リノベるは「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」のミッションのもと、統合リノベーションプラットフォームを構築し、リノベーションをスタンダードな選択肢にすべく取り組んでいます。
2024年10月から、新サービス『The R. by リノベる。』の本格展開がスタートしました。今回は、新サービスの開発者であるホームソリューション本部本部長の安江浩に、リリースでは語り切れなかった、新サービスの開発背景や裏側を聞きました。新サービスの誕生秘話に迫ります。
仕様を厳選し、お客さまが「選ばない」ことで生まれるメリットを追求
―『The R. by リノベる。』がどんなサービスか、簡単に教えてください。
安江
『The R. by リノベる。』は、間取りに特化したセレクテッドリノベーションです。間取りは自由設計、仕様は上質でシンプルなものをリノベるが厳選(selected)した、フルオーダーメイドでもリノベ済み物件の購入でもない、住宅購入の“第3の選択肢”を提供するものです。
リノベるの提供しているフルオーダーリノベーションは間取りも仕様も自由に選べるサービスですが、その良さは良さとしてある一方で、ハードルを感じるお客さまもいらっしゃいました。打ち合わせにそれほど時間がかけられなかったり、もっとスピード感をもって住宅購入したいなどフルオーダーに対する不安や不満を感じる方です。
そうしたお客さまに、決めるのは間取りのみに限定することで打ち合わせ回数を減らし、仕様が決まっていることでコストは定額かつリーズナブルに抑え、物件購入もスピーディーにできるようにしたのが『The R. by リノベる。』です。
「The R. by リノベる。」開発責任者 安江 浩。
―リノベーション業界にはパッケージ商品と呼ばれるものも多々ありますが、その商品と新サービスの違いはどこにあるのでしょうか?
安江
他社では、たとえばデザインバリエーションをいくつか作り、お客さまはフルオーダーより選択肢を絞ったプランから選択するというものがあると思いますが、今回のセレクテッドリノベーションは、仕様を1パターンに絞り込んでお客さまは「選ばない」という点が肝になっていると思います。
それにより、コストや品質、スピード、打ち合わせの簡単さを追求したサービスになっていて、結果、お客さまはこれまでのフルオーダーリノベーションとはまったく違う感覚で物件探しができたり、メリットを得ることになります。
フルオーダーとリノベーション済み物件のいいとこどりを目指す
―そもそも『The R. by リノベる。』を開発したきっかけは何だったのでしょうか?
安江
住宅市場では、新築の価格がどんどん高くなり、中古物件の購入を検討されるお客さまがどんどん増加しています。カウンセリング(接客)を担当する社員の声をよく聞いてみると、リノベるにおいても、中古+リノベーション一択という方だけでなく、新築やリノベーション済みマンションと並行で検討されるお客さまが非常に多くなっていることがわかってきました。
並行検討されている方が増えるにつれ、フルオーダーに対しては「楽しいけど考えることが多くて大変ですね」という声が出て来るようになりました。さらに、他社のリノベ済みを見てきたという方からは「すべてオーダーするほどのこだわりはないけど間取りがしっくりこない」という悩みを聞くことがありました。
だったら、フルオーダーを大変だと感じるお客さまには負担が少ないものを、リノベーション済み物件の間取りにピンとこないお客さまには、間取りの自由度を提供したらいいのではという発想にいたりました。
――お客さまの声がきっかけになったのですね。
もともとフルオーダーサービスでは、10年ほど前から、NPSスコア(顧客推奨度)を計測しています。常にお客さまからのフィードバックをサービス改善に活かしてきたのですが、サービスの改善だけでは対応しきれない新たなニーズに気づくきっかけにもなりました。
さらに、結果的にリノベるのサービスを受けなかった方への追跡調査をしてみると、時間がなくてリノベーション済み物件を購入したというお客さまがたくさんいることもわかりました。フルオーダーリノベーションとリノベーション済み物件を並行検討している方が多く、両者の間を取り持ついいとこ取りのサービスを求める層がいるのではと想定し、セレクテッドリノベーションの開発をスタートしました。
選択肢をどこまで残すか。間取り特化は、線引きの苦労の賜物
――どのように新サービスが開発されていったのかをお聞きします。開発の段階で苦労した点はありますか?
安江
お客さまが選べる範囲をどこまで残すかというところでしょうか。
フルオーダーリノベーションを長く手がけてきたので、選べることが多いほうがお客さまにとってはメリットだという感覚が、僕たちの中にはどうしてもありました。でも選択肢を増やすとフルオーダーとの線引きが曖昧になってしまい、サービスラインナップとしてよりややこしく見える。じゃあ、くっきりと線を引けるのはどこなんだろうと突き詰めていくことが大変でしたね。目の前のお客さまに対応していると、こんなことできませんかというニーズに引っ張られがちですが、そこをばっさりと切り離す作業でした。
今回は、間取りと仕様が完全に選べるフルオーダーと、間取りと仕様が完全に決まっているリノベーション済み物件の中間地を目指すことが大事なポイントだったので、そこをずらさないよう条件設定を考えていったとき、選択肢は間取りのみに絞り込むのがいいと判断しました。
―間取りに着目した理由はどこにあったのでしょうか?
安江
実際、お客さまへのアンケートでも、住まいに抱えている不満が間取りに紐づいていたり、完成した物件のコメントでは間取りを気に入っているということが非常に多かったんです。
リノベーションでは、たとえばウォークインクローゼットとランドリールームを繋げることで洗濯時の動線が楽になったり、玄関を広くすることで、家族が靴を履くのに混み合うストレスが軽減したりと、満足度が上がる事例などをよく見てきました。
間取りを解決することで、今の住まいに対する不満が大きく解消し、お客さまの暮らし方に影響を与えるのではないかと感じました。
玄関土間を広くすることで、ベビーカーを開いたまま置いておくこともできる。
タイパ重視の共働き家族にぴったり当てはまったパイロットプロジェクト
―先行したパイロットプロジェクトの手ごたえは?
安江
2023年4月1日から2024年3月31日の1年間に、17組のお客さまにお引渡しをしたのですが、ターゲットとして考えていた、小さなお子さまのいらっしゃる方や、生まれる間近といったお客さまにバッチリ当たったときは嬉しかったですね。打ち合わせ回数が少なくてすんだり、決めることが少ないのが非常にありがたかったという声を多くいただきました。
世の中的にも、共働き家庭が夫婦のいる世帯全体の約7割となり、いろいろなサービスでタイパが重視されてきている中で、時間をかけないことに価値を感じる方たちが増えていることを実感できました。
ニーズが合致したことで、NPSスコアでもお客さまの満足度はフルオーダーと同等の高い結果となりました。フルオーダーを我慢したことで満足度が低くなることも予想していたのですが、「こんなサービスがあってよかった」というコメントもいただき、その点では非常に成功したなと思っています。
パイロットプロジェクトで引き渡したお客さまのお住まい。打ち合わせ時は妊娠中だった。
逆にうまくいかなかったのは、ルールを決めて工事に臨んでも、実際に現場に入ってみると「ここはどうしますか」「ここは変更していいんですか」という話が様々出てきたところです。件数を重ね、小さなこと一つひとつのルールまでチェックし、設定していったことで、完成度の高いサービスになっていったと思います。お客さまにも齟齬なく伝えられるようになりました。
―新サービスではインテリアも重視していますが、構想段階からインテリアへの着目はあったのでしょうか?
安江
仕様を統一して、同じ型を展開していくことで、個性がないとか、自分らしくできなくてつまらないと感じるお客さまが出てくることも想定できました。その部分を補完し、メリットへと転換していく方法を考えたとき、家具の活用はとても重要だと思いました。
海外のインテリアを見ても、家具や照明、雑貨をうまく組み合わせて印象的な部屋づくりをしている例が多いです。そこで『The R. by リノベる。』でも、インテリアと組み合わせた提案をしてはどうかと考えました。
僕たちがリノベーションする理由には、長く大切にモノを使い続けたいという大量消費に対するアンチテーゼもあります。インテリアに関しても同様で、いい家具を長く使っていただきたいという思いでいます。
スタイリング前の「The R. by リノベる。」の一室。インテリアが主役になるようにあえてシンプルに。
インテリアによって、テイストはがらりと変えることができる。(提供:ACTUS)
リノベーションの楽しさを、新サービスでも感じてもらいたい
―パイロットプロジェクトを経て、新サービスはどのような結果になっていますか?
安江
2024年9月26日にローンチし、正式にサービスがスタートしたところです。前期に比べると倍近いスピードでご利用いただいている状況です。東急田園都市線沿線の川崎エリアには、『The R. by リノベる。』が体感できるコンセプトルームもオープンしました。
コンセプトルームのスタイリングはアクタスが担当。今後は様々なブランドにスタイリングいただくことも検討している。(提供:ACTUS)
実体験できる空間ができたことで、こんな空間ができるなら選びたいと思う方たちが増えてくるのではないかと考えています。
また、関西でも導入事例が進んでおり、全国的に展開できる状況へと向かっています。
―選択できるサービスが新たに加わることで、リノベーションの裾野が広がりますね。
安江
そうですね。でも実は当初、社内には戸惑いがありました。担当者は、目の前にいるお客さまの希望は実現させたいという気持ちが強いので、打ち合わせの回数も仕様の選択も多いほうが喜ばれるのではないかと、これまでの経験値で捉えてしまいがちでした。間取りしか選べないということをネガティブに捉える傾向もありました。
でも、世の中には打ち合わせの回数少なくていい、仕様は選べなくてもいいという、まだ見ぬお客さまがたくさんいるということ、このサービスのポジティブな部分やメリットを時間をかけてしっかり伝えていきました。今では、自分たちの新たな強い武器ができたと思ってくれているのではないかと思います。
―今回の新サービスで叶えたいことや、今後の展開など、ユーザーへのメッセージとともに教えてください。
安江
『The R. by リノベる。』でリノベーションの楽しさ、間取りを変えられる楽しさをもっと感じていただき、それがスタンダードになって、自分らしい暮らしをする人たちが増えていったらいいなと願っています。
これまで建築業界はフルオーダーが一般的でしたが、他の業界を見ても、オーダーメイドではなく既製品を買うことのほうが多くなっていますよね。タイパやコスパを重視するお客さまが増えている状況もあり、世の中の人たちが望むリノベーションのあり方を追求していくことが大事だと思っています。今後もお客さま次第で、今のやり方にこだわらず、新しい手法をどんどん開発していきたいですし、それによってお客さまがもっと素敵な空間で楽しく暮らせるようになっていったら嬉しいです。
そうして、誰もが無理なくかしこく、素敵で、自分らしい暮らしを実現できるようになれば、ミッション「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」の実現にもつながると考えています。
衣食住の中で、住まいはどうしても衣食に比べると後回しになりがちです。でも、こうしたサービスを選択することで、暮らし方や時間の使い方が変わったり、人生観が変わったりします。
興味を持たれたら、ぜひリノベるのイベントに訪ねていただいたり、コンセプトルームを見に来ていただけたらと思います。
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