2シーズン目が始まる「フォーミュラ・ジムカーナ」! 「大学の自動車部対抗競技」をなぜ大企業が支援するのか?

2024.04.25 07:00
この記事をまとめると
■大学の自動車部が参戦するワンメイクのジムカーナ競技「フォーミュラ・ジムカーナ」が2024年シーズンの開催を発表
■車両などが貸与される完全イコールコンディションで闘う競技
■学生と社会人の枠を超えたクルマ好きの交流の場としての価値があると、事務局長の岩田氏は語る
キーパーソンたちが語るフォーミュラ・ジムカーナ2年目の進化とは
  車両性能ではなく、チームワークと純粋なドライビングスキルを競う大学生の自動車競技として、昨年発足したフォーミュラ・ジムカーナ。2年目を迎える2024年の年間スケジュールが発表された。
 予選会1:5月4日(土)~5日(日) 鈴鹿ツインサーキット 予選会2:6月29日(土)~30日(日) エビスサーキット西コース 予選会3:8月10日(土)~11日(日) TSタカタサーキット 全国大会:9月21日(土)~22日(日) 奥伊吹モーターパーク
  2023年度はEASTとWESTのブロックごとに事前招待による各10校、つまり計20校が予選を戦い、各上位5校が9月の全国大会に歩を進め、10校で決勝を争うという流れだった。だが2024年シーズンは、機会均等とイコールコンデションを掲げる競技であるがゆえ、参加校を30校に増やした。参加希望校は事前にエントリーシートを提出し、書類審査と選考によって決定された。
  運営を担当するモータースポーツコム(以下MSC)代表で、フォーミュラ・ジムカーナ事務局長の岩田和彦氏は、運営として2年目の進化、取り組みを次のように述べる。
「どうしてフォーミュラ・ジムカーナに出たいのか、エントリーの動機をまずは説明してもらって、どんな学校に出場してもらうか。参加する学生たちから何を引き出せるか、そこを見きわめること自体が、我々にとっても課題です」。
  ヴィッツGRMNを競技車両とし、10台とスペア1台の体制は昨年のまま。練習から決勝まで、イコールコンディションを徹底する点は変わりない。
「土日開催で、宿泊や食事も大会側が1泊2日分を負担します。徹夜早朝といったコンディションで無理して学生が走ってくるといったことがないよう、安全を担保するために集合時間も8時~8時30分にします。競技自体は3人一組の合計タイムを競い、予選2本を走って2本のうち早い方を採るので、個人戦で誰が速かったか、ではありません。また、今シーズンからは新しいテイストを採り入れて、完全停止をコース途中に設けたり、フィニッシュラインを越えてこのゾーンで止まる、といったことも行います。給油についても、こちらで満タンにしたらそれ以降の増減は許されません。使えるタイヤも練習から決勝まで1セットのみ。逆に、練習で使わないで温存するといった戦略もありうるでしょう。いずれ、どうやったら勝てるか、自分たちで考えてほしいということです」。
  岩田氏は、「自動車部の学生は自動車業界にとって未来の宝、人財である」と指摘する。そもそも、フォーミュラ・ジムカーナの実質的な発案者であるTOYOTA GR GAZOO Racingの20代中盤~30代半ばのスタッフたちも、学生時代は自動車部に所属していたからこそ、大学生ならではのモータースポーツの枠組みの必要性を感じている。当時をふり返り、トヨタGR企画部モータースポーツ推進室の田中美希氏はこう述べる。
「基本的に競技で使うクルマはボロボロで、整備にお金もかかるし時間もかかるから、バイトで忙しいとか練習ができないとか、やりくりが大変でしたね。成績を出せる方はやはり裕福なバックグラウンドがある人や学校というところで……」。
  異口同音に言葉を継ぎつつ、トヨタGAZOO Racing Company BR GT事業室 主任の宮内貴史氏は、学生としてモータースポーツに打ち込む難しさを折々で意識させられたという。
「競技車両についてはお金がどうしても大きいウェイトを占めます。環境面でも、交通費や宿泊費がまわせなくて、徹夜で移動して遠征費を削るとか。若いから無理しちゃうんですけど危ないですよね。競うために少しでも練習したいから、予算を食費よりも練習にまわそうとか。やはり目立つ方々って背景が少し違っていて、学生の間にクルマの競技を頑張りました、とアピールできる機会が平等ではないんです。ですから、お金や人脈ではない、頑張りをアピールできる舞台を整えるべきじゃないかと」。
  イコールコンディションで大学自動車部によるジムカーナ、という大枠を最初に思いついたトヨタGR車両開発部GRZの石井宏尚氏は、その意義を次のように語る。
「企画のベースは、自分が大学生の時代にこういうのがあったらいいな、ということ。ゴルフ部もお金がかかるイメージですけど、自動車部とは違って税金は要らないですし(苦笑)。学生自動車連盟や学生だけの大会はありますが、道具にお金がかかる負担を減らす方法がないか、ずっと考えていました。たまたま自分がTGRにいることで、社内の協力もあって車両を用意することができました。当初は思いもよらなかったことですが、550万人の業界に貢献できる大会にできたらいいな、と考えています」。
  運営の側から、そして運営を超えた立場から、岩田氏はこうも付け加える。
「やはり自動車部の学生って自動車業界にとって未来の宝じゃないですか。競技に取り組みながら、どう楽しむか。車両やパーツを提供してくれるサポート企業の方々と、スーツやネクタイを着ての説明会とは違った、壁のない交流が図れたら、と考えています。企業と学生が一緒に同じ釜の飯を食うことで、新しい発見がある気がするんです。運営する側としては、クルマというテーマで人と人の環が形成され、参加する学生も協賛する企業も、皆が幸せになれる、メリットやリターンのある大会にしていきたいですね」
1年目の開催を経て見えてきたフォーミュラ・ジムカーナの意義
  では、フォーミュラ・ジムカーナは、競技を通じて自動車関連企業の、新たなリクルートの場になろうとしているのか? TGRの宮内氏が、説明する。
「もしかすると、『タダで競技に出られて、いい場を提供してもらって、ありがとうございました』で終わってしまう関係もあるかもしれません。でも10年、15年後の自分たちの仲間がいるかいないか、それは見極めたい。5年後、10年後の自動車業界に自分の力が要るんだと、気づいてくれる学生もいるかもしれません。どう取り組んだらいいか、競技に挑むなかで考え方や問題解決の質が上がっていく、そんな育成の意味合いもあるかもしれません。自動車が好きで熱い気持ちはあっても、他の業界に進む学生もいるかもしれませんが、できれば仲間になって、盛り上げるこちら側に来て、中心メンバーになって欲しいところです。すべて『かもしれません』なのは、自発的にそうなってくれるかどうかは学生ひとりひとり次第ですから」。
  いまのところ、車両提供はヴィッツGRMNのみで、トヨタによるワンメイク大会かつ人材発掘の場のようにも見えかねないが、決してそうではない。トヨタGAZOO Racing Companyは旗振り役ではあったが、完成車メーカーの協賛企業には日産とマツダも名を連ね、それぞれのメーカーからFFでない駆動方式の車両提供も鋭意検討中だ。また、すでに協賛しているサプライヤやパーツメーカー以外からも、多くのオファーが寄せられている。
  エントリーは大学の公認団体であることが条件とはいえ、学生向けのフォーミュラという特殊な枠組みだからこそ、田中氏は企画自体を一緒に考えたいと述べる。
「どんなことをしたいのか? こういうことをやったらいいんじゃないか? 運営にも主体的に、一緒に実現するにはどうしたらいいか、どう周囲を巻き込んで盛り上げていけるかを考えて実行できるよう、関わってきてほしいですね」。
  昨年のプレシーズンからも、社内外でさまざまな反響があったことを、石井氏と宮内氏は次のように捉えている。
「ほかのレースで協賛いただいているサプライヤー企業さんからも、興味を寄せていただいています。社内でも反響は大きく、就職イベントなどタッチポイントは各部署それぞれありますけど、自動車メーカーとして求める層に近いことは確かだろう、と。一般イベントとしてショッピングモールなどで車両展示をしたりするのとは、また異なるアプローチです。スポーツカーを展示すると、それこそ隅々まで舐めるように見てくれたりするので(笑)。もってきてよかったなぁ、と思いました」。
  プレシーズンの反響をふり返りながら、岩田氏は運営の意義を、次のように締め括る。
「やはり真剣に競技に取り組む以上、失敗して悔しくて涙を流している学生もいました。感情が表に出るほど打ち込んでいる、そのリアルな姿が会場で見られたことを評価したいです。やらされている競技なら、無感情のはずですから。仲間と、失敗したらごめん、成功したらやった、という感情を分かち合う姿は、打ち込んでいる証拠ですよね。真剣にプレーして、新しく得た発見や経験を、大人なり企業なりに言葉で伝え、クルマ好きをベースにした輪は、クルマの話題で盛り上がれるもの。そこに未来の希望があると感じました。フォーミュラ・ジムカーナで知り合った学生たちが、違うイベントの手伝いに来てくれるんですよ。そこには何かしら、気もちがあると思います。ここに来る人たちは世代を超えてレース好きで、携わっている人ですから」。
  予選会や全国大会では一般観客の入場も受け入れるため、箱根駅伝での沿道の声援ではないが、観客も楽しめる学生スポーツの新しいカタチとして、昨年以上の盛り上がりに期待がかかる。

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