悪路を激速で走るタイヤってどんなもの? じつは公道走行も可能な「ダートタイヤ」の中身をプロドライバーに聞いてみた

2024.10.22 17:20
この記事をまとめると
■ダートトライアルではダートタイヤというものが使用される
■ヨコハマタイヤとダンロップが供給している
■それぞれを使用する選手たちにフィーリングについて聞いてみた
ダート用タイヤってどんなタイヤ?
  全日本ダートトライアル選手権の最終戦となる第8戦が10月12〜13日、広島県のテクニックステージ・タカタで開催。各クラスで激しいバトルが展開されていたのだが、果たしてダートトライアルに使用されているタイヤはどんなタイヤなのか?
  というわけで、ここでは少々マニアックなダート用タイヤの基礎知識を紹介したい。
  まず、基本的にダートトライアルで使用されているタイヤとラリーのグラベル戦で使用されているタイヤは同一のもので、現在はヨコハマとダンロップの2メーカーがタイヤを供給。各メーカーのグラベル用タイヤは3種類で、ドライ、ウエット、そしてスーパードライと呼ばれる超硬質ダート用のタイヤがラインアップされている。
  文字どおり、ドライは路面が渇いているとき、ウエットは雨天により路面が濡れているとき、スーパードライは路面を覆う砂利が掃けて硬い地盤が出たときに使用するタイヤとなっているが、ヨコハマとダンロップでタイヤの特性が結構異なっているようで、実際には雨天時でもドライタイヤで走行したり、路面が乾いていてもウエットタイヤで走るケースも少なくはない。
  各ドライバーは刻々と変化するコンディションや自分のドライビングスタイル、マシンのセッティングを考慮しながらタイヤ選択を行なっているのだが、各メーカーのタイヤにはそれぞれどのような特徴があるのか、トップドライバーに解説してもらった。
  まず、ヨコハマではドライ用タイヤとして「ADVAN A053」、ウエット用タイヤとして「ADVAN A031」、超硬質ダート用タイヤとして「ADVAN A036」がラインアップされているが、HKSランサーエボリューションを武器にDクラスで3勝をマークし、チャンピオンに輝いた田口勝彦選手は「ドライ用のA053はオールマイティなタイヤで、コントロール性が高いです。タテ方向だけでなく、斜め方向に対してもコントロール性が高いので、僕の場合はドライだけでなくウエット路面でも使用しています。ラリー競技で10km以上のロングSSを走る場合はタレてきますが、タレてきてもガクンとタイムが落ちることはないですし、5〜6kmぐらいなら問題ない。一番、使用頻度の高いタイヤです」と解説。
  さらに「A036は気温が低くても、すぐにブロックが動いてグリップしてくれるし、トラクションもブレーキもタテ方向がすごくいい。ラインを外さなければ確実にタイムが出るし、ヒルクライム競技など舗装のワイディングでもかなりいいタイムが出ますからね。ラリー競技では使用しませんが、第2ヒートで勝負をかけるときは必ず使用しています。ウエット用のA031は排水性がいいので、水たまりができるぐらいのハードウエット時に装着しますが、それ以外はあまり使わないですね」と田口選手は各タイヤの特徴を解説してくれた。
  ちなみに最終戦のテクニックステージ・タカタで田口選手は惜しくもDクラスで4位に敗れたが、SC2クラスに目を向けると、YH栗原オート企画インプレッサを駆る亀田幸弘選手が、A036を武器に今季4勝目を獲得し、チャンピオンに輝いている。
勝者たちの足もとを支えるダンロップ
  一方、ダンロップのダート用タイヤはドライ用として「DIREZZA 88R」、ウエット用として「DIREZZA 74R」、超硬質ダート用タイヤとして「DIREZZA 95R」がラインアップされているが、WMオクヤマDL栗原企画BRZを武器に第2戦の丸和オートランド那須を制した鎌田卓麻選手は「ウエット用の74Rはザクザクした路面や雨が降ったあとの滑りやすいコンディションのときに装着しますが、この74Rは特殊なタイヤで外径を大きくして、タイヤを細くすることでタテの面積を増やしている。その結果、トラクションを生かして走ることができるので、ドライでも横方向を必要としないコンディションだと74Rを使うことはあると思います。逆に横方向が弱いので、横方向を必要とするラリーではウエットでも使用していません」と解説する。
  さらに、ドライ用の88Rについて鎌田選手は、「オールラウンダーなタイヤで、タテ方向とヨコ方向のバランスがすごくよく仕上がっています。すごくマイルドなタイヤで、滑らせるようにドリフトアングルをつけて、タイヤを回すことで安定した走りができるようになっていますが、ラリー競技のロングステージではタイヤが発熱してグリップが低下してくるので、走らせ方が変わってきます。ダートトライアルはすべてのコーナーを攻めて走りますが、ラリーはひとつのコーナーではなく、平均スピードを考えて走るし、路面コンディションもどうなっているかわからないので、マネジメントしながら走っています」とのこと。
  続けて95Rについては「砂利が履けて、ゴムのグリップを活かせるコンディションになった時に95Rを使用しています。ターマックと同じように、ゴムを使ってグリップさせるタイヤなので、ドライビングも違ってきますね。舗装路で考えると同じサイズならエコタイヤよりもグリップすると思います」と解説する。事実、鎌田選手は95Rを武器に最終戦となるテクニックステージ・タカタでも豪快な走りを披露し、Dクラスで今季2勝目を獲得している。
  ちなみに、ダートトライアルやラリーのグラベルステージのような未舗装路といえば、パンクをイメージしがちだが、「パンクにはカットでエアが漏れる場合と、リム落ちといってホイールとタイヤが外れて起きる場合の2種類があるんですけど、ダート用タイヤはゴムが厚くなっているのでなかなかカットすることはない。たまにラリー競技ではサイドをカットをする場合がありますが、ダートトライアルでバーストすることはあまりないですし、最近のホイールはリム落ちも少なくなっています。ダートトライアルでは保険を兼ねてチューブを入れているドライバーもいますが、それでもあまりパンクすることはないと思います」と鎌田選手は語る。
  このように、ダート用タイヤはヨコハマ、ダンロップともに3種類がラインアップされており、それぞれに特性が異なることから、タイヤ選択がリザルトを左右。
  ちなみにダート用タイヤは一般道も走行可能であり、最大のサイズである205/65/15でも、だいだい1本あたり2万円前後で販売されているので、未舗装路を走行してみたい……という読者は、ダート用タイヤを体験してみてはいかがだろうか?

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