【試乗】新型シトロエンC3は革命を呼びかけるヤバいクルマ! 日本上陸前に本国でBEVの「ë-C3」に乗った!!

2024.06.15 19:00
この記事をまとめると
■シトロエンが欧州で新型C3を発表
■今回のフルモデルチェンジで4代目となる
■BEVモデル、ë-C3に試乗する機会を得た
新型C3の本命はピュアBEV
  現行の3世代目C3は全世界で560万台超、日本でも1万台を超えるメガヒットを飛ばした。4世代目へと進化するにあたり大胆なモデルチェンジを敢行した、新型C3の国際試乗会に参加してきた。
  昨今のEUロジックで、シトロエンにとってC3の完全BEV化はメニューのひとつだった。しかもステランティスグループの「スマートカー・プラットフォーム」と呼ばれる、まったく新しいプラットフォームを採用し、部品点数の削減を可能にした(=コストを抑えつつ)。さらに、シャシーの補強メンバーの合間に厚みを抑えたセルを複数入れることができ、低重心化を図った点もBEVネイティブのプラットフォームらしさだ。
  とはいえ通常のFFレイアウトによるマルチパワートレイン化にも対応している。1.2リッターターボのピュアテック100馬力+6速MT仕様が用意されるほか、日本にも来年の初夏に上陸するはずのハイブリッド、MHEV+eDCT6速は年内に生産がスタートする予定だ。
  後者がおそらく、前者から数kg増しのAT仕様であることを鑑みても、ベースといえるMT仕様はシンプルで滋味深い仕様だった。中低回転域が力強くて軽快、かつ小気味いいハンドリングは古典的だが、MTシフトのがっしり感とボディ剛性の高さが際立っていた。事情が許せばこちらも限定台数などで導入してほしいが、円安や型式認証といったハードルの高さは否めないだろう。
  話がやや逸れたがとどのつまり、新型C3の本命はやはりピュアBEVだ。上位機種のë-C4に先んじて、より進化したプラットフォームを投入する理由は、欧州Bセグはいま、BEVの群雄割拠状態で各社が個性を競わせている状態だからだ。ルノー系はダチア・スプリング、フォードからはE-プーマ、アメリカで発売しないジープ・アヴェンジャーはEVメインのモデルで、フィアット600やコルサ・エレクトリックも控えている。
  まぁ後3者はステランティスグループなのだが、ひとたび市場に出れば競合相手というのも、グループのロジックなのだ。
  そこで、新型C3の切り札は「バリュー・フォー・マネー」。エントリーグレードの「YOU」と高級グレードの「MAX」というふたつのトリムがあって、本国での車両価格はそれぞれ2万3300ユーロ(約396万1000円)~と2万7800ユーロ(約472万6000円)~に設定されている。円安でそう見えないが、これは欧州ではかなり野心的な価格設定だ。
  しかも、ただコスパに優れて手が届きやすいだけでなく、乗る人に価値をもたらす使い勝手とデザインに注力したという。急速充電時は100kWの充電スピードを確保し、44kWhのLFPリチウムイオンバッテリーは26分で約80%まで充電可能。そして、シトロエン最新のデザインランゲージを採用し、新ロゴ第一号採用車ともなっている。
  事前に見た画像では、いかつくて複雑化したように見えたエクステリアは、実車を目の前にするといろいろと印象が変わる。「抉(えぐ)り」を多用したボディの表面処理が、筋肉マッチョに見せるより、クルマを一周するウエストラインをキレイに見せるための工夫と気づく。‘グレーディング’と呼ばれる、斜めに溝を切った各部の樹脂パネルは、見る角度を変えるたびに手前が開いて奥が閉まるような、フランス得意の「トロンプ・ルゥイユ(視覚的な騙し絵のこと)」効果で、彫琢されたボディも相まって、クルマをさらにコンパクトに見せる。
  キツくなった感じのフロントマスクは、三菱デリカミニほどではないが、実物はずっとファニーな雰囲気だ。大小3本のクラスター型のLEDを組み合わせた新しいライトシグネチャーも、適度でキツ過ぎず表情を引き締める。
  さらに注目すべきはボディサイズだ。全幅も全長もC3ハッチバックから5~20mmほど大きいだけで、小まわりの感覚はほぼ変わらない。ただし、車高は1577mm(ルーフレール含む)と100mm近くC3ハッチバックより高くなり、室内の余裕感も当然、ワンランク上がっている。
  BEVゆえバッテリーで重心が低くできる以上、ルーフを高くして視界も室内の広さもアゲアゲで行こう、という方向性だったとか。いわばSUVルックは結果としてそうなっただけで、目的だった訳ではないのだ。
広い速度域でしなやかな乗り心地を実現
「必要となる」大義が生じてこそ、簡素でも練り込んで作るのが、フランスひいてはシトロエンの伝統芸だ。室内に目を移すと、ダッシュボードはエアコンのベンチレーターを一体化しつつ、まるで収納家具のような2段構造で、真ん中に小物を載せられる点は、ほとんど2CVのよう。乗り込むたびに目にするこの場所に、2CV的かつ実用的な意匠を盛り込んでくる辺りが、お洒落過ぎる。しかも、ハードプラスチックのカサカサした質感ではなく、スリットの入ったファブリックが下段に張られていて、質感の面でもビンボー臭さが微塵もない。
  ただし、ノスタルジックな雰囲気だけではなく、10.25インチのタッチパネルやスマホのワイヤレス充電トレイ、プジョーのi-コクピット同様にステアリングの上から読み取るミニマムなメーターなど、モダンさも忘れられていない。エアコンの操作スイッチも質感のいいトグルスイッチとなっている。シトロエンはこれらのインテリアロジックを「C-ZENラウンジ」と名づけ、今後はほかの車種にも展開していくはずだ。
  シートも上位車種と同じく「アドバンストコンフォート」化され、先代よりクッション厚が10mm増した。ルーフ高に余裕があるからこそできる芸当で、しかもルーフ内側にはこれまた2CVを彷彿させる横方向の補強バーがみてとれる。
  後席乗員のレッグスペースも、大人に無理を強いない程度に確保され、6:4分割リヤシート後方のトランクには、310リットルの容量が与えられている。細かいところだが、グローブボックスを開けると歴代のシトロエンが姿を見せたり、リヤウインドウにエッフェル塔をはじめとしたパリの街並がプリントされているあたりは、隠された愛嬌ディテールといえる。
  観察すればするほど、シトロエンの快適さというか勝利の方程式に絡めとられていく気がするが、走り出すとそれは決定的になる。重いバッテリーを提げているがゆえ、平滑な道路では電子制御の可変ダンパーで乗り心地もフラットだが、少し凹凸のある路面を低速で通過すると途端に足もボディも暴れ出すのが、凡百のEVの常。ところが新しいC3ときたら、しなやかで滑らかな乗り心地が、市街地での徐行域から100km/hでカントリーロードを走る局面まで、まったく変わることなく持続する。踏切の継ぎ目とか、パッチ路面でサイクリストに囲まれて速度を落とした際でも、イヤらしい突き上げやドタバタした縦揺れが、一切ないのだ。
  これもアドバンストコンフォートパッケージの効能で、PHC(プログレッシブ・ハイドロ―リック・クッション)による二重の減衰がきいたダンパーを備えるゆえだが、Bセグのジオメトリーで1.4トンを巧みにコントロールできる、新プラットフォームの剛性の高さにも帰せられるだろう。
  平滑な道を直進するとき、ステアリング中立付近がやや心もとないフィールはある。それでもコーナーでステアリングを切り始めれば、速度に対して車体のロールスピードはつねに速すぎず、ジワリと安定した感触で追従してくる。この盤石のロードホールディングと頼もしいトレース性を利して、少し荒れたカントリーロードをハイペースで、しかも快適に駆け抜けられるのが、C3のスイートスポットといえる。
  120NmというトルクはBEVとしては笑っちゃうぐらい非力なはずだが、いざ加速すればトルクカーブが高止まりしてフラットに仕事するので、1.4トンはBEVとしては決して重くないことを思い知らされる。135km/hでリミッターが利くものの、83kW(113馬力)のトップエンドまで使い切る必要はほぼない、という現実的なセッティングでもある。
  かようにC3は、闇雲にチェンジを求めただけの一台ではない。それこそ欧州の庶民感・生活感を反映するBセグメント・スモールが、電動化の必要性に背中を押され、ここまで快適になることに驚かされ、圧倒される。太古の2CV的アプローチが健在な一方で、今回のMT仕様のボディカラー、ブルー・モンテカルロとホワイトのツートンは、2CVにインスパイアされた色でもある。
  ちなみに本国でのC3のCMは、「EVはもはやエリートだけのものではない」という売り文句で、フランス革命を彷彿させる動画となっている。微に入り細に入り練り込まれた優等生グルマどころか、革命を呼びかけるなかなかヤバい一台ということだ。

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