公益財団法人東京都歴史文化財団
障害の有無や年齢に関わらず、音や音楽を楽しめるきっかけを創出。エンジニア、音楽家、アクセシビリティの専門家、ろう・難聴者等の様々な方が参加し、新しい「音楽体験」を追求し、開発されたオープンシステム。
東京都及び公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京が運営するシビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT](以下、CCBT)は、東京藝術大学芸術情報センター(AMC)と、音を光や映像として体験できるシステム「VisVib(ヴィズ・ヴィブ)」を協働開発し、セットアップや使い方の動画等とあわせてオープンソースで公開しました。これにあわせ、本システムの実機の紹介とともに、開発メンバー等による報告会を2024年11月10日(日)に開催します。
「VisVib」は、トーンチャイムという楽器を用いて、その響きを、光や映像として体験するためのシステムです。音楽ホールでのワークショップに導入することなどを目的に、障害の有無に関係なく音楽を楽しみ、新しい音楽体験をつくり出すツールとして開発されました。
報告会では、本システムの開発経緯や使い方の説明、また「VisVib」を導入したワークショップの事例、このシステムの楽しみ方や展望を発表します。
開催概要
インクルーシブにつくる/つかう道具とは?
~CCBT+東京藝術大学芸術情報センター(AMC)「音楽デバイス開発プロジェクト」報告会~
会場:シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]
日時:2024年11月10日(日)14:00~16:30 入場無料 ※申込不要
公式サイト:
主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京 シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]
企画制作:シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]
1. 音を光や映像としても体験できるシステム「VisVib(ヴィズ・ヴィブ)」とは
音の響きに着目し、楽器本来の音色を楽しみながら、みんなで演奏できる。
ワークショップや音楽教育の現場での利活用を目的に開発されたシステム。
「VisVib(ヴィズ・ヴィブ)」は、トーンチャイムにコンタクトマイクを接続し、音響機器、コンピューター、照明や映像機器を使い、専用のソフトウェアでコントロールするシステムです。これを利用することで、トーンチャイムの楽器の特徴である音の長い響きを、光の強弱やアニメーションの緩やかな明滅として表現します。音色の異なる複数のトーンチャイムを演奏する際には、それぞれの音色に異なる色の光やアニメーションを表示することも可能です。トーンチャイムの楽器にある音色や響き、手に伝わる振動の本来的な特徴を活かすことで、ろう者や難聴者、子供たちも音や音楽を楽しみながら演奏することができます。
東京文化会館ミュージック・ワークショップ「不思議なミュージアム」! (C)鈴木穣蔵
2023年6月にスタートした「VisVib」の開発は、これまでに11回にわたる研究会と、筑波技術大学等でのユーザー検証を実施し、構想と実験、フィードバックと開発を繰り返し、2024年3月に東京文化会館のミュージック・ワークショップ「不思議なミュージアム」に実際に導入されました。また、同年6月には、ソフトウェアをオープンソースで公開し、セットアップや使い方を手話通訳付きの動画で解説しています。
体験会の様子
▮「VisVib」の特徴
- CCBTと東京藝術大学芸術情報センター(AMC)との協働にくわえ、エンジニア、音楽家、アクセシビリティの専門家、ろう・難聴者等の様々な方が開発に参加。音の視覚化のみならず「音楽体験」を追求されたシステム。
- トーンチャイムがもつ楽器本来の響きやその持続時間までを光やアニメーションで表現するため、障害の有無や年齢に関わらず、音や音楽を楽しみながら演奏できる。
- ソフトウェアをオープンソースで、さらに使い方などをすべてインターネット上で公開。様々な音楽ホールや教育機関等のワークショップで利用が可能。
公開中の使い方動画
「VisVib」のオープンソース公開ページ(github)
▮体験者の声
- 今までは音楽というものは耳で楽しむイメージがあったけど、このワークショップに参加して、聞くだけでなく目と身体で楽しむものだとイメージが変わった。
- 「耳で音楽を楽しむ」という音楽の前提から「目で・身体で音楽に触れて楽しむ」という新しい考えに気付かされる。それがろう者・難聴者・聴者がともに、体感できたことが大きな成果といえる。
※「VisVib」は、シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]における大学研究機関等連携事業の一環として、東京藝術大学芸術情報センター(AMC)と協働で開発されました。
シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]大学研究機関等連携事業
CCBTでは、アート、デザイン、テクノロジーに関わる新たな表現や学びの場を創出することを目的に、国内外の大学・研究機関と連携した調査研究を実施し、コアプログラムの企画やツールキット等を公開する「大学研究機関等連携事業」を実施しています。
2023年度からは東京藝術大学芸術情報センター(AMC)、本年度はイギリス・ブリストルのメディアセンター・Watershed(ウォーターシェッド)、東京大学大学院総合文化研究科池上高志研究室と連携を行っています。
2.「VisVib」を実際に体験!11月10日(日)に報告会を開催
CCBTミートアップ
インクルーシブにつくる/つかう道具とは?
~CCBT+東京藝術大学芸術情報センター(AMC)「音楽デバイス開発プロジェクト」報告会~
日時:2024年11月10日(日)14:00~16:30
会場:シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]
情報保障支援:日本語対応手話―日本語 通訳付き ※申込不要
※会場では「VisVib」のデモンストレーションも実施。実際に体験いただけます。
発表登壇者:
松浦知也(東京藝術大学 芸術情報センター特任助教)、伊原小百合(東京文化会館ワークショップ・リーダー)、多田伊吹、Sasa / Marie(SignPoet(手話による「てことば」で詩を紡ぐ人)、ミュージック・アクセシビリティ・リサーチャー)
コメンテーター:
大杉豊(筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター教授/手話言語学、ろう者学)、伊藤隆之(CCBT)
▶︎第1部:14:00~15:30 プロジェクト活動報告
デバイスとシステムの開発や「VisVib」を導入した実例、ろう当事者の視点から見た「VisVib」の楽しみ方や展望を発表します。
▶︎第2部:15:40~16:30 座談会「インクルーシブにつくる/つかう楽器とは?」
さまざまな立場の人が関わり、ろう者と難聴者が音や音楽を楽しむためのアプローチを探求してきた本プロジェクト。それは、情報支援のツールを開発することだけでなく、さまざまな身体的特徴や文化的背景、考えを持つ人々との協働による新しい芸術体験の創造とも言えます。インクルーシブにつくり、インクルーシブにつかう楽器を目指すには、どのような環境や協働が必要なのでしょうか?登壇者とともに考えていきます。
登壇者プロフィール
松浦知也(まつうら・ともや)
東京藝術大学 芸術情報センター 特任助教
1994年生まれ。2022年九州大学大学院芸術工学府博士後期課程修了。音に関わるメディア・インフラストラクチャ技術を実践を交え批評的にデザインする活動を「音楽土木工学」と称して研究。ハウリングだけで音を出す自作電子楽器「Exidiophone」などを用いての演奏活動、音楽プログラミング言語「mimium」の設計と開発のほか、近年はDIY半導体の制作に取り組む。分担執筆に「クリティカル・ワード ポピュラー音楽」(2022年、フィルムアー社)。
撮影:鈴木穣蔵
伊原小百合(いはら・さゆり)
東京文化会館ワークショップ・リーダー
東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士及び博士課程(音楽教育)修了。子どもたちが音や楽器とより面白く出会う方法を追求している。主な著書に『探索して音に出会う』(2021年、みらい)、『わたしたちに音楽がある理由』(今川恭子編、2020年、音楽之友社)等がある。保育士資格と中学校・高等学校教員免許(音楽)をもつ。現在、玉川大学教育学部乳幼児発達学科専任講師として保育者・教員養成にあたる。
撮影:佐藤基
多田伊吹(ただ・いぶき)
生まれつき(先天性)聴覚障害があり、主に手話でコミュニケーションをとる。筑波技術大学産業技術学部総合デザイン学科 支援技術学コースを卒業。障害のある人々や高齢者が生活する中で生じる不便な点に配慮する機器のデザイン、及び障害者が求める支援についての理解を高めるためのデザインなどを中心に、誰もが利用しやすいデザインの知識を習得中。2022~2023年度までCCBTインターン。ろう当事者の視点から、ろう者・難聴者がイベント等に参加し楽しめるための情報保障支援やワークショッププログラムの企画・運営等に従事した。
撮影:Stephen Illife
Sasa / Marie(ささ・まりい)
SignPoet(手話による「てことば」で詩を紡ぐ人)、
ミュージック・アクセシビリティ・リサーチャー
ろう詩人。身体とことば、音楽などによる五感で感じる空間インスタレーションとポエトリー・リーディングを展開。
2023年4月に、ろう俳優河合メアリとともにろう者の“おんがく”、ろう者の詩などのろう芸術表現を伝える団体ミナテマリを結成。2018年にアートプロジェクト「TURNフェス4」(東京都美術館)のパフォーマンス作品に出演。主な企画制作作品に彫刻家平田中にオマージュを寄せた「でんちゅうさん」シリーズ(2019-2024)、サイレントなポエトリーリーディングをメインにした「Silentwilight」(2023-)がある。東京文化会館ミュージック・ワークショップアクセシビリティアドバイザー。九州大学大学院芸術工学府博士後期課程在学中。2024年度文化庁新進芸術家海外派遣制度研修員。ろう者、聴覚障害者の音楽の鑑賞環境等について研究中。
大杉豊(おおすぎ・ゆたか)
筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター教授/手話言語学、ろう者学
18歳の手話言語との出会いを「言語文化的に生まれ変わった」と表現する。劇団員、専門学校教員、米国の大学教員、きこえない当事者団体事務局職員などの職を経て、2006年より筑波技術大学に勤務。きこえない学生に手話言語学やろう者学を指導する傍ら、手話言語のフィールドワークを続ける。
全日本ろうあ連盟、全国手話研修センター手話言語研究所、現代人形劇センター、国際ろう者スポーツ委員会などで手話言語とろう者文化・スポーツの「居場所づくり」を求めてグローバルな活動を展開している。
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