取り組みには可能性を感じます。

僕らは普段、塗り壁材として漆喰を使っています。漆喰は消石灰と麻の繊維と海藻のりが主原料で、リサイクルしやすいものです。今回のFRPのリサイクルにより、漆喰に代わる新しい塗り壁材ができるかもしれないと期待しています。
中瀬:我々が炭化した黒い粉末を久住さんに提供したところ、数十種類の塗り壁材サンプルをつくっていただきました。真っ白なプレーンなものから茶系のもの、つぶつぶのある質感のものなど、あの黒い粉からよくこれだけのバリエーションを出せるものだと驚きました。

――FRPをリサイクルした塗り壁材には、デザイン面でどのようなメリットがありますか?

久住:漆喰はもともと真っ白なので、色付けするときに炭や黒い顔料を入れますが、強度が落ちるというデメリットがあります。また、紫外線や雨の影響を数十年という長期間受けることで、分離して白く戻ってしまいます。今回の塗り壁材は何も混ぜることなく乾燥すると濃いグレーになるので、強度を落とさずに新しい壁のデザインに活かせるかと思います。

――久住さんは具体的に「トイレの文化館」のどの壁面に携わっているのでしょうか?また、施工にあたりこだわった点を教えてください。

久住:トイレの文化館は1階がRC(鉄筋コンクリート)で、2階が木造の建物ですが、1階から2階に上がる階段の吹き抜けの壁の仕上げを担当しています。1枚の大きな壁なので事前に下地をつくり、材料の調合などをして作業自体は1日で仕上げます。壁を塗る動作で表情をつけたいので、その動作を中断することなく上から下まで一気に完成させます。

僕は普段から、自然素材を用いて自然界の美しさを壁の造形に取り入れたいと考えています。人間が自然を美しいと感じるのは地球を守るための本能だと思いますし、その美しさを壁に残すべく作品づくりに励んでいます。
廃棄されるだけのゴミを価値のある資源に

――久住さんとLIXILの最初の接点を教えてください。

久住:今から20年ほど前になりますが、INAXライブミュージアムから依頼をいただき、「土・どろんこ館」の壁を手がけたのが最初です。そこからの長いお付き合いで、僕らとしては新しいことにチャレンジさせてもらいながら、LIXILさんからはタイルや陶器についていろいろなことを教えていただきました。その後、同じライブミュージアムの「建築陶器のはじまり館」にも携わり、ミュージアムのグランドオープン10周年記念で開催されたガウディの特別展にも参加しています。以前、館長を務めていた辻孝二郎さんのもとで、本当にのびのびと自由に仕事ができたので、僕らにとってはすごく思い入れのある企業です。

――久住さんがLIXILに期待することを教えてください。

久住:僕はこれまで学校や病院、老人ホームなどの壁を手がけてきましたが、最初は自然素材の壁を提案しても大抵は「前例がないから駄目」という判断を下されます。学校などはその傾向が強く、土壁をつくることが決まっても建設会社から反対されたり、「土壁はボロボロ剥がれる」「子どもが触ったら危ないのではないか?」といった声が届いたりします。彼らが望むのはツルツルした素材で壊れにくく、簡単に替えが効く素材です。でも、僕としては子どものうちから「人間は自然の一部」だと感じることが大事だと思うので、特に都市部ではそういったチャレンジを続けて、自然素材の良さを自分なりに伝えてきたつもりです。
INAXライブミュージアムにはフランク・ロイド・ライトが設計した帝国ホテル旧本館の柱や、世界各地の装飾タイルなど、国内外の優れた工業製品が展示されています。僕も職人として古い文化財を修復しながら次の世代に引き継いでいくことを目指しているので、LIXILさんには長く愛されて、後世まで残るような製品を生み出していってほしいと考えています。

――では最後に、FRPのマテリアルリサイクルにおける今後の展望を教えてください。

中瀬:現在、弊社の工場から出るFRPの廃材については、ほぼ埋め立てをすることなく、100%に近いリサイクル率を実現しています。さらにサーマルリサイクルを減らして再資源化率を高めるために、廃棄された電線の被覆材である塩化ビニールとFRP廃材の破片を混ぜて、太陽光パネルの下の防草シートにマテリアルリサイクルする取り組みも進めています。しかし、製品として出荷され廃棄されたFRPの大半は埋め立てられています。FRPの浴槽には金属が埋め込まれていたり、異素材と結合していたりするものも多く、リサイクルには膨大なコストがかかるので、製品化は難しいのが現状です。

FRPは軽くて強度に優れた素材ではありますが、どうしても最終処分が難しいという問題を抱えています。埋め立て処分されるFRPをいかに減らして、価値のある資源に変えていくか。FRPに代わる新素材の開発も含め、さまざまな試行錯誤を続けていきます。

LIXILでは、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」というパーパス(存在意義)の達成に向け、常に新しいことにチャレンジしています。これまでの枠にとらわれない斬新な発想、そしてさまざまなバックグラウンドを持つ従業員の多様な視点や協業者とのコラボレーションから生まれる新たな価値-このようなことを大切にし、イノベーションを創発していくことで暮らしの未来を創造していきます。
LIXILは今後も、私たちの行動指針LIXIL Behaviorsの一つにある「実験し、学ぶ」企業文化を醸成し、“やってみよう”と仲間が背中を押してくれる環境を整えてまいります。
About LIXIL
LIXILは、世界中の誰もが願う豊かで快適な住まいを実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。ものづくりの伝統を礎に、INAX、GROHE、American Standard、TOSTEMをはじめとする数々の製品ブランドを通して、世界をリードする技術やイノベーションで、人びとのより良い暮らしに貢献しています。現在約53,000人の従業員を擁し、世界150カ国以上で事業を展開するLIXILは、生活者の視点に立った製品を提供することで、毎日世界で10億人以上の人びとの暮らしを支えています。
株式会社LIXIL(証券コード: 5938)は、2024年3月期に1兆4,832億円の連結売上高を計上しています。
LIXILグローバルサイト:

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