新しい教育への挑戦を、みんなで担ぐ“祭りの神輿”に   ー キャンパスを持たず、地域を旅しながら学ぶ大学を立ち上げた信岡良亮が、著書『学び3.0』を通していま伝えたいこと

2024.04.25 11:00
 「
」という名前を、聞いたことはあるでしょうか? 日本版のミネルバ大学とも言われ、4年間で全国4つの都市に1年ずつ暮らしながら、自分で立てたテーマに現地の人々と共に取り組む「プロジェクト学習」と、地域共創の専門家から学ぶ「オンライン学習」を行き来しながら学ぶ、新しいスタイルの大学です。
 大学卒業後、東京のITベンチャーという経済活動の最先端と、島根県の海士町という地域創生の最先端というある意味両極端な場所で働いてきた信岡が、どうしても「大学をつくりたい」と考えチャレンジを続けてきた背景には、成り行きの未来への絶望と、それを回避するためには共に社会を創っていく仲間を増やしていかなければという、止むに止まれぬ思いがありました。
 この記事では、
の著者である信岡に、内容や執筆の経緯を振り返りながら、その思いを語ってもらいました。
■大学設立の背景は「成り行きの未来への絶望」と「学びへの期待」
 どんな時代も、その時代ならではの生きづらさはあるでしょうが、予測困難で複雑・曖昧、唯一の正解がないと言われるこれからの時代を生きていくこれからの子供たちって、大変過ぎやしないでしょうか? 「今ある職業の多くはAIに奪われる」「唯一の正解はない」「学んだ知識はすぐに陳腐化する」などの言葉が降り注がれる昨今、子供も保護者も先生たちも、不安を抱えない方がおかしいと思います。
 私は今年42歳になります。関西の大学卒業後、東京のITベンチャーでがむしゃらに働くなかで「経済的な成長を追い求める先に、みんなが幸せになる未来ってあるんだろうか?」という疑問を抱え、「一人ひとりが働くことで、明るい未来に向かっていける実感が持てる生き方」を求めて島根県の隠岐諸島にある人口2,300人の離島に移住しました。
 島での経験を通してたくさんのことを学んだのち、東京に戻って会社を創業。都市と地域の双方から未来を創る共創人材づくりをテーマにした「地域共創カレッジ」を経て、現在「さとのば大学」という、実際に日本全国の特色ある地域に暮らしながら、自ら立ち上げるプロジェクトの実践とオンライン学習を組み合わせた、新しい形の学びの場を創っています。
 こういった大学がどうしても必要だと考えるに至った背景には、成り行きの未来への絶望と、学びへの期待があります。都会と地域を行き来する中で目の当たりにした、都会と地域とのアンバランスな関係。さらに、地域の疲弊が徐々に日本全体の疲弊になっていこうとしている状況に、何もできないのは辛すぎる。そんなふうに思い詰めていた私を救ってくれたのは、実は「学び」でした。私にとって「学び」というのは、めちゃくちゃ優しい存在なんです。
 私が学びを優しいものとして捉えるのには、2つの側面があります。1つは、「今の自分にとっては無理なことでも、学ぶことによって、自分は変わることができる」という感覚にさせてもらえるから。学生時代、頭でっかちな自分のことが嫌いだった私が、社会に出て仕事で鼻っ柱を折られたり、島へ移住して農家さんに怒られたり可愛がられたりする中で、ちょっとは自分のことが好きだと思えるように変わってきました。私にとっての学びとは、学校での勉強の話ではなく、人生のリアルに触れる中で、自分のあり方が変化していく流れのことなんです。
もう1つ、学びが優しいと実感するのは、「隣の人も学んでいる」ことを知ったとき。自分が苦しいとき、知人に胸の内を話すと「実は俺もこんなことがあって」と聞かせてくれることがあります。幸せそうに見えたその人も、実は苦労して、学び、成長しながら困難を乗り越えているんだということに気づかされます。
未来を諦めずに生きている人たちはいつも、現実を変えるために学び続けているということを、素敵な大人に会うたびに感じます。一緒に挑戦しませんか?というお誘いの手前に、一緒に学びませんか?というのがあるのだと思うのです。
 さらに、話は少し飛躍しますが、気候変動や紛争など簡単には解決できない社会問題を前に、「人間は学ばないし、成長もしない」と思うと、「世界は全然よくなっていかない。変えられるはずもない」と、絶望的な気持ちになります。でも、「自分も、そしてあの人も、ちゃんと学んで変わっていける存在だ」と思うと、そこに希望が生まれる。自分一人では変えられない未来に対しても、「私とあなたとでチームを組んだら、きっと社会を変えられるはず」という感覚になることができる。この捉え方の差こそ、人生を明るく過ごすための大きな差分だと思うのです。
「自分は変わっていけるし、同じく変わることのできる誰かと共に、未来は創りだせるはず」ーこうした感覚を持つ人のことを、私は「未来共創人材」と呼んでいます。この感覚を持つことは決して難しいことではないと思っていますが、現実には、「自分なんかに社会を変えられっこない」と感じている若者は少なくありません。日本人は世界と比較して、学業は優秀なのに自己肯定感が低いというデータもあるようで、それはどうしてなのかと考えたとき、「学び方が時代にあっていないのでは」「学び方さえ変われば、多くの人が未来共創人材になれるのでは」と思うのです。
■“未来を共につくる仲間”を増やす大学
 一番の課題は、若者が経験している今の学びと、自分が生きているこの社会や、自身の将来がつながっていないということ。もう一つは、学ぶ目的が個人の能力開発に偏っていて、社会を創り、変えていくための集団での学びが不足しているということだと考えています。
 そこで、自分は、学びによって変わることができる。そして、みんなで共に学ぶことで、社会や未来は自分たちの手で創っていくことができる。そう思える「未来共創人材」や「未来共創社会」を増やしていくための学び方を「学び3.0」と名付けて、そこへの転換に挑戦しています。
「学び3.0」の詳しい紹介は書籍に譲るとして、1.0~3.0の定義を簡単に説明すると、以下のようになります。「学び1.0」は、既にある正解を学ぶことに最適化した、インプット中心の学び「学び2.0」は、学び手が自分の興味関心や状態に合わせて学びをデザインする、主体的な学び「学び3.0」は、個人の関心と他者との関係性を掛け合わせてアウトプットを生み出していく、共創的な学び
1.0、2.0…というと段階のようにも聞こえますが、これら3つの間に優劣や順番はなく、それぞれを組み合わせたり、行き来しながら学んでいくことが大切です。
「学び1.0」は、先人によって蓄積され、体系化されてきた知識を、自分のものとして噛み砕く時間。基礎学力を身につけるという点で、また、他者と対話したり協働したりするうえでの共通概念やツールになる知識を獲得する意味でも、とても大切な学びです。ただ、それは学びの一つの側面でしかありません。それだけが学びであると子供たちが捉えてしまうと、学び=「教室で一方通行で教わるもの」「教科書と向き合うお勉強的なもの」として、苦手意識や拒否反応を示されかねません。それは、もったいないことです。
 そこで昨今、中学校や高校で増えてきているのが、生徒が自分の興味関心や状態をもとに自らの学びをデザインしていく、主体的な学び。これを私は「学び2.0」と呼んでいます。そして私がその先に創りたいと思い描いているのが、〝個人の興味関心〟と〝他者との関係性〟を掛け合わせ、集団でアウトプットを生みだしていく共創的な学びです。これこそ、共創のための学習とも言える「学び3.0」の世界です。


「さとのば大学」ではこの考え方をもとに、高校までの「学び1.0」や「学び2.0」で身につけてきた力を実地で思いっきり試せる「学び3.0」を中心に据え、必要に応じて「学び1.0」や「学び2.0」とも行き来できる学習環境を創っています。
 具体的には、地域というリアリティのある社会の中で、生きることと学ぶことを接続させながら、自分の想いや願いを起点とするマイプロジェクトを立ち上げ、関係する人々を巻き込みながら、「やってみる」と「学ぶ」を繰り返す。そして、その結果として起こる失敗も成功も、ともに学生同士の学びの場で共有し、自分だけでなく他の人の経験からも学んでいく。
 そんな学びを通した自分たちの変化を、学生は振り返りの場でこんな風に表現してくれています。
「地域のことを知りたいと思っていたが、地域に出ると、すべてが鏡のように自分に返ってくる。外ではなく、自分の内面に向き合い続けた1年だった」
「離れてみて初めて、自分の地元のことを言語化できるようになった。今は、大好きな故郷と様々な地域の懸け橋のような存在になりたい」
「周りに流されず、やるかやらないかも自分で決めて、それに責任を持つ。そんな覚悟が生まれつつあります」
「今年は、たくさん挫折するつもり。挫折したということは、挑戦しているということだから。自分には悩む力があるし、悩んで解決することもできる。その自信はこの1年で嫌というほどつきました」
こんな体感をもった学生が育っていくのが、「学び3.0」の世界です。
■学び合い、共創しながら新たな価値を生み出す「学び3.0」という旗印に込めた思い
 我々が「学び3.0」と名づけたような、新しい学習観を掲げ、実践しようとしているのは、もちろんさとのば大学だけではありません。従来の教育の在り方から1歩踏み出したチャレンジが、今、全国各地で始まっています。こうしたムーブメントを共有することで、もっと多くの方に新しい学びを創っていく仲間に加わってほしい。そんな思いから、書籍には教育イノベーターの方々へのインタビューや対談も多く収録しています。
複雑な社会の中で、一人でできること、変えられることはごくわずかです。だからこそ、集団、チーム、コミュニティといった関係性の中で異なる意見を出し合い、学び合いながら新たな価値を生み出していく。今起ころうとしている教育の大きな転換も同様に、多くのプレーヤーの皆さまと学び合いながら、共創しながら、進めていきたい。
「学び3.0」という旗印には、そんな思いも込めさせていただきました。 
一人で担ぐには重たい荷物でも、みんなが、それぞれの形で関わりながら担ぐことで、「祭の神輿」に変わります。この本が、今の教育に違和感を持ち、変化に向けて踏み出そうとしている方々に届き、「みんなで神輿を担ぐ」という感覚を少しでも共有できるきっかけになれば嬉しく思っています。
(構成・執筆:林 知里)
【関連プレスリリース】
【書籍情報】
●タイトル:『学び3.0―地域で未来共創人材を育てる「さとのば大学」の挑戦―』
●著者:信岡良亮
●発売日:2024年4月10日
●ページ数:239
●定価 :1,650円(税込)
●発行 :リテル
●発売 :フォレスト出版
●ISBN:978-4-86680-852-9


全国の書店、ネット書店等にてご購入いただけます。
・Amazon:
・楽天ブックス:
【著者紹介】
信岡良亮(のぶおか・りょうすけ)
1982年、大阪府生まれ。同志社大学卒業後、東京のITベンチャー企業に就職。WEB部門のディレクターを務める。08年、人口2400人の島根県隠岐諸島海土町に移住し、「持続可能な未来へ向けて行動する人づくり」を目的に起業。6年半の島生活を経て、東京に戻り都市と地域の新しい関係を創ることを目指し、株式会社「アスノオト」を設立。発起人として2019年に「さとのば大学」を立ち上げる。
2023年Forbes JAPAN「NEXT100 世界を救う希望100人」で、世界の課題解決・地域問題解決を志向する「新・起業家」の一人に選出される。
【お問い合わせ】
著者信岡ならびにさとのば大学では、取材・講演など積極的にお受けしておりますので、機会がございましたらお気軽にご連絡ください。
【商品・サービス情報】
『学び3.0 ―地域で未来共創人材を育てる「さとのば大学」の挑戦―』


<目次>
―はじめにー
第1章 なぜ、「地域」を巡るのか?
第2章 さとのば大学の学生たち
第3章 さとのば大学とは?
第4章 さとのば大学は、どのように生まれたのか?
[Another Story] 
さとのば大学名誉学長(Chief Co-Learner) 井上英之さん
さとのば大学副学長 船橋 力さん
さとのば大学副学長 兼松佳宏さん
さとのば大学地域事務局 後藤大輝さん
第5章 「学び3.0」とは何か
第6章 各地で胎動する、教育の新しいカタチ
キーパーソンに聞く【インタビュー】
ドルトン東京学園中等部・高等部 校長 安居長敏先生
宮崎県立飯野高校 進路指導部長 梅北瑞輝先生
キーパーソンに聞く【特別対談】
社会起業家、NPO新公益連盟代表理事 白井智子さん
Co-Innovation University(仮称) 学長予定者 宮田裕章さん
Dream Project School代表、元ミネルバ大学日本連絡事務所代表 山本秀樹さん
前・文部科学大臣補佐官 鈴木 寛さん          
終章 学びの変化の先に、行きたい未来
―あとがきー

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