超高齢社会が抱える問題に真正面から向き合う司法書士が見つけた士業の役割とは?任意後見制度が悩める日本を救う理由

2024.05.21 18:20
勝司法書士法人は「そなえる後見」という名で増加する認知症患者の財産管理を行う専門部署を設置しています。
設置後の契約は200件を超え、2023年5月には新たに専門知識や士業界では珍しい営業スキルの獲得まで網羅した後見・相続の専門講座を開設。高齢社会を支える任意後見の専門家育成に力を注いでいます。


「任意後見が当たり前の世の中にしたい」
そう話すのは代表の勝 猛一(かつ たけひと)氏。司法書士の世界でもトップを走る勝司法書士法人が、なぜ、自身のノウハウを公開してまで任意後見制度にこだわるのか?そこには日本が抱える超高齢社会の問題に正面から向き合う強い使命感があったからでした。
超高齢時代になり、自分たちの財産の行く先に不安を感じる高齢者が増えてきた
超高齢社会を迎えた現在、5人に1人が65歳以上の高齢者といわれる中、認知症患者も増加。高齢者の人口がピークに達する2040年には人口の30%を65歳以上が占めると予想されています。また、認知症を患う高齢者も800万人を超えるといわれています。


「もしも認知症になったら自分の財産はどうなるのか?」
そんな不安を抱える高齢者のために、勝司法書士法人は将来認知症になった時、その高齢者に代わり財産管理を行う任意後見をメインとする専門部署を立ち上げました。


本来、不動産や会社や登記業務がメインであるはずの司法書士が、なぜ任意後見を積極的に行うのか。その理由を代表の勝 猛一氏はこう語ります。


勝:人生100年といわれるようになった今、いつ発症するか分からない認知症で自分の財産の行く先に不安を抱える高齢者の方が増えていると感じています。
「今はまだ残したい相手が決まっていない」「兄弟や身寄りも高齢者だし、将来、誰に財産管理を頼んだら良いか」と悩んでいる方のために、専門家である我々が何かできることはないかと考えた時、任意後見という形であれば不安を抱える高齢者をサポートできるのでは?という思いではじめました。
海外では当たり前の任意後見が日本で広まらない理由は「後見人は裁判所が決めるもの」という認識が広まっているから
後見制度とは認知症などで高齢者本人では判断が難しい状況に陥った際、代理人が生活に必要な支援や財産管理を行う制度です。海外では自身の代理人を指名できる任意後見制度が主流であるのに対し、日本では裁判所が任命する法定後見制度が大多数を占めているといいます。


勝:海外では任意後見を使うのが当たり前。将来のことを考えて自分で後見人を選び契約したり、ネットで登録しています。任意後見制度ではご本人やご家族が自分たちの財産の使い道などを自由に決めることができます。例えば、不動産の売却、介護の手続き、施設の入居など自分の希望がしっかり反映できますし、遺言を残すこともできます。


日本の場合、認知症など何らかの原因で意思表示ができない状態になった時に、裁判所が専門家から代理人を選ぶ法定後見制度が大半を占めています。その利用率は98%。対して任意後見がスタートしているのはわずか2%と社会的に認知すらされていない状態だそうです。
ただ、法定後見制度は制約が多く今の時代に合っていないと勝代表はいいます。


勝:法定後見という制度は、本来、最後の砦なんです。なのに日本ではみんなが法定後見を使わざるを得なくなっている。後見人は裁判所が指定した司法書士や弁護士などの専門家が選ばれることが多い。
また、法定後見制度では相続対策や資産運用などもできません。
勝: これから認知症の患者さんはどんどん増えていく。そうなると高齢者の家族は本人と会話もままならないまま、5年、10年と介護を続けていくことになる。もう、想像を絶する苦労をされているんです。
介護だけで手一杯になるのは当然ですよね。そんな中、相続や財産管理までとても手が回らない。高齢の配偶者さんなんかはもうやり切れないから、両親が同じようなタイミングで亡くなり2つ相続が発生するなんてこともよくあります。そうなると残された家族に大きな負担が掛かることになります。


こうした問題は日本全国で起きている。なのに新しい制度は使われないまま。だから我々のような専門家が後見人として、高齢者やその家族を法的な面で支えていくことが重要なんです。


身寄りのいない高齢者や子どもや兄弟と離れて暮らしている高齢者で、認知症や自身の財産管理に不安を感じる方は全国に大勢いらっしゃいます。勝司法書士法人は大阪・東京・横浜の3カ所で任意後見業務を行っていますが、我々だけではとても対応しきれない。


これから増える高齢者の力になるにはどうしたらいいのだろう?


そう考えた時に「自分の持っているノウハウを多くの方に伝えていくことが僕の使命なんじゃないか」と気付いたんです。
2025年には5人に1人が認知症に 後見人問題は士業全体で取り組まないと社会は救えない
勝司法書士法人では士業界で活躍する若手に任意後見人制度や営業のノウハウなど、長年培ってきた自身のスキルを余すことなく伝える講座を開講しています。
任意後見に関する専門知識だけでなく、営業や契約までの実践的なノウハウなど自身の体験や営業手法を公開することは珍しいことですが、これも多くの方が任意後見制度を利用できるための大切な活動だと勝代表はいいます。


勝:今後、自身や家族の将来に不安を抱える人がますます増えていきます。こうした人たちが安心して暮らせるように、僕と同じように後見業務を事業の柱にしながら任意後見を世の中に広めてくれる仲間を増やそう。
そう思い2023年から「後見・相続を業務の柱とするための実践ガイド・営業スキル講座」を開講しました。現在、広島や東北など全国の司法書士の方が講座を受講しています。
後見業務は契約者以外にご家族や医療機関・福祉施設・金融機関などさまざまな関係機関との連携が必要になります。士業は事務的な業務が多く、裁判所や関係業界から依頼を受けた業務を行うのがほとんどです。登記業務などに慣れている士業の方にしてみると「後見業務は大変だからできれば避けたい」と思う人もいます。


僕も以前は会社や不動産の登記を主に業務を行っていました。ですが、2008年のリーマンショックで士業全体が大きな打撃を受けたことで、今までの仕事のあり方を見直すようになり、相続や任意後見業務を新たに事業に加えました。
任意後見を通して、依頼者から直接「ありがとう」と声を掛けていただけることのうれしさや、ご家族からその後の登記や相続手続きなどのご依頼をいただけることを身をもって経験したことで、任意後見という業務が士業のひとつの事業の柱になることを実感しました。


僕は今の裁判所主導の法定後見ばかりでは、後見人が充分なサポートをしていくことに限界があると感じています。やはり、士業が先頭に立って仕事としてしっかりと責任を持って業務を進めていかないと後見制度は社会に根付かないと思っています。
講座では、後見人業務はもちろん、実際に依頼につながる営業の方法も余すことなく伝えています。
任意後見がどれだけ高齢者自身や高齢者を持つ家族の役に立つ制度なのか。また、社会にとって必要なものなのかを士業界全体で広く伝える仕組みができれば、日本でも任意後見が社会的に認知されると確信しています。
一人の女性の人生を変えた任意後見という仕事
勝代表は士業向けの講座を運営する傍ら、全国各地に赴き一般の方向けに任意後見制度について講演をはじめ、WebやSNSでの情報発信などの普及活動を精力的に行っています。
勝:僕が任意後見業務をはじめた頃、あるシステムエンジニアの方に事務所のHPを整えてもらうことがあって。後見業務のことを知ってもらわないとページは作れないと思って、彼女にも業務に加わってもらったんです。


僕たちと一緒に高齢者の方とやり取りをしてもらっていたのですが、公正役場で公正証書を作った時、依頼人から「ありがとう。これで安心して死ねるよ」と言葉をいただくことがあったんです。
僕は「いやいや、これから長生きするんですよ」と言ったのですが、彼女は帰りの車の中「こんなに喜んでもらえる仕事があるんですね」と言いながらで声を出して泣いていました。


パソコンの世界で生きている彼女にしてみると、こんなに依頼人と深く関わる経験をすることは初めてだったんだと思います。自分のおじいちゃん・おばあちゃんのような方に手を取って「あなたがいてくれて良かった」と言われたことで、任意後見という仕事がどれだけ意義のある仕事なのかを感じてくれたようです。今はNPO団体で後見に関わる活動を続けてくれています。
高齢者だけでなく、貧困層の子どもたちの暮らしを支える担い手を育てていくことが自分の使命
勝司法書士法人では、高齢者の方が将来、認知症になった時のお守りとして任意後見という制度を利用してほしいと後見人業務を行っていますが、勝代表は「任意後見制度は高齢者だけのものではない」といいます。


勝:日本では認知症、独居などさまざまな事情で、故人が望まない形で国に移譲された資産は800億円弱にも上ります。こうした資産を子どもたちや若い人の元に届けられたら、今日のご飯が食べられない子たちを救うことにつながると思うんです。


地方で子ども食堂をしている団体もありますが、やっぱりできることに限界はある。ニュースでもお金に困った10代の若者が老人を騙したり、犯罪に手を染めていることを報じています。そういうニュースを目にするたび、僕の残りの人生で何かできることはないのかと考えるようになったんです。


世の中の大人が困っている子どもたちに手を差し伸べることができたら「俺たちは生きていていいんだ」と安心してくれるんじゃないか。将来、社会に出た時に明日の日本を支えてくれるんじゃないかと思うと、次の世代のためにも自分が隠し持っていたノウハウをオープンにして任意後見を広めることがこれからの自分の使命だと感じたんです。


今は士業向けに講座をしていますが、将来的にはそれだけでは間に合わないと感じています。ゆくゆくは親子間での後見人契約や講習を受けた一般の方が後見人として活動できる市民後見人など、誰もが後見人として活動できる世の中にしていきたいと思っています。


兄弟がいる家庭では特定の子どもが後見人になることでトラブルになる。市民後見人を指名することで、お金のトラブルが起きる可能性があるという理由から裁判所は一般の方でなく司法書士や弁護士を後見人に指名します。


ですが、これからの世の中、限られた専門家だけでは高齢者の財産を守り切れない日がやって来る。そうならないためにも相続や任意後見について解説動画を一般の方向けにYouTubeやTik-TokなどのSNSではじめました。
僕の元に来られる80代、90代の方はYouTubeを見ることはないですが、子ども世代や孫世代の方は見られるので。SNSを通じて親子で将来のことや財産のことなどを気軽に話せるきっかけになってほしいと思いながら発信をしています。


いつか任意後見が当たり前の世の中になって、高齢者も若者も安心して暮らせる日が来るようにこれからも活動を続けていきたいと思っています。
■勝司法書士法人(



事業内容:
商業・法人登記
・組織再編支援業務 ・上場企業支援業務 ・ファンド・SPC・SVC組成管理業務
・株主総会サポート業務 ・定款変更コンサルティング業務 ・法人登記業務
債権・動産譲渡登記
・債権譲渡登記 ・動産譲渡登記
不動産登記
相続・遺言・後見人


■専門家にために一歩先を進む 後見・相続を事業の柱とするための実践ガイド&営業スキル講座
・講座案内
・無料説明会申込
■勝司法書士法人公式YouTube
■公式Instagram
■公式Tik-Tok

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