EVが嫌いなんじゃない! 純エンジン車が好きなだけなんだ! 押し寄せるEV化の波のなかで死ぬまで「エンジン車」に乗り続ける方法を考えてみた

2024.09.01 17:30
この記事をまとめると
■EVに乗りたくないからどうしたらエンジン車に乗り続けられるか考えた
■もっとも簡単なのは現在売られているガソリン車を購入して大切に乗り続けることだ
■未来永劫エンジン車に乗りたいと思ったらそれはもう大富豪になるしかない
2050年には純ガソリン車は走行そのものができなくなる!?
  東京都の小池百合子知事は、2020年12月8日の都議会代表質問で「都内で新車販売される乗用車について、2030年までにガソリンエンジンだけのクルマをなくし、すべてEVやHEVなどの非ガソリン車(電動車)にする」という目標を明らかにした。で、小池氏は今年3月21日に行われたフォーミュラE 東京大会の事前イベントにおいても、まったく同様の目標を述べている。
  まぁ「満員電車ゼロ」というどう考えても無理めな公約を堂々と掲げ、それが達成されずとも知らんぷりな小池知事のいうことは、どれも話半分で聞くべきかと思っている。だがそれはそれとして「クルマの電動化」は、世界的かつ長期的に見れば、もはや避けられない既定路線といっていいだろう。
  とはいえそんな世の中においても、「自分は死ぬまで純エンジン車に乗っていたい!」と思っている人はいるはず。また、さすがに「死ぬまで」とは思っていなくても、「できるだけ長く!」と思っている人もいるだろう。筆者は、どちらかといえば後者のタイプである。
  いま現在はまだごく普通に純エンジン車を買って乗ることができるし、おそらくはいまから10年後、2035年頃までは、トヨタを中心とする国内各メーカーのマルチパスウェイ戦略により、純エンジンも細々と作られるはず。そしてその後、どのパワーユニットが来るのか現段階ではわからないが、技術とインフラにおいてブレイクスルーを果たしたEVかFCEVか、水素エンジンか、はたまたまったく別の何かによって“天下統一”は果たされるのだろう。たぶん。
  そういった状況のなかで「死ぬまで」あるいは「できるだけ長く」純エンジン車に乗り続けるために、私たちは何ができるのだろうか? とりあえず真剣に考えてみることにしよう。
  で、考えてみた結果、取り得る方策は以下の3種類であることが判明した。順を追ってご説明する。
作戦1)シンプルな構造の純ガソリン車を購入して徹底的に大切にする
  仮に(あくまでも仮に)、小池百合子氏の目標どおり東京都では2030年に純ガソリン新車の販売数がゼロになり、そして2035年頃には日本国としても純ガソリン新車の製造と販売を禁じたとする。
  仮にそうなったとしても、日本国が民主主義&自由主義の国家であり続ける限り、国や自治体が、瑕疵のない人民の財産を勝手に没収することはできない。つまり、あなたが所有している純ガソリン車が取り上げられることはないため、純ガソリン車の新車販売が終わったとしても、すでに所有している純ガソリン車にずっと乗り続ければいいだけの話である。
「でも純ガソリン車はそのうち公道を走れなくなるのでは?」という疑問または不安もあるだろう。もちろんその可能性もあるわけだが、それは「いますぐ」ではない。日本国政府の場合は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」のなかで「2050年に自動車の生産、利用、廃棄を通じた CO2ゼロを目指す」といっているので、仮にこの目標どおりに事態が推移すれば(推移しない気もするが……)、2050年には純ガソリン車は「走行」そのものができなくなる。
  しかし、逆をいえば2050年までは走れるのだ。目標達成時期が前後に多少ぶれることを考慮しても、おおむね2040年頃または2060年頃までは、純ガソリン車による公道走行は可能なのだ。それゆえ、とくに心配することはないのである。
  とはいえ問題は「いま乗っている純ガソリン車を2050年頃まで維持できるだろうか?」ということだ。
  もちろんしっかりとした整備や部品交換を続けない限り無理であろうし、全身コンピュータ仕かけとなっている近年のクルマでは、「機械部分はまだまだ大丈夫だけど、コンピュータが逝ってしまい、交換するコンピュータも世代的にもう売られていないため、走れません」となることも予想される。また、コンピュータではなく機械部品が「交換部品の在庫がゼロです」となってしまうこともあるだろう。
  そのため、この作戦を採用する場合は「なるべくコンピュータの使用割合が低いシンプルな純エンジン車を選ぶ」ということと、「中古部品の入手が容易な車種を選ぶ(レアすぎる車種は選ばない)」というスタンスが重要となる。そういった意味では、この場合に最適な車種は、現行世代でいうと「マツダ・ロードスター」あたりだろうか? あるいは大穴として「トヨタ・プロボックス」も考えられるかもしれない。
  また、2030年以降あるいは2035年以降はガソリンスタンドの数も(たぶん)激減するため、「走らせたいが、給油できない!」というガソスタ難民の発生も予想される。これを避けるためには、おそらくは最後までガススタの数が減りにくい「大型トラックが数多く走っているエリア」へ転居するというのも、有効な手段となろう。
2050年を過ぎたらお金が解決してくれるかもしれない
作戦2)「ショボいグレード」に身体と心を慣らしていく
  いま現在でもすでに「中間グレード以上は電動パワーユニットで、純エンジンは一番安くてショボいグレードにのみ設定されている」という状況が散見されるが、今後はこの傾向がより強まるだろう。いや正確には“二極化”が進み、「純ガソリンエンジンは、趣味の対象としての『超高いグレード』と、実用の対象としての『超安いグレード』にのみ設定される」ということになっていくはずだ。
  そうなったときに「じゃ、俺は超高いのを買うわ」でOKな人はそうすればいいが、筆者を含む多くの人は、なかなかそうもいかないはず。であるならば、自分の身体と心を「安いやつ」に合うよう矯正していくほかない。ゼイタク志向をやめて「清貧こそ正義! ごはんのおかずも一品で十分!」みたいな自分に変わるのだ。そうすれば、比較的長きにわたって純エンジン車を購入し続け、そして乗り続けることができるだろう。
  筆者もいまはスバル レヴォーグの一番高いやつに乗っているが、今後はそんなゼイタクなどご法度である。一番安い「Smart Edition EX」に乗り替えるか、はたまたインプレッサの一番安い純エンジン車である「インプレッサ ST(2WD)」を選ぶなどして、自分を鍛え直したい。
作戦3)雌伏の時を経て「大富豪」へと変身する
  まずは「ショボいグレード」に身体と心を慣らしていくことがおすすめとなるわけだが、技術的なブレイクスルーが発生し、ショボいグレードにも効率的で安価なエレクトリック系パワーユニットが搭載されてしまう可能性はある。
  だが、そんな時代が到来しても、「趣味の一品」であるバカ高い純エンジン車の少量生産は続くはずだ。もはや馬で移動する意味などないのに、お金持ちや貴族はあえての乗馬をたしなむ──みたいな話である。純エンジン車は将来、現在でいう馬のようなポジションとなるのだろう。
  そして「いつでも乗れる馬を所有し、調教および飼育する」ということにはバカ高い金がかかるのと同じで、「馬的存在になった純ガソリン車」の購入と維持には、バカ高い金が必要となるはず。普通は、なかなか無理な話である。
  しかし、金さえあれば無理も通るというか、割とどうとでもなるのがこの世のなかだ。もちろん「金がすべてだ!」というのは明らかに間違った意見だが、同時に「世の中の8~9割ぐらいの問題は、じつは金で解決できる」というのも事実ではある。
  であるならば、進むべき道はひとつしかない。ショボくて安いグレードの純エンジン車で雌伏の時を過ごしている間に節約して金を貯め、そして節約と貯めるだけではたぶんラチが明かないので、投資や投機、あるいは自営ビジネスなどに励み、大富豪になるのだ。そうすれば、おそらくは命と運転能力がある限り、永遠に純ガソリン車に乗り続けることができる。
  メーカーが純ガソリン車を作らなくなったら、どこかに電話して「あ、オレだけど。悪いけどガソリン車1台、作ってくんないかな?」と依頼しよう。大富豪のあなたがいえば、たぶん特注で作ってくれる人がいるはずだ。
  そして2050年頃、仮に純ガソリン車の「走行」が完全に禁止されたとしても──世の中にはブラックマーケットというものがある。相場は知らないのだが、たぶん1回の乗車につき1億円ほど払えば、どこかの誰かが純ガソリン車と、それをこっそり走らせるための場所を手配してくれる。何かの手違いで逮捕されるかもしれないが、そのときはそのときである。

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