大阪万博で活躍する姿がみられるか? 屋根上にバッテリーを搭載してEVながら低床を実現した路線バス「エルガEV」の全貌

2024.10.09 20:00
この記事をまとめると
■いすゞ自動車から「エルガEV」が登場
■エルガEVはEVでありながら低床化を実現した
■エルガEVの中身を詳しく解説
路線バスとして全国を走る「エルガ」にEVが登場
  路線バスとして全国各地で活躍しているいすゞ自動車の「エルガ」。2000年に登場して以降、その人気は不動のものといえよう。現行車は2代目で、2015年にフルモデルチェンジをしたものだ。製造は2004年から、日野自動車との合弁会社である「ジェイ・バス」に移っているが、クオリティの高さは「いすゞバス製造」時代と変わらない。
  路線バスなので民間事業者だけではなく、自治体の公営交通としても多数採用されている。それらの要望に応えるために、ハイブリッド・CNG・連節バスなどといったバリエーションが揃っているというのも特徴のひとつだ。
  今回登場した「エルガEV」も、そういった需要を見込んでのことと考えられる。この車両は、2023年秋に東京ビッグサイトで開催された「ジャパンモビリティショー2023」で発表・展示されていたもの。その特徴は、EVながら路線バスとしては必須となる低床化を実現したことだ。
  EVは駆動システムやバッテリーなどといった機器が多いので、低床化するためにはさまざまな工夫をしなければならない。そこで、リヤアクスルの左右それぞれにモーターを内蔵したインアクスルモーターを採用し、バッテリーは車体後部の床下と屋根上に配置した。これにより、車内空間のレイアウト自由度が増したことで、高齢者や体が不自由な人の乗り降りが容易なデザインになったのである。
  また、離れた場所から車両のコンディションを把握できる「プレイズム」を採用。走行中のバスの状況を、営業所などでも確認することが可能になっている。その内容は、バッテリー残量・航続可能距離・充電状態・車両不具合などだ。営業所からは、これらの情報を基にして必要に応じた指示・アドバイスをドライバーに送ることができる。これにより、運行の安全性向上やドライバーの負担軽減につなげることができるわけだ。
大阪・関西万博で活躍する可能性も
  車両の最大出力は250kW(モーターが2基なので125kW×2になる)で、最大トルクは960N・m(同480 N・m×2)と大きなパワーをもつ。搭載しているリチウムイオンバッテリーの容量は245.3kWhなので、1回の充電走行距離は360km(30km/h一定速)である。この距離は、長距離バスや観光バスであれば少し短いかもしれないが、路線バスならば営業に差し支えることはない。定員は70名でディーゼル仕様車よりやや少ないものの、これも許容範囲といってよいだろう。
  2025年に開幕する大阪・関西万博では、会場内外に電気バス約150台が投入されるという。そのうち、10台程度は自動運転にも挑戦するそうだ。すでに100台は福岡のEVメーカー「EVモーターズ・ジャパン」が受注・納品した。
  この車両はバッテリー容量が210kWhで、1回の充電走行距離は280km。定員は77人だ。公表されているとおりであれば、EVバスはあと50台程度が投入される予定である。ひょっとしたら、「エルガEV」の出番があるかもしれない。
  1970年に開催された大阪万博では、会場に6人乗りの電気バスが時速6~8km/h程度(最高速度は15km/h程度)で運行されていた。当時、これを製造したダイハツは、自動車の排気ガスによる大気汚染問題を解決する糸口として、この車両を世に出したのだそうだ。
  環境対策の切り札とされるEVバスが、半世紀のときを超えてどのように進化したのか、関西万博の会場で見せてくれることに期待をしたい。

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