この記事をまとめると
■女性モータージャーナリストの竹岡 圭さんがラリーに出場する
■車両は三菱のトライトンを選択し「圭rallyproject」を立ち上げた
■「ARK ラリーカムイ」と「RALLY HOKKAIDO」に出場する
トライトンを武器に北の大地を駆け抜ける
三菱が今年から正規導入を再開したピックアップトラックのトライトンは、早くも大人気車としてさまざまな層から注目されている、現在の新車のなかでもとりわけ注目株だ。
そんなトライトン。海外では商業車的なポジションで使われているクルマとしてお馴染みだが、数年前に復活した往年の名ブランド「ラリーアート」が、東南アジアを舞台に開催されているAXCR(アジア・クロス・カントリーラリー)に同車をもち込んで激戦を繰り広げている。
ただ格好いいだけのピックアップトラックではなく、走りの面でも優秀な質実剛健な1台なのだ。
そんな注目のクルマを使って、国内ラリーに参戦する”とある人”が先日車両のお披露目を行ったので、その模様をお伝えしよう。
で、ここでいう”とある人”というのは、当媒体のみならず自動車業界でもお馴染みの女性ジャーナリストである竹岡 圭さんだ。竹岡さんといえば、各媒体での試乗記のほか、テレビやラジオ、イベントでの司会といった仕事が我々の目に入るが、日本各地で行われているラリーに、2015年から2020年まで参戦しているベテランドライバーという一面も持つのだ。
「ラリーの資金は将来ポルシェを買うためのお金だったんですけどね。いままでの参戦で消えました(笑)」という、本当か冗談かわからない嘆きも聞こえてきたが、竹岡さんにとってラリーとは、それくらいの覚悟をもってでも挑みたいほどの舞台だったとのこと。
そんな竹岡さんは、2021年はコロナ禍などもあり参戦を休止し、2022〜23年はTOYOタイヤのチームにて出走していたが、2024年から有志たちと一緒に「圭rallyproject」を立ち上げ、今回の参戦発表に至った。
で、ここでひとつ大きな疑問が生まれる。
「なぜクルマがトライトンなのか?」という点だ。ラリーにはもっと軽量で俊敏なクルマも多数参戦している。それなのになぜこんなにも大きな、それもピックアップトラックを選んだのか。きっと多くの人が疑問にもつはずだ。
竹岡さんは「私はかつて、ラリーアートにもっと勢いがあったころ、インストラクターをしていた経験があって、三菱とは長年の付き合いがあるんです。なので、いつか機会があれば恩返し的なこともしたいなと考えていました。そんな想いがあるなか、2023年にタイでトライトンが発表されたとき、その発表会の現場に私はいたんですね。そこでこのクルマを見た瞬間に『これでラリーがしたい!』と惹かれるものがあり、関係者にその場で直談判。紆余曲折あって、今年からサポート及び参戦という形に漕ぎ着けることができました」、という、簡単な経緯を我々に語ってくれた。
実際、先述のAXCRに出ている実績もあるので、三菱で車両を選ぶとなれば、たしかにベストな選択かもしれない。筆者も本格的なオフロードコースでトライトンに少し触れたことがあるが、たしかに動力性能、乗り心地は目を見張るものがあった。ポテンシャルは相当に高いはずだ。
なお、ラリーに参戦するにあたり、今回はさまざまなスポンサー企業も竹岡さんをサポートしてくれている。
まずは三菱自動車。前述のとおり、「竹岡さんにはラリーアートブランドでインストラクターをやっていただいた過去があることから、今回は三菱が竹岡さんをサポートする番だと思っています」と、関係者は意気込む。また、三菱はトライトンをフックにトラックを日本で流行らせたいという想いもあるほか、このクルマを通じてかつての三菱らしさを取り戻したいとのこと。「売れる売れないではなく、ラリー活動などを通して、トライトンの魅力をより多くの人に発信して頂けたら幸いです」と、想いを語った。
トライトンの足もとを支えるタイヤは、TOYOタイヤの大人気銘柄である「オープンカントリーR/T」。竹岡さんは同タイヤのPRもしており、主にジムニーやRAV4といった人気車種にオープンカントリーを組み合わせている女性ファンたちの集い、「オプカン女子部」の部長も務めている。
オープンカントリーは今年41年目を迎える名ブランドでもあるほか、オープンカントリーR/Tのようなブロックタイヤは、昨今のSUVブームには欠かせない人気アイテムでもある。今回の活動を通してより一層、竹岡さんは同ブランドを盛り上げてくれるはずだ。
そのほかには、過酷なコースを走る巨体を支えるサスペンションは、老舗メーカーであるテインがネジ式車高調を提供しサポート。四駆専用設計の「4×4 SPORTS DAMPER」の採用によって、車高は1.5インチほどアップされているとのこと。
上記以外にも、以下のさまざま企業が「圭rallyproject」の活動や車両をサポートする。
・株式会社エスアンドカンパニー:飛び石からフロントガラスを守る特殊フィルム「アーマテック」の提供
・エンパイア自動車株式会社:ハーネスなどでお馴染みのサベルトの日本代理店。車両で使われる2インチ6点式ハーネスを提供
・株式会社オレンジジャパン:トラックから乗用車まで使用できる空気圧センサー「HT430」の提供
・株式会社T.M.Works:野生動物の飛び出しを抑制する「鹿ソニック」の提供
・Moty’s株式会社トライボジャパン:モータースポーツ界でお馴染みのMoty’sオイルの提供
・株式会社ネステックジャパン:韓国のサスペンションやブレーキを手掛けるメーカー。トライトン用の鍛造モノブロックブレーキキャリパー「VITESSE」及びブレーキローターの提供
・株式会社レイズ:鍛造アルミホイール VOLK RACING ZE40Xの提供
・レカロ株式会社:フルバケットシート「RS-G GK」の提供
・株式会社キャロッセ:ロールケージやアンダーガード、LSDの提供
・有限会社キャリーアート:車両輸送やイベントサービスの提供
・エムケーカシヤマ株式会社:「WINMAX」製ブレーキパッドとブレーキフルードの提供
本番目前! 車両は急ピッチで製作
そんな多くの人や企業で成り立っている「圭rallyproject」で使用するトライトン。じつはこの日の公開に至るまで茨の道だったとのこと。
まず、このクルマはタイで製造され仕入れる逆輸入車だ。なので、納期がイマイチ読めない点がある。よって、この車両が届いたのはわりと直前。
そこから、ラリーに出場するための装備などを組み付ける……となるのだが、ここでまた問題がゴロゴロ出てくる。そう。トライトン用のパーツなどほとんど存在しないのだ!
なので、ほとんどの製品を現物合わせでワンオフで作るという突貫作業だったそうで、お披露目の状態になるまで2週間で仕上げたという。そこから車検を取得し、発表イベント日の午前中に撮影を終えて、この現場に運ばれてきたとのこと。
なので、当然ながらクルマはピカピカ。車内はまだ新車の匂いが残っているほどだ。走行距離も数百mレベルらしく、竹岡さんは「午前中の撮影で動かしただけなので、数mしかまだ触れてません」と笑う。
車両のエンジンやミッションはノーマルのままとのことで、ひとまず初戦ではクルマを知って友達になることが竹岡さんの目標なんだそう。市販車の試乗会にも竹岡さんは訪れており、「このクルマは大きな割には取りまわしもしやすく、乗りやすくて乗り心地もいい点が特徴です」と、トライトンの素性のよさもこの場で語ってくれた。
この車両は、シェイクダウンを兼ねて7月5〜7月7日(日)に開催されるXCRスプリントカップ北海道の第3戦「ARK ラリーカムイ」に参戦する予定。このカテゴリーは、全日本ラリーと併催されていることもあり、さまざまな選手や車両が参加することでもお馴染みで、ラリーファンからも人気が高い。観客も迫力ある走りを間近で見ることができる。
また、9月6日(金)〜8日(日)で開催される「RALLY HOKKAIDO」にも「圭rallyproject」は参戦するとのことなので、こちらにも注目したい。
竹岡さんは最後に、「記録より記憶に残る走りをしてきたいと思います」と我々に意気込みを語ってくれた。今年の国内ラリーは、竹岡 圭さんと三菱トライトンのコンビから目が離せない。