この記事をまとめると
■デビュー以来その基本的なボディスタイルを変えずに進化を続けているメルセデス・ベンツGクラス
■W460型と呼ばれる最初期モデルは軍用モデルを民間用に転用したモデルだった
■2024年春に登場した最新型Gクラスは時代の要求に応えてBEVも用意されている
軍用モデルを民生用に転用したら大ヒット
メルセデス・ベンツから、新型Gクラスが発表されたのは、2024年の春のことだった。ドイツ語でオフロードビークルを意味する「ゲレンデヴァーゲン」。その頭文字をとって現在では「Gクラス」と呼ばれるようになったメルセデス・ベンツ伝統のモデルは、1979年のデビュー時から直線で構成された、その基本的なボディスタイルを変化させてはいないが、最新のモデルとデビュー時のモデルを見比べると、やはりその違いは大きいことに気づく。
最新のGクラスは、フロントバンパーやラジエターグリルをより現代的なデザインに変更したほか、空力性能を向上させるため、仔細にそれを観察すれば、フロントウインドウまわりのデザインに改良の手が施されているのが分かる。
トップモデルのG 63では軽量なカーボン製パーツもオプションで採用され、運転席からは死角となる前方下部の状況を知るためのカメラ、トランスペアレントボンネットなど、装備面でもさらなる充実が図られた。
インテリアはもはやオフロード・ビークルというよりも、高級なSUVと表現したほうがよいほどのフィニッシュ、そして装備内容を誇っている。
人気の高いディーゼルモデルやG 63では、パワーユニットのマイルドハイブリッド化が行われたのも、新型Gクラスにおける大きな話題だ。
1979年のジュネーブショーでデビューを飾った当時のゲレンデヴァーゲンは、それ以前にオーストリアのシュタイア・プフ社との共同開発で誕生していたミリタリー用のモデルをシビリアン、すなわち民間用に転用したモデルだった。
軍用車としてすでに証明されていた圧倒的な機動性は、民用車としても十分に高く評価されるに違いない。メルセデス・ベンツがそう考えたのも自然なことだった。その堅牢なラダーフレーム構造や、コイルリジッドサスペンションの採用など、多くのメカニズムを軍用モデルからそのまま受け継いでゲレンデヴァーゲンは誕生した。
まずラインアップされたのは、ガソリン仕様が「230 GE」と「280 GE」の両モデル。さらにディーゼル仕様として「240 GD」と「300 GD」が設定され、一方ボディバリエーションは、カスタマーの用途が多様であることを物語るかのように、ロングとショートのほかに後者にはソフトトップ仕様を用意するなど、比較的ワイドな構成となっていた。
セカンドジェネレーションでプレミアムSUVとして大きく飛躍
ボディデザインは現代のGクラスの原型であることに異論はなく、実際にそのコクピットに身を置いてみれば四方の見切りのよさには感動させられるし、また前後のオーバーハングを切り詰めることで生まれた、大きなアプローチ&デパーチャーアングルは、オフロードでの走破性を高めることに大きく貢献している。
ゲレンデヴァーゲンは、メルセデス・ベンツが予想したとおり、市場でカスタマーから確かな支持を得ることになった。その高価な価格設定は、逆に独自のプレステージ性を生み出し、メルセデス・ベンツはゲレンデヴァーゲンを高級オフロードビークルとして、現代流に表現するのならばプレステージSUVとしてさらに進化させるために、1982年になるとその担当部門を、それまでの商用車部門から乗用車部門へと変更。市場で望まれる性能を、さらに追及していく方針をより強く打ち出したのだ。
ちなみに日本市場へのゲレンデヴァーゲンの正規輸入が開始されたのはその後、1987年を迎えてからのこと。ファーストモデルとなったのは「230 GE」のショートボディと、「300 GD」のロングボディの2車種だったが、これを皮切りに廉価版の「230 GEアンファング」など、さまざまなモデルが販売され、高い人気を博していった。
初代ゲレンデヴァーゲンはメルセデス・ベンツの車内型式ではW460型と呼ばれるが、それは1989年にセカンドジェネレーションとなるW463型へとモデルチェンジされる。
このW463型でのもっとも大きな技術的特長は、4WDシステムが、それまでのパートタイムからフルタイムへと変更されたこと。コクピットには3モードのデフロックスイッチが与えられ、それによって前後、センターのデファレンシャルを各々電動でロック、アンロックすることが可能になる。
日常的な実用性やラグジュアリー性とともに、ゲレンデヴァーゲンはセカンドジェネレーションに至っても、そのもっとも重要な性能である走破性をさらなる高みへと導くことを忘れてはいなかったのだ。
そして1994年、ゲレンデヴァーゲンには正式に「Gクラス」の車名が与えられることになる。AMGモデルやV型8気筒エンジン搭載車がデビューしたのもこの世代からだ。
その後も2001年のマイナーチェンジでは、全モデルが5速AT化されるなど、着実な進化を遂げてきたGクラスだが、2018年にはフルモデルチェンジに近い、大幅な改良が加えられている。
アルミニウムなどの素材を使用したことによるボディの軽量化や9速ATの採用。ステアリングもラック&ピニオン式を導入した。外観ではフロントマスクのデザインやリヤコンビネーションランプのLED化などで新型の識別ができるほか、ボディサイズも従来型から大型化されているのも見逃せないポイントだ。
Gクラスは最初に触れたとおり先日、またもや最新のモデルへと進化を遂げた。時代の要求に応えるかのようにBEVさえも用意される新型Gクラス。それはまさに偉大なるオフロードビークルであり、また現代においてはプレミアムSUVにほかならないのだ。