心ぬくぬく…涙が出るほどあたたかい！「ごんぎつね」「おじいさんのランプ」と並ぶ名作 新美南吉の「花のき村と盗人たち」を声優・羽佐間道夫が朗読！

2025.02.28 up提供：ラジオ日本

ラジオ日本『わたしの図書室』では2月27日（木）と3月6日（木）の2週にわたり、童話作家・新美南吉の「花のき村と盗人たち」を紹介する。登場する5人の盗人に加え、老いた村役人、謎の少年まで、声優の羽佐間道夫がひとりで演じて大奮闘。笑って泣いての物語。必聴！

「こんな村にはお金やいい着物を持った家があるに違いない！」
若竹が初々しい芽を伸ばし始めるころ、平和でのどかな花のき村に5人の盗人がやってくる。しかし、ちょっと前までごくふつうの職人だった盗人たちは、つい元の商売のクセが出て、盗人としてはぜんぜん役立たず。釜師だった男は、うっかり壊れた鍋を直してやろうと預かってくる。錠前屋だった男は、家や倉の錠前がゆるんでいるのが気になるばかりで、何も盗んでこない。越後から来た角兵衛獅子は、トンボ返りを披露して村人を喜ばせてしまう。大工のせがれは、下見に入った家の天井板の見事さに目を奪われただけ。唯一プロの盗人である親方は嘆いた。
「盗人のかしらというものも、案外、楽な商売ではないて…」。
そんなとき、小さい草鞋を履いたひとりの少年が、牛の子を連れてやってきた。
「おじさん、この牛、持っていてね」。
なにもしないうちに牛の子を盗んだも同然。赤い手綱を握って親方は笑い出す。しかし、その笑いはなぜかしだいに涙に変わっていくのだった……。

　「ごんぎつね」「おじいさんのランプ」などで知られる童話作家の新美南吉は、1913年（大正2年）に愛知県半田市で生まれた。幼いころ母を亡くし、母方の実家に預けられたり、親戚と養子縁組をさせられたりと、複雑な家庭環境で育つ。中学のころから童謡や童話などを書き始め、18歳の時には、自分の書いたものを児童雑誌「赤い鳥」に初めて投稿。そのころ、童謡「たきび」の作詞者として知られる童話作家の巽聖歌と出会う。巽は、南吉の作品を高く評価し、世に送り出すために力になったばかりでなく、南吉が亡くなったあとも作品を出版することに尽力する。

　新美南吉は昭和7年、故郷を出て、東京外国語学校（現在の東京外国語大学）の英語部文科に入学。東京では、北原白秋、与田準一など詩人や童話作家と交流を重ねながら、活気に満ちた生活を送った。この年、ふるさとののどかな自然を舞台にした「ごんぎつね」を発表。「ごんぎつね」は昭和31年から現在に至るまで、小学校の国語の教科書に掲載されて、多くの人の心に残る作品となっている。

　昭和18年、南吉は29歳の若さで結核で亡くなるが、その直前まで創作意欲は衰えず、「おじいさんのランプ」「牛をつないだ椿の木」「和太郎さんと牛」、そして「花のき村と盗人たち」などの名作を次々に書き上げた。
わたしの図書室放送局：ラジオ日本放送日時：毎週木曜 23時30分～24時00分出演者：羽佐間道夫

羽佐間　道夫
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