窓口の向こう側には絶望が広がっていた……。ルポ『ブラック郵便局』(宮崎拓朗著・2月17日発売)の「はじめに」を特別公開

2025.02.10 11:00
株式会社新潮社
関係者 1000 人以上の「叫び」を基に歪んだ巨大組織の実態に迫る驚愕のルポルタージュ。

配達員によって捨てられた大量の郵便物。手段を選ばない保険営業や相次ぐ横領や詐欺――2007年の民営化以来17年、2万4000局、職員30万人超の巨大組織で何が起きていたのでしょうか。調査報道大賞など数々の賞で顕彰された西日本新聞記者が、6年以上をかけて取材した『ブラック郵便局』を2月17日、新潮社より刊行いたします。
わたしたちの日常に密接にかかわる郵便局。あちこちで目にする郵便ポストや町を走り回る郵便配達員、局内に入れば貯金や保険の窓口が利用者を出迎えてくれます。その窓口の向こうで何が起こっていたか、ご存じでしょうか。「もう限界です」。著者の取材に、多くの郵便局員が実態を訴えます。たとえば過剰なノルマ。「今までに、年賀はがきの自爆営業で総額100万円ぐらいは身銭を切ってきた」と語る局員もいました。あるいは上層部による深刻なパワハラ、そして追い詰められた局員の自死も――。わたしたちの目に映る日常の光景を一変させる衝撃の調査報道です。

■「はじめに」を無料で大公開!
発売にさきがけ、本書「はじめに」を公開いたします。ぜひご一読ください。
1本の記事が、私をその“歪み”の奥へと導いた。
2018年夏、社会部の記者だった私は、郵便局員たちがはがきの販売に過剰なノルマを課され、自腹で購入している実態について記事にした。
それからというもの、西日本新聞には、発行エリアの九州にとどまらず、全国からメールや投書が届くようになった。大半が、日本郵政グループで働く社員からの内部告発だ。
「不正な保険営業が行われています。許されることではありませんが、日々の叱責、人格否定等のパワハラに屈して不正をした社員がいるのも事実です。たくさんの同僚が病気になり、退職していきました」
「私も出勤するのが怖く、電車に飛び込みたくなるときがあります」
「現役の郵便局長です。局長は票の獲得にノルマを課されており、業務そっちのけで選挙運動をさせられています」
「内部通報しても、会社ぐるみでもみ消されます」
私は時間の許す限り、一つ一つに返事を出していった。多いときには、同時に100人ほどとのやりとりに追われた。
福岡市にある編集局フロアで朝からパソコンに向かい、情報提供者たちに「詳しい事情を教えてください」とメールを送る。びっしりと書き込まれた返信が届く。それに対してまた質問を投げかける。そんなやりとりを繰り返していると、あっという間に夜が更けていった。
■目次
第一章 高齢者を喰い物に
第二章 “自爆”を強いられる局員たち
第三章 局長会という闇
第四章 内部通報者は脅された
第五章 選挙に溶けた8億円
第六章 沈黙だけが残った

■書籍内容
街中を駆け回る配達員、高齢者の話に耳を傾け寄り添うかんぽの営業マン……。市民のために働いてきた局員とその家族が、疲弊しきっている。異常すぎるノルマ、手段を選ばない保険勧誘、部下を追い詰める幹部たち。そして、既得権保持を狙う政治との癒着――。窓口の向こう側に広がる絶望に光を当てる執念の調査報道。

■著者紹介
宮崎拓朗(みやざき・たくろう)
1980年生まれ。福岡県福岡市出身。京都大学総合人間学部卒。西日本新聞社北九州本社編集部デスク。2005年、西日本新聞社入社。長崎総局、社会部、東京支社報道部を経て、2018年に社会部遊軍に配属され日本郵政グループを巡る取材、報道を始める。「かんぽ生命不正販売問題を巡るキャンペーン報道」で第20回早稲田ジャーナリズム大賞、「全国郵便局長会による会社経費政治流用のスクープと関連報道」で第3回ジャーナリズムXアワードのZ賞、第3回調査報道大賞の優秀賞を受賞。

■書籍データ
【タイトル】ブラック郵便局
【著者名】宮崎拓朗
【発売日】2025年2月17日
【造本】四六判
【定価】1,760円(税込)
【ISBN】978-4-10-356151-4
【URL】

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