兵庫県神戸市のマツダ株式会社は1968年創業の段ボールの古紙問屋です。
当初は古紙をメインにお客様とお付き合いをしてきましたが、お客様の声に敏感にお応えした結果、産業廃棄物処理業の許可を取得し、発泡スチロール等のプラスチックや食品残渣リサイクル処理業に従事しています。
食品残渣リサイクル処理業からの派生事業として農業にも進出し、リサイクル処理業で生成した液体堆肥を使って農作物も生産する。また企業で属人化されがちな廃棄物情報及びコンプライアンス管理をするための廃棄物総合管理システム“Wing”を開発し、さまざまな廃棄物に関わる分野に貢献する企業へと成長してきました。
そんなマツダ株式会社がなぜプラスチックの再生ペレットメーカーとして乗り出すのか、そして本プロジェクトの進捗や今後の展望について、ご説明します。
マツダ株式会社は食品リサイクルや廃棄物のシステム開発などお客様の声に耳を傾け、新しいことに挑戦し続けます!
中国の環境汚染問題
中国は1980年代から世界最大の廃プラスチック輸入国であり、2012年には世界の輸出プラスチック廃棄物の56%を受け入れていました。しかし、輸入された廃プラスチックの多くは汚染されており、適切に処理されないことが多く、環境汚染や健康被害を引き起こしていました。これにより、中国国内での廃棄物処理能力の限界が露呈し、輸入禁止の決定がなされました。
規制の影響
この規制により、世界の廃プラスチック貿易は大きく変動しました。中国が廃プラスチックの輸入を停止したことで、廃プラスチックの行き場を失った多くの国々は、東南アジア諸国(マレーシア、タイ、ベトナムなど)や台湾に輸出先を変更しました。しかし、これらの国々もすぐに輸入規制を強化し、廃プラスチックの処理が困難になりました。
当社でも上記の問題が起こり、今までリサイクル製品として購入して頂いていたものが現在中国に輸出を行っている、ストレッチフィルムやPPバンドなどの行き場がなくなりました。
輸出の規制対象に当たらないリサイクル素材を自社で製造することを決意
マツダ株式会社が再生ペレットメーカーとしての取り組みを始めたのは、廃棄物の総合リサイクル企業としてリサイクル率の向上を目指したことに起因します。
前述の通り、中国側の輸入規制が行われたことにより、世界の廃プラスチックの動きが大きく変わりました。当社も初めは東南アジアなどに輸出をしていたのですが、世界の54%が中国という中で、東南アジアの方も急な対応によりキャパに限度がありました。廃棄物だから輸出の規制対象になるわけであり、リサイクル素材でしたら輸出規制に当たらないと考え、自社で製造を決意致しました。
サーキュラエコノミーを目指しサプライチェーンの中にリサイクル素材を
マツダ株式会社は、廃プラスチックを再生ペレットに変換することで、環境負荷の軽減と循環型経済の実現に寄与します。また、このペレットを製造することにより、輸出規制の影響を受けない安定したビジネスモデルを構築します。これにより、企業のサプライチェーンを持続可能なものに変革し、長期的な環境保護を実現します。
プロジェクト開始当初、マツダ株式会社は自社で素材を作ったことがなく、機械の扱い方がわからないという課題に直面しました。また、素材の分別がうまくいかず、なかなか品質の高い素材を作り出せないという問題にも直面しました。しかし、試行錯誤を重ねることで、技術を習得し、品質の高いリサイクル素材を製造できるようになりました。
現在、マツダ株式会社はストレッチフィルムやPPバンドを順調に再生ペレットに変更することができています。さらに、多くのメーカーから廃プラスチックのリサイクル処理依頼を受け、ストレッチフィルムをゴミ袋に生まれ変わらせたり、様々な製品への再利用を実現しています。
マツダ株式会社は"はばたく中小企業・小規模事業者300社"の1社に選ばれた
マツダ株式会社は、中小企業庁の2023年度「はばたく中小企業・小規模事業者300社」の1社として選ばれました。今年3月13日に都内で催された授賞式には、松田禎一社長も招かれました。同賞は、2018年に創設されたもので、生産性の向上や新規需要の取り込み、多様な人材活用などに積極的な中小企業・小規模事業者を独自に評価し、選定するものです。同社は今回、「人への投資・環境整備」部門で選ばれましたが、まさに廃プラ事業では従業員が主体的に課題への対処を見つけ出し、そこへ積極的に設備投資を行ってきたものです。
同社の尼崎プラスチックファクトリーは兵庫県尼崎市内にあります。工業専用地域で土地は約500坪の広さ。設備として破砕、洗浄、比重分離、脱水、ペレタイザーの1ラインを備える。当初の設備投資額は5億8千万円。ペレットの生産能力は1時間あたり800~900kg。工場は5名で稼働しており、12~13時間稼働となっています。2023年12月時点で稼働率は3~4割程度で、月間200トンのペレットを生産・供給しています。
廃プラの原料は、軟質系・硬質系ともに受け入れ、品目としては①ストレッチフィルム、②PPバンド、③雑色プラの3種が中心。大半がストレッチフィルムで、PPバンドは1~2割程度です。雑色プラとは、色付きフィルムやプチプチなどの雑多なPE素材の廃プラのことです。
再生PPバンド
ペレタイズの流れは、ベール品を開梱→手選別→破砕→金属探知機で異物除去→カッターコンパクターで粉砕→200℃前後に過熱→レーザーフィルター(100~130メッシュ)→ホットカット式のペレタイザーで再生ペレット製造となっています。
再生ペレットは、ストレッチフィルムとPPバンドの原料に由来する2種類ですが、原料の品質差によって、グレードも細かく分かれます。その販売先は、国内と海外で4:6の割合となっています。輸出のほうがキロあたり10~15円高い水準ですが、市況リスクや国内でのクローズド・リサイクルの案件も増えてきたため、両ルートの特性を加味し、販売しています。
今年5月に稼働する新ラインでは、前処理で洗浄・比重分離の能力を高めたものを導入し、再生ペレットの品質を高めることは、近年高まっているクローズド・リサイクル向けのニーズとも合致します。当社では、再生ペレットを用いて、協力先の企業とともに①ごみ袋、②建設用敷板、③アスベスト処理用袋を製造し、排出企業へ再び納入するルートを築いています。①は廃ストレッチフィルムを90%配合(残る10%は工場端材またはバージン原料)したもので、提携している製袋業者に委託して製造しています。
また、株式会社シモジマと協業し、再生ペレットを使用し製造するごみ袋を兵庫県西宮市における指定事業系ごみ袋として認定を受けました。同市は2022年7月から事業系ごみの指定ごみ制を導入。通常、指定ごみ袋はその自治体の認可登録を受けたものだけ、販売が認められます。海外製の安価なものが普及しており、国産でかつ再生品が採用されたのは、画期的なケースといえるでしょう。当社とシモジマでは、90Lサイズで約10万枚、45Lサイズで約2~3万枚を供給しています(いずれも年間)。とはいえ、価格は45Lサイズで一枚あたり24.8円とバージン材の袋にくらべると48%も高いです。自治体が再生材の配合を条件にしたり、排出元企業が環境価値を認めたりしていけば、こうした再生ごみ袋は普及していく可能性があります。
また、当社では廃プラを再生したペレットや製品を、「プラRE(プラリ)」という名称で売り出す。①reborn(再生した、生まれ変わる)、②resupply(再供給)、③revolution(循環・回転)の意味合いを盛り込んだものだ。資源循環に資するイメージを打ち出し、3Rを推進していきます。
2024年5月に1ライン増設事業系ごみ袋でクローズド実現
マツダ株式会社の尼崎プラスチックファクトリーは、今年5月にペレタイザーなどを1ライン増設します。同工場は2021年5月に稼働し、ストレッチフィルム・PPバンドから再生ペレットを製造・販売してきましたが、新ラインで前処理を強化して幅広い有価プラスチックを受け入れ、高品質なペレットを供給します。本業の古紙と廃プラを合わせて回収することで、物流コストの課題を乗り越えてきました。また、「プラRE(プラリ)」という再生プラのブランディングやクローズド・リサイクルにも力を入れていきます。
プラスチックリサイクルループ
廃材フィルムから作ったリサイクルゴミ袋の導入事例について
私たちは、持続可能な未来のために絶えず挑戦し続けています。今回のプロジェクトは、私たちの技術と経験を最大限に活かし、環境問題に積極的に取り組む一環として大きな意味を持っています
マツダ株式会社について
マツダ株式会社では、廃棄物に関わる課題について解決致します。"「捨てる」をなくす"という経営理念のもと、まずは有価物にすることを軸に考え、廃棄物の処理コストの削減を目指します。
環境問題に配慮した企業様の産業廃棄物の処理の適正化、リサイクル率アップに貢献致します。
会社名:マツダ株式会社
所在地:〒658-0042 兵庫県神戸市東灘区住吉浜町17-8
設立:1968年6月
資本金:9,500万円
代表者:代表取締役 松田 禎一
事業内容:
廃棄物マネジメント事業
廃棄物総合管理システム wingの運営
再生可能エネルギー事業
古紙回収及び加工処理卸売り
産業廃棄物中間処理業務
産業廃棄物収集運搬業務
機密書類処理業務
食品リサイクル
廃プラスチック・金属買取
プラスチックペレタイズ事業
リサイクル品及び資材販売事業
URL: