"脱炭素と環境循環に貢献したい"様々なカードを世の中に提供するカードメーカーが取り組んだPET混抄紙を用いた国際ブランドカード化への軌跡

2024.06.27 09:21
高機能化が進むカード媒体。世の中を便利にすると確信しながらカードメーカーとして難題に挑む
昌栄印刷は、従来の印刷加工のみならず、情報加工やパートナー企業と連携した取り組みを通じて、時代に見合った「安心」と「安全」をお客さまに提供する会社です。
カードメーカーとしてクレジットカード、キャッシュカード、ポイントカード、IDカード(学生証・社員証)といった様々なカードを世の中に提供してまいりました。


一方でカード媒体は、市場のさまざまな用途に対応する必要があります。カードの形状は規格で定められているため、外見からはわかりにくいですが、実際には高機能化が進んでいます。
このストーリーでは、市場の変化に応えながらカードメーカーとして歩んできた当社の様々な挑戦と、「脱炭素」「環境循環」への取り組みについてお話します。
カードメーカーとしての誇りと挑戦
あまり知られていないことですが、従来カードの表面にあった「磁気テープ」がなくなっているのにお気づきでしょうか? 正確には、印刷層で隠されているのです。これにより、カードという小さな印刷物のデザイン領域が大幅に拡大しました。また、クレジットカードは国際ブランドのレギュレーション変更により、エンボス加工された数字をなくすことも可能になりました。このように注意していれば変化に気づけることもあります。
セキュリティ強化の観点から、ICチップをカードに搭載することで機能が付加され、用途がさらに広がりました。私たちの身近な場所でも、タッチ決済や入退室管理に非接触ICカードが広く利用されています。この薄い一枚のカードには、複雑なアンテナシートやデバイスが内蔵されているのです。カードの高機能化は今後も進み、世の中をもっと便利にする可能性を秘めたツールであると私たちは確信しています。


ところで、皆さんがお持ちの非接触ICカードを斜めにして見てみてください。わずかな凹凸が見えるでしょうか。私たちはカードメーカーとして、それを完全にフラットにするという難題(願望)にも取り組んでいます。
品質面と環境面の両方を備えた共同開発素材「PET混抄紙」、カード市場に認知され浸透させる為に国際ブランド化を悲願
昌栄印刷の親会社である巴川コーポレーション(TOMOEGAWA)はさまざまな高機能性素材を提供してきたメーカーです。TOMOEGAWAグループではそれぞれの特性を活かして、新たなものづくりを行なっていくため、定期的にグループ間でシナジーミーティングを開催しています。


そこで共同開発されたのが、「PET混抄紙(コンバージョンシート)」という素材でした。このPET混抄紙は、PET繊維と紙パルプを混合したもので、「熱収縮による寸法変化率が非常に小さい」という特性があります。
この特性により、カード製造におけるラミネートプレス時にアンテナシートやデバイスの複雑な形状を柔軟に吸収できるという仮説が浮上したのでした。まずは品質面の改善を目指して、この取り組みが始まりました。


次に注目したのは、PET混抄紙がPET繊維と紙パルプを組み合わせた混合素材であるという点でした。世の中の脱プラ・減プラの流れに合わせて、PET混抄紙を使用したカードをリリースすることで、資材調達から製造の過程においてプラスチック使用量を削減できると考えたのです。
こうした経緯から、品質面と環境配慮の両面を兼ね備えたPET混抄紙カードの開発が社内で一気に進んでいきました。


その後、試行錯誤を繰り返し、PET混抄紙カードとしてリリースされた第1弾は、高機能デバイスを搭載したカードでした。これにより、非接触ICカードの製品化を実現しましたが、さらにPET混抄紙カードを市場に広く認知・浸透させるために、国際ブランドカードへの展開が私たちの悲願となっていったのです。
昌栄印刷の魅力の一つは創業以来、社員総動員で突破口を切り開いてきた歴史であり、その精神は今も受け継がれていると強く感じています。


〈昌栄印刷 昭和30年以前の記録より〉
厳格な品質検査に試作と検証を繰り返し、減プラ素材国際クレジットカードの開発に成功
昌栄印刷は、1980年代以降に国際ブランド(VISA・MasterCard・JCB)から製造認定を取得し、多種多様なクレジットカードを市場に提供してきましたが、独自の素材を使用した製品を開発することは初の試みでした。


PET混抄紙素材を使用したクレジットカードをリリースするには、国際ブランドの厳格な品質検査に合格する必要があります。この品質検査では、外観、機能、加工適正など様々な基準を満たさなければならないのです。ここではお伝えするできない極めて高いハードルの開発でしたが、何度も何度も試作と検証を繰り返した結果、2022年2月にVISAから国内初の紙パルプを含有するPET混抄紙IC国際カードの製造認定を取得することができました。その後、MastercardとJCBからも製造認定を取得し、現在では全ての国際ブランドのICカードを製造できる体制が整っています。
滋賀県産のスギやヒノキ由来のパルプを代替した「HOP-VISAカード」を実現
PET混抄紙IC国際カードは、1枚あたり約10%に紙パルプを含有しており、200万枚のカードで約1トンのプラスチックを削減することができます。これはストロー約120万本分、またはレジ袋約20万枚分に相当します。
この取り組みは2023年10月に、平和堂と三井住友カードが協業強化の一環として「HOP-VISAカード」をリニューアルする際、「三方良い関係」を体現するカードとして、PET混抄紙カードを採用いただきました。
平和堂は滋賀県発祥で、近江商人の三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)との理念があり、この「HOP-VISAカード」を平和堂、商圏のお客さま、地域・環境との関係性の象徴となるカードにしたいと考えていたそうです。そこで、PET混抄紙素材に、滋賀県産のスギやヒノキといった間伐材由来のパルプに代替できないかと相談を受け、試行錯誤の結果、実現することができました。これらの取組が評価され、「HOP-VISAカード」は、国内の小売業のクレジットカードで初めてグッドデザイン賞を受賞しました。
さらなる付加価値向上のためバイオマスマークの認定を取得
さらにPET混抄紙IC国際カードをご採用いただく企業に対して付加価値を提供したいと考え、2023年12月に一般社団法人日本有機資源協会からバイオマスマークの認定を取得しています。
これにより、昌栄印刷が提供するPET混抄紙IC国際カードの券面には「バイオマスマーク」を表示することも可能となりました。
日常の生産活動でも貢献したい。国際クレジットカードにカーボンオフセットを実現
このように、国際ブランドカードを始めとするカード製品にPET混抄紙を採用することに成功しましたが、日常の生産活動においても、社会の「脱炭素」および「環境保護」に貢献したいという考えはすでにあり、すでに実施継続しています。
2012年より、東日本大震災復興支援として金融機関向けに提供するすべての通帳に自主的にカーボンオフセットを付与してきました(現在は復興支援制度自体は廃止)。


そして、この取り組みを国際クレジットカードにも適用できると考え、工場生産における国際クレジットカードの製造および発行工程で排出されるCO2の量を算出し、プロバイダーを通じて日本国政府管理下の無効化口座に移転申請することでカーボンオフセットを実現しました。
バイオマスマーク同様、昌栄印刷が提供する国際カードには「カーボンオフセットマーク」を表示することも可能となっています。
反響を得たカーボンオフセットへの取り組み。真の目的は「脱炭素」「環境循環」に関心を持っていただくこと
これらの私たちの取り組みに共感いただき、PET混抄紙IC国際カードおよびバイオマスマークの認定取得について、今回紹介しました三井住友カードの提携カードである「HOP-VISAカード」にいち早く採用いただいており、さらにIDカード(学生証・社員証)に広く採用されているFeliCaカードの素材としてPET混抄紙を使用した製品を今春リリースしました。
また、カーボンオフセットについては、2023年12月以降に昌栄印刷が製造・発行した国際クレジットカードにすべて付与されていますが、国際クレジットカードに限らず顧客の要望に応じて他のカード製品にも適用可能です。


ありがたいことに、この取り組みは数多くニュースとして拡散されたこともあり、複数の顧客から反響と問い合わせをいただいております。
カーボンオフセットを活用しながら、排出量削減とカーボンニュートラルの実現に向けて、着実に歩みを進めています。
これらの活動を通じて社員の環境意識が高まっており、パートナー企業と連携して金融機関向けの減プラ通帳ケースをリリースしています。こちらも数多くの金融機関から賛同いただき、SDGs活動の一環として採用されています。


このような環境配慮型製品の開発・販売は事業拡大の一端にはなりますが、真の目的は私たちが提供する製品に触れるお客様やステークホルダーの方々が「脱炭素」や「環境循環」といった活動に関心を持っていただくことだと考えています。
柔軟な適応力と高い機動力を強みに。事業拡大と社会貢献の両立を目指す
昌栄印刷は国内でわずか4社しかない国際クレジット製造・発行認定メーカーの一つであり、また、国内で5社しか存在しない通帳製造メーカーの一つでもあります。次世代の技術進化や市場の変化に柔軟に対応できる適応力が大きな強みです。
また、中小企業としての高い機動力を活かし、大企業にはない迅速な意思決定や顧客対応が可能です。この希少性は、信頼性、高品質、技術革新、柔軟性、持続可能性など、多方面での価値を次世代に提供することにあります。


これらの特性を活かし、次世代に向けた成長と発展を目指すことが私たちの使命であり、存在意義だと考えています。そして、地域社会や環境への配慮を大切にしながら、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでまいります。






■昌栄印刷/PET混抄紙IC国際カード
URL:
■昌栄印刷/バイオマスマーク認定
URL:
■昌栄印刷/カーボンオフセット
URL:
■巴川コーポレーション/コンバージョンシート(PET混抄紙)
URL:
■平和堂/HOP-VISAカード
URL:

あわせて読みたい

老舗紙屋と亀田製菓が紙素材を協業開発!お米の形をした「おこめ名刺」に導入
STRAIGHT PRESS
知ってる?Apple Payにデビットカードを登録する方法
@DIME
カヌレの形をした可愛いシュークリーム「カヌレドシュー」そごう広島店催事にて期間限定販売
PR TIMES Topics
共同印刷の「コンテンツキャリア(R)」が、漫画誌「ハルタ」の定期購読の追加特典に採用
PR TIMES
【韓国旅行】現地での支払いは現金、クレジットカード、何が便利? - ゼロからわかる!楽しく続けられる! 韓国語1年生
ダイヤモンド・オンライン
暮らしや用途に合わせてさらに選びやすく!燃焼時間が短いショートサイズを新たにリリース
PR TIMES Topics
土足対応WPCフローリングに、バイオマス由来材料を用いた『バイオリーフ』シリーズを追加
PR TIMES
お出かけグリーンアクション「OFF&GO」を7月15日から実施します
PR TIMES
見た目も味わいも“東京ばな奈らしさ”にこだわった「東京ばな奈 発酵バターラスク」新発売
PR TIMES Topics
【平和堂】平和堂こだわりブランドE-WA!  新商品 E-WA!植物由来の泡 無添加ボディソープ
PR TIMES
【平和堂】6月13日(木)、平和堂ネットスーパー をアル・プラザ香里園で開始
PR TIMES
モノの収納だけでなく庭での時間も楽しめる1坪空間「GARO」発売
PR TIMES Topics
創業50周年記念モデルパナソニック製「eneloopライト充電器セット」「LED電球」を『YAMADA GREEN』に認定
PR TIMES
常裕パルプ工業が「国際文具・紙製品展」に初出展!介護に優しいおしりふきなどを展示
STRAIGHT PRESS
あなたの沿線で「交通系ICカード」乗車が消える日
東洋経済オンライン
つくばエクスプレスの一部駅、タッチ決済とQRコードでの乗車が可能 2025年度内に
ITmedia Mobile
「アスエネ」企業のCO2排出量を見える化するクライメートテック企業として、B Corp™︎取得
ELEMINIST
「クレカタッチ」は交通系ICカードを駆逐するのか
東洋経済オンライン