株式会社ワコール(本社:京都府京都市、代表取締役社長執行役員:川西啓介)が展開するフェムケアブランド「YOJOY(ヨジョイ)」は、2024年10月に1周年を迎えました。養生の考え方をベースに、女性のセルフケアをサポートするブランドとして、今の自分のからだとこころの状態がわかるデジタルコンテンツや、月経周期の揺らぎに寄り添ったアンダーウェア、そして株式会社ナリス化粧品(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:村岡弘義)と共同開発したデリケートゾーンにも使用できるボディケアアイテムを展開しています。10月17日には[薬用ホワイトニングクリーム]が登場し、デリケートゾーンのスペシャルケアができるようになりました。
1周年を記念し、ともにボディケアアイテムを開発した、ワコール商品本部のファーセット真弓さん、ナリス化粧品OEM事業部の安部真利子さんにインタビュー。下着領域を中心に展開してきたワコールがフェムケアに挑戦した理由やナリス化粧品と協業した経緯など、女性たちの想いから生まれた「YOJOY」のストーリーをお伝えします。
「フェムケアの領域で何かをやりたい」その想いを持ったメンバーでスタートした。
― ワコールのフェムケアブランド「YOJOY」はどのようにして生まれたのでしょうか。
ワコール・ファーセットさん(以下、ファーセット):2021年8月、ワコール内にフェムケアのプロジェクトが立ち上がりました。初期メンバーは、「フェムケアの領域で何かをやりたい」という想いを持った6人が集まりました。全員部署や職種がバラバラで、私は人事部に所属していました。
ナリス化粧品・安部さん(以下、安部):はじめてごあいさつしたとき、名刺に「人事部」とあって驚きました。しかし、改めて考えると人事の方が従業員の健康を考えるのはとても自然なこと。ファーセットさんの想いを聞いて、納得できました。
ファーセット:ありがとうございます。ワコールの従業員は約9割が女性ですので、健康経営を推進する上で、女性の健康課題を解決するための取り組みをしたいとずっと考えていました。ただ、プロジェクトが発足したとはいえ、メンバーたちはフェムケアのプロではありません。まずは当事者たちの声を聞こうと、ワコールの女性従業員にアンケート調査を実施したのです。任意でしたが1,846人からの回答が集まり、フェムケア領域への関心の高さを確認できました。
― アンケートから、どのようなことが見えたのでしょうか。
ファーセット:生理痛やPMS(月経前症候群)が仕事に与える影響です。約7割の従業員が生理痛やPMSによる仕事への影響を感じていて、症状があるときは仕事のパフォーマンスが6割ほどに低下すると答えていました。この結果を見て、「女性特有の健康課題の解決のために、からだとこころの両面から総合的にサポートする」ことをプロジェクトの指針に掲げました。
― リアルな声からプロジェクトの方向性が決まったのですね。そこからは、どのように進めたのですか?
私たちには専門的なノウハウがなかったので、東洋医学の専門家で、季節に応じた生活を通じて人を元気にする「養生」(※1)という考え方を提唱されている先生に協力をいただきました。この養生と、私たちが目指す女性特有の健康課題の解決はすごく相性がいいと感じたんです。先生から養生に関する知識や考え方を教えていただきながら、プロジェクトを進めていきました。先生には、からだとこころの状態をセルフチェックする「
」の監修や「コラム」の執筆など、「YOJOY」サイトのコンテンツにも協力いただいています。
(※1)生活に留意して健康の増進を心がけること
― 「YOJOY」はオリジナルアイテムとして、アンダーウェアとボディケアアイテムを展開しています。
ファーセット:女性のからだとこころは、月経周期におけるホルモンバランスの変化に伴って揺らいでいます。ワコールの強みであるアンダーウェアでセルフケアをサポートすることは当初から決めていましたが、それだけでは十分ではないと感じていました。
「私がととのう、私がよろこぶ。」というブランドメッセージにもあるように、「YOJOY」は“自分のからだとこころをととのえることで自分自身を喜ばせる”ことをコンセプトにしています。揺らぎに寄り添ったブラジャーやショーツに加え、何をととのえたら女性たちに喜んでもらえるのかを追及した結果、悩みをオープンしにくく、お手入れの環境も充実していないデリケートゾーンケアのニーズに行き着きました。
ナリスの自社バラ園で栽培・手摘みした生バラエキス(※2)を、全アイテムに配合。
(※2)ハイブリッドローズ花エキス(保湿成分)
― ナリス化粧品との協業はどのようにスタートしたのですか?
ファーセット:デリケートゾーンをケアできるボディケアアイテムは、ワコールだけではつくれません。OEMをお願いするためいくつかの企業さまにお声がけし、そのなかの1社がナリス化粧品さんでした。ナリスさんは歴史のある化粧品メーカーですし、お話した企業さまのなかで、「YOJOY」への想いが断トツであふれていたんです。
安部:化粧品業界でフェムケア領域への関心が高まっていたものの、ナリスはまだ挑戦できていませんでした。化粧品メーカーとして女性の揺らぎに寄り添える商品を開発したいという願いはありましたし、何より私たち自身もデリケートゾーンへの悩みを抱えていました。自分ごととして捉え、熱くプレゼンしたのを覚えています。
― そこからワコールとナリス化粧品のタッグがはじまります。開発は順調でしたか?
ファーセット:市場にあまり出回っていない新しい商品であるうえに、私たちからも難しいリクエストをたくさんしてしまいました。当初のスケジュールより、開発に時間がかかりました。
安部:ナリスにはボディケアアイテムの実績が豊富にあるため、社内では同じような流れで開発できると考えられていました。しかし、デリケートゾーンは皮膚が薄く、粘膜も近いため、一般的なボディ用製品とは異なる配慮が必要です。デリケートゾーン専用の内規づくりを社内の研究開発部門に依頼し、処方の組み方やテスト方法などを定めました。それらを合格したのちにワコールさんへサンプルを提出するのですが、予定通りに試験をクリアできないこともあって…。いろいろとご迷惑をおかけしました。
スケジュールが遅れても、ワコールさんからは「ナリスさんが納得されたものを発売したいです」といっていただけ、おかげで安心してトライすることができました。
ファーセット:ワコールでは下着をはじめ品質にこだわってものづくりをしています。「YOJOY」のアイテムでも、品質へのこだわりは絶対にゆずれないと考えていました。
― 化粧品は配合成分でも品質が左右します。こだわりの成分はありますか?
ファーセット:全アイテムに入っている、ハイブリッドローズ花エキスという保湿成分です。ナリスさんは素材となるバラを自社バラ園で栽培されていて、採取もすべて手摘み。トレーサビリティの面でも産地がわかる成分を使うのは大切だと考えていて、OEM先にナリスさんを選んだ理由のひとつでもあります。
安部:宮城県登米市にあるナリスローズガーデンでは、化粧品成分を抽出するためバラを10,000株以上栽培しています。「YOJOY」に配合しているのは、そこで状態の良い朝のうちに手摘みした生バラの成分です。ナリスはバラの研究を30年以上にわたり行っているのですが、このプロジェクトのために女性ホルモンへの効果・効能の研究もはじめました。
メンバーが自分のポーチを出し合って、女性が携帯しやすいサイズを検証。
― 「YOJOY」のボディケアアイテムは、2023年10月5日に[フォーミングウォッシュ][インバスボディセラム][リフレッシングミスト]を発売しました。それぞれの開発について教えてください。まずは、[フォーミングウォッシュ]から。
ファーセット:デリケートゾーンに関してのアンケートでは、「ニオイ」のお悩みがよく挙げられます。気になるニオイは強い香りでカバーすることも可能ですが、養生の観点では日々のセルフケアでととのえることを大切にしています。「YOJOY」では、やさしく洗い上げてここちよい状態に仕上がる、無香料のボディ用洗浄料の開発を目指しました。ナリスさんには、「へたれにくいモチモチの泡を刺激の少ない原料でつくってほしい」とリクエストしました。
安部:これが、難題でした。肌にやさしい刺激の少ない原料で構成するとどうしても水っぽくなり、泡立ちが悪くなるのです。弾力のあるモチモチ泡にならず、バランス調整に苦労しました。何通りもの処方を検討して試験を繰り返した結果、ようやく「コレだ!」という泡にたどり着いたのです。
ファーセット:容量と価格にもこだわりました。ライフステージによって生活環境が変わっても続けやすいよう、容量150mlで 2,750円(税込)に設定。1回2〜3プッシュで約2カ月半ほどご使用いただけます。
― [インバスボディセラム]は、バスルームで使うオイル美容液ですね。
ファーセット:タオルドライをしてお風呂から出た後に使うとなると忘れがちだし、寒い冬だとケアがめんどうに感じる場合もあります。モニターになってもらったワコールの女性従業員20名と座談会を開いたところ、「バスルームで完結しないと続かない」という意見が多く寄せられました。
安部:ぬれたからだに使うことで、オイルが水分をコーティングしてお肌の水分を保ちながら、しっとりやわらかくととのえます。インバスタイプだとオイルであってもサラッと仕上るため、ベタつきや下着への付着が気になる方でも快適にお使いいただけると思います。
― [リフレッシングミスト]は、トイレットペーパーなどに吹きつけて使う、ふきとりミスト状ローションです。
ファーセット:ボディシートのようなタイプも検討しましたが、トイレに流せなかったり、開封後しばらく使わないとシートが乾燥してしまうリスクもあるため、トイレットペーパーに吹きつける仕様を採用しました。ただ、トイレットペーパーは材質によってミストとの相性や肌あたりが様々で…。
安部:本当にたくさんの種類があるんですよ! お客さまが使うタイプがわからないので、スーパーでありとあらゆる商品を買って試しました。さらに、「どんなトイレットペーパーを使っているの?」といろんな人に聞きまわったりして(笑)。ここまでトイレットペーパーについて深い話をしたのは人生ではじめてでした。
ファーセット:せっかくミストで拭き取っても、トイレットペーパーのカスが残ってしまったら本末転倒ですからね。あとは容量にも悩みました。少ないとすぐ使い切ってしまいますが、大きいとトイレに持ち込むポーチに入りません。
安部:最初はもう少し大きいサイズでご提案したのですが、それだとポーチに入らないから携帯しにくいという意見があって。ただ、持ち歩くポーチのサイズは人によって違います。打ち合わせでメンバーがそれぞれのポーチを出し合い、「私のポーチには入る」「私は入らない」なんて検証しながら決めていきました。
― なんだか楽しそうな打ち合わせですね。
ファーセット:女子会みたいでした(笑)。ナリスさんをはじめ、ネーミングやパッケージデザインなどでご協力いただいたブランディング会社のメンバーも全員女性。オール女性のチームで、メンバーそれぞれが自分ごととして考え、社内の女性従業員たちも巻き込みながら「YOJOY」をつくっていきました。
この秋、[薬用ホワイトニングクリーム]を発売。スペシャルケアができるように。
― そして、2024年10月17日に[薬用ホワイトニングクリーム]が新発売しました。
ファーセット:まずは日常使いに適した基本のケアアイテムを3種類そろえ、この秋にスペシャルケアができる[薬用ホワイトニングクリーム](販売名:薬用美白クリームW1 a[医薬部外品])を発売しました。デリケートゾーンは下着やトイレットペーパーとの摩擦によってくすみが気になりやすい部位です。
女性のお悩みに着目した、デリケートゾーンの美白(※3)ケアができる商品をつくりたいとナリスさんにご相談しました。ジェルタイプやスティックタイプといった様々な仕様をご提案いただくなかで、悩んだのがテクスチャーです。
(※3)メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ
安部:「チューブタイプの形状で、テクスチャーはスティックタイプのもの」というご意見をいただいたのですが、チューブとスティックでは開発方法がまったく異なります。正直なところ、実現するのは難しいと考えていました。ですが、試行錯誤を重ねているうちにぴったりのものができあがったんです!ようやくOKをもらえたときはホッとしました。「YOJOY」の4アイテムのなかで、もっとも多く仕様を検討したのがこちらの[薬用ホワイトニングクリーム]です。
ファーセット:私たちが自由にリクエストしたので、ナリスさんは本当に大変だったと思います。
安部:ワコールさんからのご意見はエンドユーザー視点で、化粧品メーカーの私たちでは気づきにくい発想もたくさんありました。とてもいい経験ができ、感謝しています。
ファーセット:同じく10月17日に、トライアルキットも発売しました。[フォーミングウォッシュ]と[インバスボディセラム]をコンパクトなサイズでご用意しているので、デリケートゾーンケアが初めての方でも気軽にトライいただければうれしいです。
お客さまとリアルな接点を増やし、よりフェムケアを身近に感じてほしい。
― 「YOJOY」は1周年を迎えました。どのようなお客さまに届いているのでしょうか。
ファーセット:「YOJOY」の販路は、ワコールウェブストアや百貨店のワコール売場、一部のドラッグストアなどです。ワコール売場では下着とともに販売しているため、ボディケアアイテムの初動ではワコールをご利用いただいている既存のお客さまにご購入いただくケースが多くみられました。お客さまの年齢層は、お肌の乾燥が気になりはじめる40代・50代を中心に、20代から80代の方まで。ワコールには「ゆりかごからゆりいすまで」という、すべての年代のお客さまをサポートする考えがあります。もちろん、「YOJOY」にもその想いがあり、幅広い年代の方にお使いいただけていることはうれしいです。
安部:フェムケアが普及してきたとはいえ、「何を買えばいいのか」を迷う方もまだまだいらっしゃると思います。ワコールさんという下着メーカーのブランドであれば安心して手に取れますし、下着と一緒だと買いやすいのではないでしょうか。
ファーセット:ワコール売場では、お客さまとスタッフがコミュニケーションを取る機会が多いため、会話のなかでデリケートゾーンの悩みをお聞きしたときは「YOJOY」をおすすめしています。それまでフェムケアにご縁がなかった方も、普段身につけている下着と同じメーカーからアイテムが出たことで、デリケートゾーンケアを身近に感じていただけているようです。
―では、今後の展開についても教えてください。
ファーセット:アンダーウェアでは、月経前と、月経時にここちよくお使いいただけるアイテムを発売しています。ここに、月経後の心身の状態が安定しやすい期間に対応したアイテムが加われば、月経周期に寄り添える下着がそろいます。しっかり拡充していきたいですね。
ボディケアアイテムに関しては、デリケートゾーンの基本のケアからスペシャルケアまで対応できる商品がラインアップしています。しかし、女性のからだとこころにはケアが必要な部分がたくさんあると考えています。オンとオフを意識するなど、養生の考え方を取り入れた全身に使えるアイテムの開発も進めたいと思っています。
安部:私たちもワコールさんの想いを実現できるよう、ボディケアアイテムでのご協力を続けたいと思っております。
ファーセット:あとは、お客さまとのリアルな接点を増やしていきたいですね。先日、東京で開催された「JAPAN ドラッグストアショー」に出展したところ、とても多くの方に興味を持っていただきました。その場で「YojoCheck」や50歩の足踏みチェックを体験してもらい診断結果をレポートでお渡ししたら、とても関心をもっていただけました。リアルの場の方が診断結果について気づきを共有したり、フェムケアについても気軽に聞いたりしやすいと思うので、リアルなイベントも開催していきたいと考えています。
― ワコールとナリス化粧品という、女性をサポートしてきたメーカーが今回はじめて協業しました。改めて、どのような感想をお持ちですか?
ファーセット:個人的な感覚ですが、両社は企業としての精神というか、基本的な考え方が似ていると感じます。「お客様に寄り添い続けるために、正々堂々としたビジネスをする」というワコールのスタンスをナリスさんも持っていて、スムーズに協業できました。
安部:そうですね。同じスタンスでものづくりができたことは、とても大きかったと感じています。「YOJOY」はワコールさんのブランドで、ナリスは製造を担当する立場です。ですが、ワコールさんは私たちの意見を尊重し、化粧品業界ならではのルールやこだわりについても柔軟に受け入れてくださいました。ワコールさんとともに完成させた「YOJOY」のボディケアアイテムを誇りに思っています。