目指したのは「ありのままの音」… 。完全ワイヤレスイヤホン テクニクス「AZ100」開発ストーリー

2025.01.08 10:00
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テクニクス 完全ワイヤレスイヤホンの新フラグシップモデル「EAH-AZ100」。
音楽が持つ本来の感動、演奏家が作り上げた”ありのままの音”を届けるために、新たに磁性流体ドライバーを採用した「音質」と、その音質を届けるための「装着性」の両立を目指した。開発メンバーが新製品に込めた熱い思いを語る。


スマートフォン時代に欠かせないアイテムとなりつつある完全ワイヤレスイヤホン。
そんな中、イヤホンの心臓部「ドライバーユニット」に10ミリ大口径のアルミニウム振動板を採用し、完全ワイヤレスイヤホンの新たな可能性を切り開いた「EAH-AZ80」。


音響担当 田中悠(以下・田中):AZ80の時も、必ず前作を超える音でなくてはならないという決意で開発に臨み、苦労してきたものをさらにAZ100で超えるというチャレンジはまた非常に困難な道のりでした。


装着性担当 竹重亮汰(以下・竹重):完全ワイヤレスイヤホンでは、音質、装着性、そしてノイズキャンセリング。この3つの柱が重要視される要素になっています。一設計者として、特に音質は「テクニクス」というブランドを背負うことに対して一番譲れないポイントだということを意識しながら開発しています。


目指したゴールは、妥協なきテクニクスの音。たどり着いたのは「原点」。


田中:テクニクスのイヤホンの音の原点には、有線イヤホンの「TZ700」があります。私が入社1年目の時に、ちょうどTZ700が発売され。初めて聴いた時に「なんだこの音は」と、言葉にならない感情になった。この時の衝撃、感動をもう一度味わいたいと思うし、たくさんの人にも味わっていただきたいという想いが入社以来ありました。そして、それを有線イヤホンではなくて、ワイヤレスイヤホンで実現することができたらという想いから今回の開発に踏み切りました。


その想いが、開発チームに一つの決断をさせる。
TZ700に採用されている「磁性流体ドライバー」を、完全ワイヤレスイヤホンとして業界初(*)搭載──。
磁性流体とは、磁石に引き寄せられる液体。AZ100では、この磁性流体がドライバー内のボイスコイルというパーツの内側へ隙間なく充填されている。
…しかし、誰もやったことがない、それ相応の理由があった。


田中:TZ700のドライバーをそのまま今回のAZ100に載せればよかった…そういう単純な話ではありませんでした。このコンパクトな筐体の中には、ドライバーだけでなく、これまで培ってきた音響機構に加え、ワイヤレスイヤホンとして欠かせない基板やマイク、電池など、たくさんのパーツがこの中に収められています。それら全てをこの小さい筐体の中に収めきるには、磁性流体ドライバーの性能を決して落とさずに小型化設計することが、この開発のゴールとなりました。


完全ワイヤレスイヤホン業界初(*)の「磁性流体ドライバー」でもたらされるメリットとは?


田中:一般的なドライバーは、振動板の外周にある「エッジ」という部分のみで、振動板が支えられています。一方、磁性流体ドライバーは、ボイスコイルとマグネットの間に磁性流体というものを充填しています。それによって、エッジのみで支えていた振動板を、エッジとボイスコイルの2点で支えることができるようになります。
一般的なドライバーには、ボイスコイルの部分にわずかな空間があり、振動する際に微小にブレが生じる状態が起きてしまい、これが音としては歪みとなってしまいます。
一方、磁性流体ドライバーはボイスコイルとマグネットの間に磁性流体が入っているので、ボイスコイルの左右のブレというものがなくなり、上下方向のピストン運動を正確に行うことができます。その結果、超低歪みで、忠実な音楽再生が可能になります。


磁性流体ドライバーによって、これまで以上に正確でクリアな音を実現。
しかし、ユーザーの耳に届くまでにはもう一つの課題が。


竹重:完全ワイヤレスイヤホン全てに共通するのですが、装着性と音質は密接に関わり合っていて。良い音が鳴る筐体を作ったとしても、正しい向きでしっかりと装着していただかないと、良い音を届けることができなくなってしまいます。そこで私たちは、装着性向上のために「コンチャフィット形状」をブラッシュアップしました。


「コンチャフィット形状」大幅リニューアル&専用イヤーピースを新開発。


前作・AZ80で採用された、耳の中のくぼみ「コンチャ」にフィットする特殊なイヤホン形状。
AZ100では、この設計をベースに耳との接触パーツが大きくなっていた部分を再分析。


竹重:色々な人の耳にモックを装着してもらい、微少にいろいろな試作を繰り返しながら、評価を聞きました。結果的にこの耳に入っている部分の体積は約30%減、全体の体積は約10%減らし、本体の質量としても約16%ほど削減することで、より快適な装着感の向上に貢献しました。


最高の音を、最高の使用感でユーザーに届けたい。
そのために、ノイズキャンセリングに用いるフィードバックマイクの改善にも取り組み、さらに。


竹重:新しいイヤーピースの設計に着手しました。音質観点だと、耳に着けた時になるべくこのゴムが変形しないように硬いゴムを使ってほしいという要望がある一方で、装着性の目線ですと、なるべく柔らかくて耳が疲れないゴムを要求される。このようにシーソーみたいな要求がたくさんあり、かなり繊細な部品になっております。
最終的に、従来2種類で構成していたゴムを3種類に変え、今回のこの条件を達成するに至っています。どこから違うゴムの硬度に変えるかという部分も試作を重ね、忙しい時期には本当に何10個、何100個……は言いすぎかもしれないですけれども、全部、田中さんに聞いてもらったので、一時期、田中さんにかなり負荷がかかって、耳がおかしくなってしまわないか、ちょっと心配になりながら今のゴールにたどり着きました。


開発チームを突き動かしたのは、生音質への飽くなき探究心。


田中:磁性流体ドライバーをワイヤレスイヤホンに入れるという構想から丸1年。思い描いた音が試作品から聞こえてきた時、あの時の感動と達成感というものは、本当に今まで味わったことのないものがありました。
テクニクスの音の考え方の原点として「演奏家が作り上げたありのままをお届けする」というものがあります。音を聴いて人が感動する時というのは、きれいでバランスが取れた音が聞こえた時ではなくて、演奏家があたかもそこで弾いているかのような音、その演奏家の想いまでもが伝わってきた時だと思っています。その思いのところまで、この製品から、この製品が鳴らす音から感じていただけると非常に嬉しく思います。


竹重:小型化で装着性が向上しているので、そのあたりを感じ取っていただけると嬉しいです。個人的には、様々なジャンルの曲を聴いてもかなりワクワクできる仕上がりになっていると思います。有線イヤホンとはまた違った、ワイヤレスイヤホンならではの良さを感じていただければと思います。


2025年、妥協なき音づくりとユーザーの使いやすさにこだわり抜いたテクニクスAZ100が、完全ワイヤレスイヤホンを新たなステージに押し上げる。


(*)完全ワイヤレスイヤホンにおいて、​初めて磁性流体を用いたドライバーを搭載。​当社調べ。2025年1月23日発売予定。

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