76年の歴史に根づく情熱 アディダス革新シューズ誕生の裏側

2025.03.27 12:51
1920年、2人の兄弟がドイツの小さな町で創業した「ダスラー兄弟商会」は、やがて世界的なスポーツブランド「アディダス」へと成長した。近年、ゴルフシューズにおいても最新テクノロジーを取り入れた「TOUR360」や「コードカオス」をヒットさせてきた同社は、今年2月に『Adizero ZG 25』を発売。これらの革新的モデルはどのように誕生したのか。ドイツのアディダス本社で行われたプレスツアーに参加し、一足に懸けるブランドの情熱を取材した。これぞ理想の職場? 広大な敷地に充実の設備
東京・羽田空港からドイツ・ミュンヘン空港まで飛行機で約15時間。そこから車に乗り換え、“アウトバーン”と呼ばれる速度制限のない道路を北へひた走ること200km、アディダスが本社を構えるヘルツォーゲンアウラハに到着した。
約60万平米(東京ドーム約13個分)の広大な敷地には、3つの大きな建物がある。サッカースタジアムをイメージして作られ、本社機能が集まる「ARENA(アリーナ)」、カフェテリアやアーカイブの展示、ミーティングルームのある「HALFTIME(ハーフタイム)」、そしてプロダクトの開発が行われる「LACES(レーシーズ)」。それぞれがまるで科学博物館のような近未来的な建物に圧倒された。
敷地(=キャンパスと呼ばれている)内にはジムやプール、テニスコート、サッカーコートに加えて宿泊施設まで完備されている。広大なキャンパスの移動には、自転車が欠かせない。ここでは街の人口の実に3分の1にあたる約6,000人が働いている。
これほどまで施設の充実に注力するのには、「If you want a job done well, you must create the right conditions for it.(社員が最高のパフォーマンスを発揮するには、環境を整えることが重要である)」という、創業者アディ・ダスラーの理念があった。アディダス社のモノづくりの礎
1足のシューズの開発から製品化に至るまでには約20カ月を要するという。まず、3カ月かけて市場のトレンドや消費者のニーズを調査し、デザインや搭載するテクノロジー、ターゲット、発売日などの方向性を決定。それらをプロダクトブリーフにまとめる。その後、デザインチームがコンセプトスケッチを作成し、2~3カ月かけてレビューを重ね最終的なデザインを決定する。
デザインが固まったら1回目の試作品(CR1)を製作、技術・マーケティングチームを含めたプロダクトメンバー、アスリートからのフィードバックを受ける。ここで得た意見をもとに改良を加え、2回目の試作品(CR2)製作に進む。CR2では、より細かいデザインや性能の調整が行われ、最終版に近いサンプルへと仕上げる流れだ。
現在では、高速プロトタイプツールや3Dデザインレンダリングツールの発展により、製品開発の初期段階で素早く試作品を製作できるようになった。しかし、1950年代から80年代初期にかけては、全く異なる手法で試作品が作られていた。当時、第1試作品を製作するには、職人がすべて手作業で手のひらに収まるミニチュアサイズ(10cm未満)のシューズを作り、デザインチェックを受けてようやく現物サイズの第2試作品が作られていたという。
当時の職人たちは、わずか数cmの試作品の細部まで徹底的にこだわり、手作業だからできる緻密な調整を重ねて理想のシルエットを追求した。こうした職人一人ひとりの卓越した技術こそが靴づくりの礎となり、アスリートや消費者との信頼を築いてきたといえるだろう。時代とともに製造技術は進化し、現在ではこの手法は使われていないものの、モノづくりへの情熱とクラフトマンシップは、今もなお受け継がれている。
発売前には、デザイン・素材・製造・品質の最終チェックを実施する。さらに、マーケティングに向けたストーリーや市場投入戦略の確認をグローバル全体で行う。このプロセスにより、プロモーションの方向性が国ごとに異なることなく、製品の魅力を一貫して消費者に届けている。「Adizero ZG 25」誕生の裏側
Adizeroは、2005年にシューズ・クリエイターの大森敏明氏の協力により「日本人を速くする」ことを目的に、日本で開発されたランニングシリーズだ。「無駄をそぎ落とし、極限まで軽量化する」というコンセプトのもと、「adidas」+「zero」を組み合わせて「Adizero」という名前が誕生した。
2024年に開催されたマラソン競技では、Adizeroシリーズのシューズを履いたランナーが7つの世界記録を更新した。幅広いスポーツをカバーするブランドだからこそ、ある競技で評価を得たテクノロジーを他のスポーツへ応用できるというのが大きな強み。この成功を受け、このテクノロジーをゴルフに応用すれば、18ホール疲れを感じることなく、ベストなプレーが期待できるのではないかという発想から、「Adizero ZG 25」の開発がスタートした。
ランニングシューズは足への衝撃を減らし、跳躍力をサポートするために厚底構造を採用している。一方で、グリップ力を求められるゴルフシューズは、薄底でなければならない。そこで、ゴルフシューズの性能をアップデートさせ、“足が自然と前に進むような感覚を生み出すシューズ”を作りたかったという。
開発には大きなチャレンジは不可欠だ。なかでもスパイクレスでありながら、スパイクシューズ並みのグリップ力を持たせることに苦戦した。歩行時とスイング時で自動的に性能が切り替わるスパイクモア(鋲)の素材や配置を改良。加えて、軽量で柔軟性のあるアンダーカットブレードのラグ(突起)をアウトソールの周囲に配置することで、スムーズな歩行と鋭いグリップ力、安定性のすべてを実現した。
創業当初から一貫して、試作品段階でテストを繰り返し、アスリートの細かなこだわりに応えることを最優先としてきたのは前述の通り。アディダスゴルフ・フットウェアディレクターのメイソン・デニソン氏は「彼らは履き心地や着心地、機能に非常に敏感なため、ゴルフに支障をきたすことない快適さが求められる。私たちはその期待に応えるため、常に選手と共に進化し続けている」と話した。
契約選手であり、米国女子ツアーで活躍するリン・グラントは、忖度ない評価でプロダクト製作を支える一人だ。前作の履き心地は高く評価していたものの、スパイクレスシューズのデメリットとして挙げられるスイング時のスリップを懸念していた。だが「『Adizero ZG 25』を実際に履いてみると、グリップ力が向上し、すごく快適になった」と不安は払しょくされ、今季から着用することを決めた。
テクノロジーの進化ばかりに関心が向けられる昨今、アディダスの革新的シューズはこうしたアスリートと二人三脚で検証していくプロセスと、創業から76年経った今も継承されるモノづくりへの情熱が根づいている。
お問い合わせ先
アディダスゴルフ https://shop.adidas.jp/golf/STAFFスタッフ
Photo
adidas
Text
Marina Nakada

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